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巨人族の戦士
第243話 B中隊連れて来たぞ!
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この時すでに、3万4千の損害を出したエレーナ皇女軍は、それでも止まることなく東進を継続していた。
それは、換算すれば3m進むのに一人が命を落とす消耗戦であり、新たに前進出来たのは24km程度であった。
このまま王都まで進撃したら、さすがに全滅しそうなレベルだ。
「ベナル司令官、もう随分戦局が降着しているようですが、いかがかしら」
エレーナが、ベナル戦況の確認をしているが、行けば敵の小銃の餌食となり、第一線部隊はどうしても遮蔽物を見付けるや、そこで戦線が膠着してしまうのだ。
「後退するものは討つ、とはいったものの、まさか膠着している兵まで討つわけにも行きませんからね、、、これでは、7日間でフキアエズ王都へ前進するという公約も果たせない可能性があります」
それは無理もない話だった。
何しろ、俺たちがあの小さな勝利を挙げてから、既に三日も経過している上に、王都は未だ遙か東の果てなのだから。
「エレーナ様、南より新たな軍勢が迫ってきています!」
侍女があわてて皇女幕舎に入ってきた。
メルガがその真意を確かめようと、エレーナの代わりに様子を確認に向かう。
すると、遙か南方より、かなりの部隊がこちらに近づいて来るのが見えた。
「あの軍隊は、一体何ですの?」
「軍隊が降って沸く訳がないわ、あれは友軍ね、ほら、この距離でも撃ってこないなら、共和国軍ではないわ」
「、、、エレーナ様、危険です、このように前に出られてはなりません、、、ああっ、あの軍隊は「銃」を持っています!、誰か、エレーナ様を幕舎の奥へお連れして!」
メルガの言うことはもっともであったが、エレーナは銃を装備した軍隊が撃って来ないこの状況を、もしやと思い双眼鏡を手にとって再びメルガの位置まで走ってきた。
「エレーナ様!」
こうなるとメルガの言うことすら聞かない。
しかし、その手に取った双眼鏡で、迫り来る軍勢を見たエレーナは、突然大笑いして転げ回った。
「ハハハっ、これは愉快な光景だわ、久々に笑いました。エド、ちょっと見て頂戴、貴方の国の軍隊が、ユウスケに率いられてこっちへ来るわ」
それを聞いたエド・キニーレイ大尉が、メルガの双眼鏡で彼らを見ると、そこには手を振りながらこちらに迫ってくる軍隊があった。
「ユウスケ様?、、、、エレーナ様、たしかにユウスケ様です、あ、後ろにはミスズ殿も一緒です!」
こうして戦線が膠着しつつあったエレーナ軍に、俺はようやく合流する事が出来たのだ。
「ベナル、ベナル司令官はいないか?」
俺はまず、一番にベナルを探した。
この話は、あいつにする方が手っ取り早い。
ベナルはこの世界でも、奇抜な意見に対して一番包容力を持った男だからな。
「もう、せかっく迎えに来たと言うのに、相変わらずねユウスケは」
前線の、それも友軍との接点に、13歳の少女が出てきて、何やら話をしている。
後方でそれを見た荒くれB中隊の隊員達は、随分小生意気な少女が、こんな所で何をしているのだろうと、不思議でならなかった。
「、、、んあ?、、おー、どうしたお前ら!、久しぶりだな!」
そこへカシラビが現れ、B中隊の兵士達は歓声に包まれた。
「何だよ、お前ら、、、よせやい!」
カシラビも、いつになく大歓迎をされて、かなり恥ずかしそうだった。
「ところでカシラビの兄貴、あのお嬢ちゃんは、一体何なんですか?」
若い兵長が、カシラビに聞く、するとカシラビは驚いて
「お、、、お前ら、知らないのか?、あのお方は」
カシラビがそう言い終わる前に、ノアンカがエレーナの前に跪き、丁重に敬礼をしている。
それを見た一同は、開いた口が塞がらない状況だった。
「何だ貴様ら、、、お前たち、、、何でここに?」
「ノアンカ、お前も寂しいだろうと思って、B中隊連れて来たぞ!」
俺がそう言うと、B中隊とカシラビは、再び笑い声に満たされた。
しかし、ノアンカは嬉しさ半分に、中隊に一喝《いっかつ》入れるのであった。
「何を笑っとるか貴様ら、お前たちの恩前に有らせられるこのお方は、オルコ帝国軍総帥、エレーナ皇女殿下に在らせられるぞ!」
大笑いをしていたB中隊の隊員も、さすがの皇女殿下の実物を前に、もはや顔面蒼白状態で固まっていた。
「もう、ノアンカはお堅いのね、せっかく部下との再会でしょ、ちょっとは労ってあげなさいよ」
今度はノアンカの方も固まってしまった。
俺は一人、その光景を見ながら笑いを堪えるのに必死だった。
それは、換算すれば3m進むのに一人が命を落とす消耗戦であり、新たに前進出来たのは24km程度であった。
このまま王都まで進撃したら、さすがに全滅しそうなレベルだ。
「ベナル司令官、もう随分戦局が降着しているようですが、いかがかしら」
エレーナが、ベナル戦況の確認をしているが、行けば敵の小銃の餌食となり、第一線部隊はどうしても遮蔽物を見付けるや、そこで戦線が膠着してしまうのだ。
「後退するものは討つ、とはいったものの、まさか膠着している兵まで討つわけにも行きませんからね、、、これでは、7日間でフキアエズ王都へ前進するという公約も果たせない可能性があります」
それは無理もない話だった。
何しろ、俺たちがあの小さな勝利を挙げてから、既に三日も経過している上に、王都は未だ遙か東の果てなのだから。
「エレーナ様、南より新たな軍勢が迫ってきています!」
侍女があわてて皇女幕舎に入ってきた。
メルガがその真意を確かめようと、エレーナの代わりに様子を確認に向かう。
すると、遙か南方より、かなりの部隊がこちらに近づいて来るのが見えた。
「あの軍隊は、一体何ですの?」
「軍隊が降って沸く訳がないわ、あれは友軍ね、ほら、この距離でも撃ってこないなら、共和国軍ではないわ」
「、、、エレーナ様、危険です、このように前に出られてはなりません、、、ああっ、あの軍隊は「銃」を持っています!、誰か、エレーナ様を幕舎の奥へお連れして!」
メルガの言うことはもっともであったが、エレーナは銃を装備した軍隊が撃って来ないこの状況を、もしやと思い双眼鏡を手にとって再びメルガの位置まで走ってきた。
「エレーナ様!」
こうなるとメルガの言うことすら聞かない。
しかし、その手に取った双眼鏡で、迫り来る軍勢を見たエレーナは、突然大笑いして転げ回った。
「ハハハっ、これは愉快な光景だわ、久々に笑いました。エド、ちょっと見て頂戴、貴方の国の軍隊が、ユウスケに率いられてこっちへ来るわ」
それを聞いたエド・キニーレイ大尉が、メルガの双眼鏡で彼らを見ると、そこには手を振りながらこちらに迫ってくる軍隊があった。
「ユウスケ様?、、、、エレーナ様、たしかにユウスケ様です、あ、後ろにはミスズ殿も一緒です!」
こうして戦線が膠着しつつあったエレーナ軍に、俺はようやく合流する事が出来たのだ。
「ベナル、ベナル司令官はいないか?」
俺はまず、一番にベナルを探した。
この話は、あいつにする方が手っ取り早い。
ベナルはこの世界でも、奇抜な意見に対して一番包容力を持った男だからな。
「もう、せかっく迎えに来たと言うのに、相変わらずねユウスケは」
前線の、それも友軍との接点に、13歳の少女が出てきて、何やら話をしている。
後方でそれを見た荒くれB中隊の隊員達は、随分小生意気な少女が、こんな所で何をしているのだろうと、不思議でならなかった。
「、、、んあ?、、おー、どうしたお前ら!、久しぶりだな!」
そこへカシラビが現れ、B中隊の兵士達は歓声に包まれた。
「何だよ、お前ら、、、よせやい!」
カシラビも、いつになく大歓迎をされて、かなり恥ずかしそうだった。
「ところでカシラビの兄貴、あのお嬢ちゃんは、一体何なんですか?」
若い兵長が、カシラビに聞く、するとカシラビは驚いて
「お、、、お前ら、知らないのか?、あのお方は」
カシラビがそう言い終わる前に、ノアンカがエレーナの前に跪き、丁重に敬礼をしている。
それを見た一同は、開いた口が塞がらない状況だった。
「何だ貴様ら、、、お前たち、、、何でここに?」
「ノアンカ、お前も寂しいだろうと思って、B中隊連れて来たぞ!」
俺がそう言うと、B中隊とカシラビは、再び笑い声に満たされた。
しかし、ノアンカは嬉しさ半分に、中隊に一喝《いっかつ》入れるのであった。
「何を笑っとるか貴様ら、お前たちの恩前に有らせられるこのお方は、オルコ帝国軍総帥、エレーナ皇女殿下に在らせられるぞ!」
大笑いをしていたB中隊の隊員も、さすがの皇女殿下の実物を前に、もはや顔面蒼白状態で固まっていた。
「もう、ノアンカはお堅いのね、せっかく部下との再会でしょ、ちょっとは労ってあげなさいよ」
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