自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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ウガヤ・クラントの解放

第266話 王都西方限界線

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『ウクルキ、危険だ、北の前には15万の軍勢が控えている、王都西方限界線に接触する前に一旦停止だ!」

『ユウスケ殿、さすがにそれは駄目だ!、エレーナ様から、一切停止はしてはならぬとのお達しなのだ」

 それはそうかもしれないが、、、エレーナ軍と話が出来るのは、ウクルキ以外にいない、、、どうする?、このまま行けば、ウクルキ達は強大な敵と鉢合わせる。
 、、、それに、もしエフライム公王が寝返って、共和国軍側に付いたら、エレーナ軍は北から瓦解してしまう。
 少しでも時間を稼ぐには、北部戦線を膠着状態に持って行くしかないのだが。

「雄介様、我が軍も戦闘の先端が開きます。只今、前衛部隊が敵の前哨と接触して交戦状態に入りました」

 ああ、そうこうしている内に、俺たちも敵と接触してしまった。
 、、、何一つ解決していないのに。

『ユウスケ、フキアエズ軍、敵と接触、全面的に交戦状態に入ったわ!、さすがにフキアエズ軍の勢いは凄いわね、自国の王都奪還作戦ですものね」

 ムスキからの緊急電だった。
 それは無理もない、彼らだって我慢していたのだから。
 しかし、これで南部戦線は完全に戦端が開かれてしまった。

 、、、どんなにリスクを冒しても、数十万単位の軍勢が大会戦を行う以上、同時突撃の利点は活かさなければ意味がないのだろう、、、、それは、エレーナが全軍に徹底したのも理解出来る。
 
 本当に彼女は、大軍を率いて戦う事に関しては、天性の素質を感じる。
 生まれながらにしての皇帝、やはりサラブレットなんだろうな。

 その3時間後、エレーナ軍中央主力とウクルキ達北部軍は、ほぼ同時に戦端を開き、ここに王都ウガヤ・クラント奪還作戦が始まったのだ。
 こうして俺たち南部戦線、ウクルキの北部戦線、エレーナの西部戦線がそれぞれ激烈な戦闘を展開した。

 やはり、俺が予想した通り、敵の小銃数はかなり減っているようで、シズからの情報では、我が軍側が全体としては優勢に進んでいるように感じられた。

 こうして初日の奪還作戦は、双方共に激烈な消耗戦を展開して日没を迎えた。


「敵の抵抗も去ることながら、我が軍の優勢はもはや手堅いものと思われますな」

 軍師長のヨア・ハルドムイ准将が、作戦会議の席でマキュウェルに報告する。
 双方、夜間装備が脆弱なため、やはり夜間は散発的な戦闘にしかならず、昼間の激戦が嘘のように静かな夜を迎えていた。
 
「軍師長、まだ楽観は出来ない。今日一日だけでも我が軍は数百名の損害を出している」

 これだけ大規模な戦闘って、どれくらい続くのだろう。
 俺もさすがにこの規模の戦いは見当がつかない。
 連隊規模であれば、長くて1週間と言ったところだろうが、こんな軍団規模の戦い、現世では今時考えられないからな。

『GF、ちょっと気になることが」

『どうしたシズ、今、作戦会議中なんだが、緊急か?」

『はい、、、ちょっと急いでご報告した方が良いかと思いまして」

 シズは、俺に北部戦線に、何か不穏な動きを察知したことを伝えた。
 問題は、その不穏な動きをしている部隊が、どこの部隊か、という部分だ。

『なに?、、、、本当に間違いないのか?」

『はい、間違いありません、エフライム軍でも、共和国軍でもありません、この部隊はエレーナ軍のものです」

 しまった!。

 これはやられたぞ!

 敵の企図が、これではっきりした。
 なるほど、その手があったか。
 敵は、北部戦線での反転攻勢を考えているのだ。
 なぜなら、今シズから報告のあったエレーナ軍北部軍の一部が反乱し寝返れば、ウクルキ達が敵中に孤立する。
 北には加勢しないエフライム軍、東には15万の敵軍、そして西の背後には規模不明の、敵と内通した反乱軍。

 この状況は、ヤバい!
 
 圧倒的優位に北部戦線を戦い抜けば、今度は北と東からエレーナ軍を挟撃出来る。
 そして、北部戦線からエレーナ軍を瓦解させる考えなんだろう。

 どうする?、広い戦場、立ち回る事なんて出来ないぞ。

「玲子君、この連隊を少し任せることは出来ないか?」

「ええっ、私にですか?、私は軍師ですから雄介様のお手伝いはさせて頂きますが、さすがに指揮官である連隊長がご不在では、、、。」

 いや、少しで構わない、早くしないと夜が明けてしまう。
 恐らく敵は、夜明けと同時に、ウクルキ達を挟撃するつもりだ。

 間に合わなくなってしまう。
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