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ウガヤ・クラントの解放

第278話 反転攻勢

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「みんな聞け!、あの銃声は敵軍のものではない、エフライム軍が不可侵を放棄し、戦闘に介入したぞ、あれは味方だ!三国同盟軍だ!」

 それを聞いたブラックナイツは、歓声に包まれた。
 
 全員、死を覚悟していたその時に舞い降りた18万の軍勢は、まさかの友軍であったのだから。

 そして、よく見れば、最初の一撃で、対峙していた敵軍の多くが倒れていたのだ。
 いくら火縄銃とはいえ、あれだけの規模で一斉射撃をされれば、前線が崩壊してしまうだろう。
 もはや、ブラックナイツを包囲していたオルコ共和国軍は、逃げるのに精一杯であった。

 そして、ウクルキ達ブラックナイツは、それを見逃さなかった。
 それまで、耐えに耐えた鬱憤《うっぷん》と、最後の突撃に向けて温存していた隊力《たいりょく》の全てを、眼前の敵目がけて突進したのである。

 こうして、エフライム国境沿いでの戦いは、予想もしない方向から、一気に形成逆転をしてゆく。



「エレーナ様、北の戦線が反転攻勢に出ています」

 エレーナ皇女軍の参謀が、エレーナに報告する。
 さすがのエレーナも、今回ばかりはウクルキも助からないだろうと覚悟を決めていただけに、その嬉しい誤算に思わず少女の笑顔がこぼれていまう。
 作戦図を修正していたベナル司令官も、最新の情報を整理して、改めてエレーナに状況報告をした。

「エレーナ様、どうやら新手の軍勢は、オルコ共和国軍ではなく、エフライム公国軍です、エフライムが直接戦闘に介入した模様です」

 それを聞いた指揮所の将兵は、一瞬歓喜に包まれた。

 奇跡が起きた事を、誰もが理解出来たのである。

 それは、作戦図上でも見て取れた。

 北部に多くの兵士を割かれたオルコ共和国軍は、その分、王都ウガヤ・クラントの防御兵力を欠いていた。
 それだけに、王都攻略に当たるエレーナ軍と、ドットス軍、フキアエズ軍、マキュウェル軍は順調に駒を進める事が出来ていたが、最大の懸念事項である北部の攻撃が、全く進んでいなかったのである。
 敵側に、エフライムが実は不可侵を前提に越境しない事を悟られたが最後、防御に転じた北部共和国軍15万が、南進攻勢をかけた場合、エレーナ軍は、南下して来た共和国軍と、王都守備部隊とを同時に相手にしなければならない、苦しい二正面作戦を強いられるところだった。

「よろしい、どうやらここが正念場のようね、ベナル司令官、全軍を王都ウガヤ・クラントへ進撃させないさい、先に王都を奪還するのです。そして、北の15万守備隊を孤立させ、エフライム軍と南北から挟撃するのです、直ちに!」

 ベナルも、全くの同意見であった。

 この戦いの最大勢力でもあるエレーナ軍が、正面を突破することで、この戦場の勝者が誰であるかを明確にするだろう。
 それ故に、王都奪還が、無駄な血を流させない最短ルートであることは明白であった。



『凄いですGF!、戦場が動き出しました、エレーナ軍が正面突破を図るようです!エフライム軍と合流したブラックナイツも、南下を始めました!」

 AIであるシズですら、興奮気味だ。


 エフライム軍の本格参戦により、この戦いは大きな局面を迎えつつあった。
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