自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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巨人族の戦士

第240話 今、俺たちに必要なもの

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「ユウスケ殿、敵の前哨線が見えてきました、それでは予定通り、ここを隠密に通過します」

 ゲール曹長は、当初の計画通り敵の前哨戦を、戦う事無く隠密に素通りし、そのまま地面を這うように、2個中隊が前進した。
 俺は二手に分かれる時、慣れているハイハープB中隊の方を独立的に、そして、不慣れなロームボルド連隊E中隊を俺の直轄として前進させた。

「ユウスケ様、、、、わざわざこのような危険な戦場に、女性を連れて来なくても良いのではありませんか?、それにこの装備、ナイフに洋弓銃《クロスボウ》のみなんて、騎士道に反します」

 こちらのE中隊長が、心配して助言する。
 俺だって玲子君は置いて来るのが正解だと思っているが、彼女はマグネラの事があって以来、俺から離れようとしない。
 それに、銃器には、彼女もかなり詳しいから、この場では連れて行くのが正解だろう。
 、、、まあ、これほど泥だらけになるのも、珍しいくらいではあるのだが、、。

「装備は俺が厳選したものだ、これには理由がある、説明した通りだ。異議ががあろうと、やってもらうぞ。いくら勇ましくとも、勝たねば意味がないのだからな」

 ちょっと厳しい言い方だが、こんな最前線で議論の余地などない、命令不服従は、そのまま死を意味する。
 それだけに、厳しく行かないとな。


 先行した向こうのB中隊は、それでも果敢に敵の側面を越え、ついに後方に到達した。

 ここからが勝負だ。

 まず、敵の勢力がまったく不明であるため、警戒として前に出ているこの前哨部隊を完全に包囲して、ジワジワと包囲環を狭めてゆく。

 そして、可能ならば、敵に発砲させないよう注意して、洋弓銃《クロスボウ》とナイフで敵を倒す。

 おっ、最初の敵兵を洋弓銃《クロスボウ》で倒したぞ、よしよし。
 そして、気が付いた敵兵が振り向くと、3人がナイフで隠密処理、、、なんだか慣れているな。
 そう、俺がイメージした戦い方そのものだ。

「いいか、E中隊長、この方式を繰り返して行く、その課程で、敵の銃が少しずつ手に入る、解るな、俺たちにはこれが必要だ。そして、これが100丁手に入るまでは、絶対に撃ってはならない、解るか?」

 E中隊長も、若い貴族だから、本当は納得が行かないのだろうが、ここは従ってもらう。
 それにしても、荒くれB中隊はよくやっている。
 B中隊は、セッセと敵を倒して行くと、既に20丁ほどの小銃を奪い、それを逐次後方に下げて行く。
 後方では、ハイハープの戦いで射撃経験のある隊員が、銃をカチャカチャと金属音を鳴らしながら機能点検をしている。
 幸い、この部隊が持っていた小銃も、旧日本軍の99式小銃のようで、構造も射撃要領も同じだった。

 B中隊の活躍を見ていたE中隊の隊員が、何を思ったのか、いきなり立ちはだかり、正面から敵にめがけてナイフで襲いかかるではないか。

「バカ、何やっってんだ!」

 敵の銃口の前に立ちはだかったE中隊のメンバーは、一瞬で射撃され、その場に倒れ込む。

「B中隊、射撃開始、各個に撃て!」

 始まってしまったものは仕方がない、丁度25丁程度がこちらに入手出来た時点で、激しい銃撃戦に発展した。
 こうなると、もはやだれも怖くて頭を上げる事が出来ない。
 当初の考えでは、敵の小銃をもっと奪ってからの射撃だったが、さすがに少し早い戦いになってしまった。

 、、、これは、もう仕方がないな。

「A中隊、前へ!」

 俺は後方に準備させていた、重装甲A中隊を前進させ、前哨線を威嚇した。
 すると、案の定、彼らは後退を始めるではないか。

「全中隊、突撃せよ、このまま一気に制圧だ!」

 敵の後方に、もっと大きな部隊が居るのは明白だった。
 しかし、ここでチマチマと銃撃戦をしていれば、必ず敵主力が増援に来てしまう。

 それが来るまでの、僅かな時間が勝負だ。

 この前哨を全滅させ、彼らの持つ小銃を全てこちらで頂く。

 そして、勝負は意外にも数分で片が付いた。

 前哨の総兵力は50名程度、全員が銃で武装していたが、半分の銃がこちら側に捕獲され、前方からは重装甲騎兵が圧迫をかけたことで、戦線が崩壊してしまったようだ。
 彼らが敗走を始めたと同時に、味方の洋弓銃《クロスボウ》が雨霰と敵に降り注ぎ、結局残りの前哨は全滅してしまった。

 敵主力が、銃声を聞いてこちらに来るだろう。


 さあ、ここからが勝負だ。
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