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ウガヤ・クラントの解放
第267話 予定の配置に
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「大丈夫だ、玲子君、君なら出来る、君なら、、、」
「雄介様、、、さすがに私を買いかぶり過ぎですわ。私も軍人ですが、未来では軍医です。雄介様のように、聡明な作戦を考えることも、指揮することもできません」
玲子君ですら、怖気付くほどの大規模攻勢なんだろう。
しかし、未来人としてここを任せられるのは、玲子君しかいない。
「ウクルキと直接話がしたい、夜明けまでには必ず戻る。夜明け前に戦闘が始まることは無いから、安心してくれ」
玲子君は、俺の要望にかなり渋々承諾してくれた。
彼女は、マグネラの一件以来、俺と離れることにトラウマを感じているようだ。
『シズ、解ってるな、俺をウクルキの所へ転送してくれ」
『はい、、、でも、転送は不安定な場所ですと、かなり危険です、これは特別な方法だとお考えくださいね!」
シズにも、無理ばかりさせているな。
でも、このウクルキとの再会は、かなり重要なポイントだ。
全軍の勝敗がかかっているのだから。
「ウクルキ隊長、、、ちょっとお話しが」
今や、ウクルキのブラックナイト・ユニット第1部隊を率いているドロエ中尉も、戦時階級で大尉に昇進していた。
軍を離反した頃は、貴族の若い将校と言った雰囲気であったが、今や部隊を率いて戦う指揮官の顔になっていた。
そんなドロエ大尉が、後方に何か不穏な空気を感じ取っていた。
「どうしたドロエ大尉、少し寝ておいた方がいいぞ、明日は夜明けと共に総攻撃が開始されるからな」
「いえ、、、その夜明け前に、少しお話ししておいた方が良いかと、、、、少し、お人払いを」
いつになく深刻な表情を浮かべるドロエ大尉に、さすがのウクルキもただならぬ何かを感じ取っていた。
ウクルキは、素早く幕舎の人払いを命ずると、ドロエ大尉と二人だけになった指揮所幕舎で話を切り出した。
「一体どうした、この大事な決戦を前に」
「はい、、、部下から少々、妙な事を聞きましたので、、、、味方の一部が、本日薄明時における予定の配置に進んでいないとのことなのです」
ウクルキは、少し妙だと感じた。
それは、この戦いは空前の大規模戦闘ではあるが、我が軍は比較的優勢に戦闘を展開しており、前線の部隊は部隊機動困難な状況ではない。
ましてや、エレーナ皇女から、停止は罷りならぬとのお達しがある中で、この程度の動きが出来ていないという事が、プロの軍人としては奇妙なことであったのだ。
「、、、ん、確かに妙だな。、、、ドロエ大尉、君が言いたいことは、この戦いで万が一味方部隊の一部が寝返ったら、、、という心配をしている、、ということで、合っているか?」」
ドロエは「はい」と答えると、ウクルキは少し考えて、第2部隊指揮官であるレッグ・ホーウエイ少佐を幕舎に呼んだ。
「ホーウエイ少佐、貴官は旧オルコ帝国軍内の人事には詳しいと思う、、、ここでこれから見聞きすることは、絶対に他言無用だ」
もはや夜明けまで2時間を切っていた。
こんな時間帯に呼び出すなんて、よほどの問題が発生したのだろうと、ホーウエイ少佐は理解していた。
「我々の後方にいる部隊、どう思う?」
ホーウエイ少佐は、最初何の事を言っているのか理解出来ていなかった。
しかし、その言葉の後の沈黙と、ウクルキの深刻な表情が、事の重大さを示していることに気付く。
「いや、、、まさか、、、さすがにそれは、、、」
「本当にそう言えるか?、後方に位置する2個連隊、本来であれば、我が隊の直後に位置していなければ戦力発揮できないはずだ。それが今、何処にいる?」
ホーウエイ少佐は、まずその事実に耳を疑った。
彼もまた、長らく軍に身を置く歴戦の軍人である。
その彼からしても、夜明けの2時間前に、部隊が予定位置に配置されていないことは異常なことであった。
それは即ち、敵に対して戦う意思がない事を示している。
考えたくはないが、ここは連隊長級の人事を疑う必要があると感じたのである。
「、、、なるほど、たしかに後ろの2個連隊長は、オルコ共和国軍でも評判は良くない指揮官ですね、どちらかと言えば、貴族の肩書を使って、一般の兵士を無駄に戦死させるような戦い方が兵士からは恨まれているような指揮官でしょう」
「しかし、裏切りの証拠にはならないよな」
ホーウエイ少佐は、少し考えていた。
あの二人の連隊長は、エレーナ軍に加入する前、何処の指揮官をしていたのかを。
すると、ホーウエイ少佐の頭には、一つの閃きが浮かんだ。
だが、それは、あまり良い閃きとは言えなかった。
「雄介様、、、さすがに私を買いかぶり過ぎですわ。私も軍人ですが、未来では軍医です。雄介様のように、聡明な作戦を考えることも、指揮することもできません」
玲子君ですら、怖気付くほどの大規模攻勢なんだろう。
しかし、未来人としてここを任せられるのは、玲子君しかいない。
「ウクルキと直接話がしたい、夜明けまでには必ず戻る。夜明け前に戦闘が始まることは無いから、安心してくれ」
玲子君は、俺の要望にかなり渋々承諾してくれた。
彼女は、マグネラの一件以来、俺と離れることにトラウマを感じているようだ。
『シズ、解ってるな、俺をウクルキの所へ転送してくれ」
『はい、、、でも、転送は不安定な場所ですと、かなり危険です、これは特別な方法だとお考えくださいね!」
シズにも、無理ばかりさせているな。
でも、このウクルキとの再会は、かなり重要なポイントだ。
全軍の勝敗がかかっているのだから。
「ウクルキ隊長、、、ちょっとお話しが」
今や、ウクルキのブラックナイト・ユニット第1部隊を率いているドロエ中尉も、戦時階級で大尉に昇進していた。
軍を離反した頃は、貴族の若い将校と言った雰囲気であったが、今や部隊を率いて戦う指揮官の顔になっていた。
そんなドロエ大尉が、後方に何か不穏な空気を感じ取っていた。
「どうしたドロエ大尉、少し寝ておいた方がいいぞ、明日は夜明けと共に総攻撃が開始されるからな」
「いえ、、、その夜明け前に、少しお話ししておいた方が良いかと、、、、少し、お人払いを」
いつになく深刻な表情を浮かべるドロエ大尉に、さすがのウクルキもただならぬ何かを感じ取っていた。
ウクルキは、素早く幕舎の人払いを命ずると、ドロエ大尉と二人だけになった指揮所幕舎で話を切り出した。
「一体どうした、この大事な決戦を前に」
「はい、、、部下から少々、妙な事を聞きましたので、、、、味方の一部が、本日薄明時における予定の配置に進んでいないとのことなのです」
ウクルキは、少し妙だと感じた。
それは、この戦いは空前の大規模戦闘ではあるが、我が軍は比較的優勢に戦闘を展開しており、前線の部隊は部隊機動困難な状況ではない。
ましてや、エレーナ皇女から、停止は罷りならぬとのお達しがある中で、この程度の動きが出来ていないという事が、プロの軍人としては奇妙なことであったのだ。
「、、、ん、確かに妙だな。、、、ドロエ大尉、君が言いたいことは、この戦いで万が一味方部隊の一部が寝返ったら、、、という心配をしている、、ということで、合っているか?」」
ドロエは「はい」と答えると、ウクルキは少し考えて、第2部隊指揮官であるレッグ・ホーウエイ少佐を幕舎に呼んだ。
「ホーウエイ少佐、貴官は旧オルコ帝国軍内の人事には詳しいと思う、、、ここでこれから見聞きすることは、絶対に他言無用だ」
もはや夜明けまで2時間を切っていた。
こんな時間帯に呼び出すなんて、よほどの問題が発生したのだろうと、ホーウエイ少佐は理解していた。
「我々の後方にいる部隊、どう思う?」
ホーウエイ少佐は、最初何の事を言っているのか理解出来ていなかった。
しかし、その言葉の後の沈黙と、ウクルキの深刻な表情が、事の重大さを示していることに気付く。
「いや、、、まさか、、、さすがにそれは、、、」
「本当にそう言えるか?、後方に位置する2個連隊、本来であれば、我が隊の直後に位置していなければ戦力発揮できないはずだ。それが今、何処にいる?」
ホーウエイ少佐は、まずその事実に耳を疑った。
彼もまた、長らく軍に身を置く歴戦の軍人である。
その彼からしても、夜明けの2時間前に、部隊が予定位置に配置されていないことは異常なことであった。
それは即ち、敵に対して戦う意思がない事を示している。
考えたくはないが、ここは連隊長級の人事を疑う必要があると感じたのである。
「、、、なるほど、たしかに後ろの2個連隊長は、オルコ共和国軍でも評判は良くない指揮官ですね、どちらかと言えば、貴族の肩書を使って、一般の兵士を無駄に戦死させるような戦い方が兵士からは恨まれているような指揮官でしょう」
「しかし、裏切りの証拠にはならないよな」
ホーウエイ少佐は、少し考えていた。
あの二人の連隊長は、エレーナ軍に加入する前、何処の指揮官をしていたのかを。
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