自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

巨人族の戦士

第256話 何が起きているんだ？

　興奮した俺を諭す、という意味では、彼の行動は成功したと言える、何故なら、、、

「、、、、エガ王子、、無事だったのか？」

　俺の目の間にいる男、それは間違いなくエガ王子であった。
　それは、生死不明で、マキュウェルが俺に泣きつくほどに心配した相手である。
　
「あまりノアンカ君やゲール君を責めないでやってくれ、これには少し複雑な事情があるんだ」

　こうして冷静さを取りもどした俺は、色々と考えなくてはならない事が山積していることも思い出す。

「エガ王子、まずは目の前の敵から解決しなければならない、、、、ところで君は、一体どうやってここまで来ることが出来たんだ？」

　すると、エガ王子は少し笑いながら「流石に一人では来てないよ」と言い、手を挙げて合図を送る。
　、、、それ、さっきゲール准尉がやったやつだな。

　すると、側面にいた別の部隊は、一斉に銃撃を開始する。
　ん？、一体どこの部隊だ？、銃を持っている部隊は、この世界では特定の部隊でしかないはずなんだが。

　エガ王子の合図は、射撃の統制だったようだ、側背に迫っていた敵兵が、もの凄い勢いで倒れて行く。
　
「エガ王子、これは一体、何が起きているんだ？」

「ああ、今この方向に居るのは我がフキアエズ軍だ」

「一体、どうやって銃を？」

　俺は再び、エガ王子がオルコ共和国軍と通じているのでは、と一瞬疑った。

「どうやってって、それはユウスケが一番よく知っているだろ？、奪ったんだよ、共和国軍からね」

　ああ、なるほど、そういう事か。
　エガ王子も、さすが一国の王子。
　しかし、どうやって銃を奪った？

「緒戦において、我が軍は敵の小銃によって大損害を得た。それで、土地勘のあるこの森に戦場を移して洋弓銃《クロスボウ》で近接戦闘を展開したんだ。こちらの洋弓銃《クロスボウ》は音がしないからね。敵の銃は射程は長いけど、森の中では洋弓銃《クロスボウ》とでは概ね互角なんだ。だから、敵を森の奥に引き込んで、ゆっくりと戦って行ったら、かなりの銃が手に入った、という訳」

　あっけらかんと、そう語るエガ王子だったが、苦労もあったろうに。

「それにしても、無事でいるなら一言くらい連絡してもよかったじゃないか、ムスキは？、ムスキは無事なのか？」

　そうだ、考えてみれば、ムスキも妖精さんを使って連絡すらしてこないのだから、てっきりやられたと思うじゃないか。

「ユウスケ！、私はここに居ますよ！」

　おおお、ムスキ、、、、ってか、こんな危険な戦場に来ちゃダメじゃないか！
　俺はそう思っていると、ムスキは手に小銃を持っていた。
　そう、彼女もまた、銃を持って戦っていたのだ。

「ムスキ、君まで森の中で白兵戦をしていたのか？」

「彼女は銃に詳しいからね、とんでもなく戦力になったよ」

　、、、、で、どうして連絡をしてこないのかの答えがまだなんだがな。

「ムスキが居るなら、どうして妖精フォンを使わなかったんだ？、みんな心配してたんだぞ」

　すると、にやけたエガ王子の表情が、少し強張った。

「、、、、ユウスケ、そこが少し問題でね」


　何だよ、何でそんなに深刻な顔をするんだ？