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巨人族の戦士

第260話 辛い役目

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「ユウスケ、、、嘘でしょ、また、いつもの冗談を言っているのでしょ、、、、そう言ってくれ、、、ユウスケ!」

 俺は、妖精フォンを使ってマキュウェルと緊急通話をした。
 それは、辛い選択だった。

 敵がマキュウェル軍やドットス軍の上位者しか知り得ない情報を知っている、という事を逆手に取った作戦、、、、つまり、マキュウェルに嘘の情報を流す、というものだ。
 恐らく敵の軍師は、俺たち同様の異世界人、未来の通信方法が使えることを理解している。
 そうなると、恐らくはマキュウェルへ話した内容も、時間と共に敵に流れてしまう。

 それならば、いっそのこと、そのマキュウェルに流す情報を、こちらの都合の良いものにすり替えてしまえばよい。

 、、、、それは理屈だ。

 マキュウェルに、嘘の情報を流す、それは大きく二つの情報を本物と入れ替える必要がある。
 一つ目に、北のエフライム軍が、正式に三国同盟軍に加入し、戦列に加わるという嘘、そして二つ目が、フキアエズ軍はほぼ壊滅状態で、エガ王子も戦死された、という嘘。


「ユウスケ、、、、どうして何も言ってくれないの?、、どうして、、、、、」

 妖精フォンの向こう側で、泣き崩れているマキュウェルが容易に想像できた。
 親友と思っている女性に、これほどまでに残酷な嘘をつかなければならない、それはこんなにも辛いことなのか。
 本来なら、マキュウェルの傍にいてあげたい、今の俺なら、それくらいの事は簡単だ。
 しかし、ここまでしたのだ、この戦、勝たねばならない、もう後戻りは出来ないのだから。
 それに、マキュウェルの泣き顔を見てしまえば、俺だって決意が揺らぐ。

 妖精フォンを切った後、俺は管理人妖精を呼ぼうとしたが、管理人妖精はマキュウェルに強く抱きしめられているため、移動が出来ないでいた。
 だから、俺は音声通信で管理人妖精に伝えた。

 、、、、どうか、後追いのような事だけは、しないよう監視してほしいと。

 それでも、婚約者の死をバネに、ドットス軍とマキュウェル軍には奮起してもらわないと困る、この戦いに負ければ、全軍に明日は無いのだから。



「ユウスケ殿、、、、、マキュウェル王女は、、、、何と言っていた?」

 エガ王子が、俺の作戦を聞いて、それは取り乱すでもなく、怒るでもなく、俺にマキュウェルの状況を聞いて来た。
 エガはエガなりに、理解しているのだ、俺に辛い役目を負わせた事を。

「なあエガ、この戦いが終わったら、マキュウェルを世界で一番幸せな妃にしてやってくれ、俺から頼めるのはそれだけだ。マキュウェルのやつ、らしくもなく、大泣きしていたぞ」

 それを聞いたエガ王子は、何時になく辛そうに、感情を殺しているのがよく解った。
 両手を堅く握り締め、唇を噛みながら、強く瞑った目から涙が零れ落ちていた。
 、、、まさか、この婚約者同士、お互いの知らないところで泣いているなんて思いもしないだろう。

「エガ王子、俺たちの連隊は、エレーナ軍の先鋒としてこのまま進撃を続ける。フキアエズ軍はこの森に残って、直接王都を目指してほしい、ただ、このまま進めば王都に着く前に敵と接触してしまう。だから、俺たちが敵の側背に回り込むタイミングで飛び出して欲しいんだ。多分、チャンスは一回だけだ」

「どうしてそんな回りくどい事をするんだい?、側背ならばマキュウェル軍がいるだろうに。直接対決していいんじゃないか?」

「いや、、、マキュウェルに流した情報が、敵軍に伝わって、敵部隊の多くを北のエフライム方面に割くまでの時間が必要だ、多分、最低でも一日はかかる。兵力比から考えて、エフライム軍42万の南進に備えるには、最低でも15万は北に割く必要がある。それが完了するまでは、俺たちの戦力比ではどうにもならない」

 エガ王子は、なるほど、とすぐに理解出来たようだった。
 この作戦は、共和国軍40万の鉄壁の守りが、北に15万、中央に25万に分かれてもらわないと意味がない。
 正面の敵が25万ならば、ドットス軍とマキュウェル軍、フキアエズ軍の総兵力32万で、数の上では有利に戦える。
 あくまでも机上の話ではあるが、たとえ机上の話であっても、これでようやく勝機が見えてきたのだから、少しは前進と言ったところだろう。

 、、、、あとは、マキュウェル軍が戦力化出来るか、にかかっているな。
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