自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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巨人族の戦士

第262話 敵の最前列

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 王都ウガヤ・クラントの手前12Km付近で、敵の前哨と接触した。
 交戦の規模からすると、単なる前哨には見えなかった。
 敵の抵抗は凄まじく、普通なら前哨戦でこのレベルの戦いであれば、怖じ気好きそうなレベルだ。

 しかし、婚約者を失ったと考えているマキュウェルの闘志は凄まじく、まったく怯む気配がない。
 そして、この敵の攻撃に対する最適解は、この猪突猛進に他ならない。
 俺たちが全軍で奪った敵の小銃は、恐らく半数を越えている。
 今、敵が一番知られたくない情報は、まさにその部分だ。
 
 通常、前哨戦がある程度抵抗したあと、疲れ切った俺たちに、敵本隊が襲いかかる、というのが有利な戦闘だろう。
 だが、敵が一番知られたくない情報、小銃の数の限界値をひた隠しにするには、この前哨戦に最大火力を発揮して、自分たちの前哨はまだやれる、つまり主力には更に大きな火力を温存していると、俺たちが誤認することを期待している。
 その証拠に、俺の見積もりより遙かに大きい火力がこちらに指向されている、そのことが何よりの証拠だ。

 、、、、つまり、この戦いこそが、フキアエズ大会戦の決勝点と言えるだろう。

 それ故に、このマキュウェルの猛攻撃は、敵の指揮官には恐怖に思えるだろう。
何故なら、この猛攻撃をまるで計画通りに、と言わんばかりに進撃して行けば、敵は俺たちの軍には、更なる大きな火力が控えていると、逆に勘違いするだろう。

 真実を知るのは、お互い異世界人である、俺たちと、敵の軍師エムディと、その仲間、キル・ザ・ドールのメンバーだけだ。

 俺とシズは、敵がもし武器をこの世界に運んだ場合の、最大値から最小値を試算していた。

 それは、敵の軍師エムディがこの世界にやってきて軍師となった時期を基準に、シズのようなタイムマシーンの数を5機と暫定して、この世界に往復した場合、どれだけ運搬出来るかという内容だ。
 当然、成功率は高くはないことと、この世界へはタイムトラベルを伴わない、いわゆる世界線移動だけしか出来ないため、時間軸は俺たちがこの世界で過ごした時間と同じスケールにしてある。
 そうすると、俺たちが捕獲した小銃の数は、既にオルコ共和国軍が保有していると思われる総数の約6割を越えると出たのだ。

 平均化した数値でも64%の小銃が、我が軍に移転したことになる。

 即ち、それが本当だとすれば、敵が前哨戦で使用するこの火力は、明らかに過剰な数と言えた。

 、、、敵も必死なのだ。

 あれだけ優位に戦っていたように見える共和国軍でも、やはり虚勢を張っていたのだと感じる。

 その考えで行くと、今俺たちが対峙している敵の部隊は、前哨ではなく、恐らく敵の本隊だ。
 まるでそれを証明するかの如く、敵の火力は我が軍に比して大きいものであった。
 小銃の多くは、今現在エレーナ軍とフキアエズ軍が保有している。
 俺たちの連隊と、マキュウェル軍の小銃を全て足しても、恐らくはこの前哨を突破出来ない。

 だからこそ、この猛攻撃が効き目を発揮するだろう。

 敵だって怖いのだ。
 ここを突破されれば、もはや敵に抵抗出来る兵力も武器もない。
 、、、だから、敵が次に取る行動は一つしかない。

「マキュウェル様、敵軍の後方が、少しずつ後退してゆくようです」

 ハルドムイ准将が、マキュウェルに報告する。
 マキュウェルの位置からでも、敵軍の陣形がやや崩れて来たことが理解出来た。

「よし、敵の最前列を逃がすな、必ず陣形は瓦解する、怯むな!」

 案外、マキュウェルの戦術眼は正しい、俺が何かを助言するまでもなく、押し込むタイミングは心得ている様子だ。

 マキュウェル軍の第2線部隊が着剣し、突撃態勢に入った。
 同時に小銃を持たない重装甲騎兵と機動騎兵の各中隊が、敵の追撃戦に備えて隊形を取り始める。

 さあ、王都ウガヤ・クラントまで、大進撃の開始だ。
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