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ウガヤ・クラントの解放
第269話 戦端を開いたのは
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敵のオルコ共和国軍は、俺たちを迎え撃つべく、既にフキアエズ王都、ウガヤ・クラントを背にして、横に数軸の防御線を展開していた。
エレーナ皇女軍とドットス軍、フキアエズ軍、マキュウェル軍の総数は69万人にも上り、迎え撃つ共和国軍側も41万を数える。
69万対41万、数の上では我が軍が有利にも思えるが、実際は小銃で防御線を張る敵軍の方が、態勢上は有利と言える。
双方合わせて110万人にも上る大会戦、こんな規模、現世では考えられない。
あの世界大戦ですら、これほどの軍を集結させたことは無いだろう。
肌寒く乾いた空気が、フキアエズ王国に冬の訪れを告げる。
地元の兵士曰く、この季節を超えて戦争をする馬鹿者はいないのだそうだ。
それだけ、この地方の冬は過酷だ。
包囲殲滅という方法もあるやもしれない、しかし、俺たちの戦いの目的の半分は、王都ウガヤ・クラントの解放なのだ。
包囲戦を仕掛ければ、寒さと飢えにより、ウガヤ・クラントの市民は飢え死にしてしまう。
共和国軍も慈善団体ではない、当然市民から略奪し、凄惨な状況になることは間違いない。
それは、オルコアの惨状を見れば一目瞭然だった。
それ故に、この作戦に参加しているほとんどの将兵は、一刻も早くウガヤ・クラントを開放したいと考えていた。
そして、一番それを願い、先陣を切って突入したいと申し出てきたのは、巨人族の村長だった。
先の戦いで、部族の多くを戦死させた巨人族は、それまで戦えば無敵の戦士であり、人間を見下す傾向があったが、この小銃の存在が、彼らの戦いに対する考え方を、すっかり変化させてしまった。
、、、、要するに、憤慨しているのだ。
俺も、オルの戦死の傷は、未だ癒えていない。
作戦図には、エフライム国境から半円を描くように王都を包囲する三国同盟軍とエレーナ皇女軍、その一番先頭には、巨人族の群が、部隊として表記されていた。
そうして、始まるのである、前代未聞の大会戦、フキアエズ大会戦が。
戦いの戦端を開いたのは、ここまで我慢に我慢を重ね、遂に恨みを晴らさんと待ち構えていた巨人族の群だった。
巨人族の遠吠えは、広陵とした大地によく響く。
怒りを開放した巨人族の勢いは、いつもの如く凄まじく、地響きと遠吠えの声は、まるでドラムロールのように戦場にこだました。
全軍は、それを合図に、一斉にウガヤ・クラントへ向け、攻撃を開始した。
さすがにこれだけの質量が動くと、まるでフキアエズ自体が揺れているかの錯覚を覚える。
最初はゆっくりと前進していた全軍は、加速度を増す巨人族に引かれるように速度を増し、速足行進から、駆け足行進へと移行し、敵との距離を一気に詰めて行く。
そして、この数十キロに及ぶ大会戦の戦場に、オルコ共和国軍の銃声が、猛烈な炸裂音となって俺たちを襲う。
全軍は、怯むことなく前進を続けた。
それは、全将兵が暗黙の了解として理解していたのだ、もはや躊躇して、立ち止まる時は過ぎたのだという事を。
そして、我が軍の小銃部隊も、一斉に散開し、散兵線を構成すると、応射を開始し、敵味方の射撃音が入り乱れ、それは壮大な戦場の様相を演出するのである。
同盟軍という統制の取りにくい集団にしては、我が軍は良く動いている。
さすが、この同盟軍には頭脳が集まっているだけのことはある。
一進一退の攻防は、全域で繰り返される中、銃弾を恐れず進み続ける巨人族の姿は、敵軍の将兵を恐怖に陥れていた。
この時、エレーナ皇女軍の右翼、つまりエフライム国境側の部隊が、やはり足並みを乱していることに、エレーナ軍司令官ベナル中将は気付いていた。
しかし、いくら気付いたと言え、この広大な戦場を駿足に移動することなど当然出来ない。
大出量同士の戦いとは、その欠陥に気付いたとしても、対処方法などない。
そして、この北部戦線の状況が、俺たちの攻勢に陰りを見せるのである。
エレーナ皇女軍とドットス軍、フキアエズ軍、マキュウェル軍の総数は69万人にも上り、迎え撃つ共和国軍側も41万を数える。
69万対41万、数の上では我が軍が有利にも思えるが、実際は小銃で防御線を張る敵軍の方が、態勢上は有利と言える。
双方合わせて110万人にも上る大会戦、こんな規模、現世では考えられない。
あの世界大戦ですら、これほどの軍を集結させたことは無いだろう。
肌寒く乾いた空気が、フキアエズ王国に冬の訪れを告げる。
地元の兵士曰く、この季節を超えて戦争をする馬鹿者はいないのだそうだ。
それだけ、この地方の冬は過酷だ。
包囲殲滅という方法もあるやもしれない、しかし、俺たちの戦いの目的の半分は、王都ウガヤ・クラントの解放なのだ。
包囲戦を仕掛ければ、寒さと飢えにより、ウガヤ・クラントの市民は飢え死にしてしまう。
共和国軍も慈善団体ではない、当然市民から略奪し、凄惨な状況になることは間違いない。
それは、オルコアの惨状を見れば一目瞭然だった。
それ故に、この作戦に参加しているほとんどの将兵は、一刻も早くウガヤ・クラントを開放したいと考えていた。
そして、一番それを願い、先陣を切って突入したいと申し出てきたのは、巨人族の村長だった。
先の戦いで、部族の多くを戦死させた巨人族は、それまで戦えば無敵の戦士であり、人間を見下す傾向があったが、この小銃の存在が、彼らの戦いに対する考え方を、すっかり変化させてしまった。
、、、、要するに、憤慨しているのだ。
俺も、オルの戦死の傷は、未だ癒えていない。
作戦図には、エフライム国境から半円を描くように王都を包囲する三国同盟軍とエレーナ皇女軍、その一番先頭には、巨人族の群が、部隊として表記されていた。
そうして、始まるのである、前代未聞の大会戦、フキアエズ大会戦が。
戦いの戦端を開いたのは、ここまで我慢に我慢を重ね、遂に恨みを晴らさんと待ち構えていた巨人族の群だった。
巨人族の遠吠えは、広陵とした大地によく響く。
怒りを開放した巨人族の勢いは、いつもの如く凄まじく、地響きと遠吠えの声は、まるでドラムロールのように戦場にこだました。
全軍は、それを合図に、一斉にウガヤ・クラントへ向け、攻撃を開始した。
さすがにこれだけの質量が動くと、まるでフキアエズ自体が揺れているかの錯覚を覚える。
最初はゆっくりと前進していた全軍は、加速度を増す巨人族に引かれるように速度を増し、速足行進から、駆け足行進へと移行し、敵との距離を一気に詰めて行く。
そして、この数十キロに及ぶ大会戦の戦場に、オルコ共和国軍の銃声が、猛烈な炸裂音となって俺たちを襲う。
全軍は、怯むことなく前進を続けた。
それは、全将兵が暗黙の了解として理解していたのだ、もはや躊躇して、立ち止まる時は過ぎたのだという事を。
そして、我が軍の小銃部隊も、一斉に散開し、散兵線を構成すると、応射を開始し、敵味方の射撃音が入り乱れ、それは壮大な戦場の様相を演出するのである。
同盟軍という統制の取りにくい集団にしては、我が軍は良く動いている。
さすが、この同盟軍には頭脳が集まっているだけのことはある。
一進一退の攻防は、全域で繰り返される中、銃弾を恐れず進み続ける巨人族の姿は、敵軍の将兵を恐怖に陥れていた。
この時、エレーナ皇女軍の右翼、つまりエフライム国境側の部隊が、やはり足並みを乱していることに、エレーナ軍司令官ベナル中将は気付いていた。
しかし、いくら気付いたと言え、この広大な戦場を駿足に移動することなど当然出来ない。
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そして、この北部戦線の状況が、俺たちの攻勢に陰りを見せるのである。
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