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巨人族の戦士
第234話 先鋒師団の名誉
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マキュウェルは、急遽全師団長と軍師長本部の全軍師を呼び、作戦会議を開いた。
それは、今起こっている事、これからどうすべきかということを協議するためだ。
本来であれば、命令の徹底としたいところではあったが、この異常事態に、マキュウェルも古参の師団長から意見を吸い上げたいと感じていた。
「、、、、マキュウェル様、その話が本当であれば、無策は愚行となりますな、、、」
そう、無策、実に無策なのである。
この状況において、何ら打開策などあるはずも無かった。
「マキュウェル様、こうなっては我ら師団は、猛攻撃により敵を駆逐するより他ありません、どうか先鋒師団の名誉を我が師団に」
3師団長が申し出ると、他の師団長も我先にと先鋒を申し出た。
それは、この世界の軍人としては最も武功に近く名誉な役職と言えた。
しかし、この場に居る各師団長は、今回に限っては名誉ではなく、一番危険な役割を自身の師団が引き受ける覚悟での申し出であった。
当然、マキュウェルはそれを解った上で宥めた。
「貴君らの申し出は、軍のトップとして本当に有り難く感じる、が、無策の状態の今、どの師団が先鋒になるかの議論はそれこそ愚策と言える。隊列の順番などは、策を講じてからで良い」
そんな事を言わなくてはならないマキュウェルが、ロームボルドには不憫でならなかった。
「各師団長閣下、ここは新参の師団長である、ワイアット・メイ・ロームボルドにその名誉をいただけませんかな?」
ロームボルドは闘将として名を馳せてはいるが、国王やハルドムイ准将と同い年であり、師団長としては未だ若年と言える年齢であった。
各師団長は、その補職を軍人最後の補職とするほどの老齢であり、国王の期別年齢では、未だ50歳ほどである。
「その代わり、私は無策で前に出る気はございませんぞ、私はこの王立軍で唯一銃撃戦を突破した男ですからな」
それを聞いた各師団長も、納得せざるを得なかった、事実、この「銃」という不可解な兵器に対し、何ら知識が無い以上、経験ほど貴重なものは無いのだ。
そうは言っても、それはその場を納得させるだけの材料でしかないことは、同じ戦場にいたハルドムイには解っていた。
結局、何も決定することなく、軍師長本部の指示事項には確実に従うよう徹底されただけで、明確な作戦構想と呼べるものは何一つ出ては来なかった。
「ワイアット、さっきはすまなかったな」
軍師長は、すっかり気落ちしていることが、明確であった。
「どうしたヨア、お主らしくないではないか、士官学校時代に、あれほど尖っていた、あの勢いはどうした?」
「まったく、若いとは恐ろしい。あの頃は、戦術で自分より上の人間なんていないだろうと有頂天になっておった。実際には、若いベナルのような軍人には、到底及ばないと知って、ムキになってな、軍師をいじめたりもしたが、奴の気持ちが、今頃になって理解できるとはな」
それは、ロームボルドにも心当たりのあることだけに、何とも耳の痛い話だった。
ロクソム城に居た頃、この二人はマキュウェル殿下の直轄、双璧として誇らしく思っていたところ、自分の息子と年齢も変わらないような若手軍師に戦術を指示されるようになると、ロームボルドもベナルにはいちいち突っかかっていたものだ。
「、、、ベナルか、、、奴は別格なんだよ、あいつは将来、ドットス軍を束ねる事が出来る数少ない奇跡なんじゃ」
「それでも、俺たちにも矜持と言うものがあるでな、ベナルもエレーナ皇女軍の司令官なんぞ、また厄介なクジを引いたもんだがな」
二人は少し笑った、笑うしかなかった。
ロクソム城時代のメンバーが一同に会することが今後あれば、きっと楽しく笑い合えるだろうに、と。
「いやあ、ロームボルド少将、お久しぶりです!」
二人の静かな笑いを破って、俺は二人に話しかけた、二人とも、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見る。
、、、あれ、俺、忘れられた?
それは、今起こっている事、これからどうすべきかということを協議するためだ。
本来であれば、命令の徹底としたいところではあったが、この異常事態に、マキュウェルも古参の師団長から意見を吸い上げたいと感じていた。
「、、、、マキュウェル様、その話が本当であれば、無策は愚行となりますな、、、」
そう、無策、実に無策なのである。
この状況において、何ら打開策などあるはずも無かった。
「マキュウェル様、こうなっては我ら師団は、猛攻撃により敵を駆逐するより他ありません、どうか先鋒師団の名誉を我が師団に」
3師団長が申し出ると、他の師団長も我先にと先鋒を申し出た。
それは、この世界の軍人としては最も武功に近く名誉な役職と言えた。
しかし、この場に居る各師団長は、今回に限っては名誉ではなく、一番危険な役割を自身の師団が引き受ける覚悟での申し出であった。
当然、マキュウェルはそれを解った上で宥めた。
「貴君らの申し出は、軍のトップとして本当に有り難く感じる、が、無策の状態の今、どの師団が先鋒になるかの議論はそれこそ愚策と言える。隊列の順番などは、策を講じてからで良い」
そんな事を言わなくてはならないマキュウェルが、ロームボルドには不憫でならなかった。
「各師団長閣下、ここは新参の師団長である、ワイアット・メイ・ロームボルドにその名誉をいただけませんかな?」
ロームボルドは闘将として名を馳せてはいるが、国王やハルドムイ准将と同い年であり、師団長としては未だ若年と言える年齢であった。
各師団長は、その補職を軍人最後の補職とするほどの老齢であり、国王の期別年齢では、未だ50歳ほどである。
「その代わり、私は無策で前に出る気はございませんぞ、私はこの王立軍で唯一銃撃戦を突破した男ですからな」
それを聞いた各師団長も、納得せざるを得なかった、事実、この「銃」という不可解な兵器に対し、何ら知識が無い以上、経験ほど貴重なものは無いのだ。
そうは言っても、それはその場を納得させるだけの材料でしかないことは、同じ戦場にいたハルドムイには解っていた。
結局、何も決定することなく、軍師長本部の指示事項には確実に従うよう徹底されただけで、明確な作戦構想と呼べるものは何一つ出ては来なかった。
「ワイアット、さっきはすまなかったな」
軍師長は、すっかり気落ちしていることが、明確であった。
「どうしたヨア、お主らしくないではないか、士官学校時代に、あれほど尖っていた、あの勢いはどうした?」
「まったく、若いとは恐ろしい。あの頃は、戦術で自分より上の人間なんていないだろうと有頂天になっておった。実際には、若いベナルのような軍人には、到底及ばないと知って、ムキになってな、軍師をいじめたりもしたが、奴の気持ちが、今頃になって理解できるとはな」
それは、ロームボルドにも心当たりのあることだけに、何とも耳の痛い話だった。
ロクソム城に居た頃、この二人はマキュウェル殿下の直轄、双璧として誇らしく思っていたところ、自分の息子と年齢も変わらないような若手軍師に戦術を指示されるようになると、ロームボルドもベナルにはいちいち突っかかっていたものだ。
「、、、ベナルか、、、奴は別格なんだよ、あいつは将来、ドットス軍を束ねる事が出来る数少ない奇跡なんじゃ」
「それでも、俺たちにも矜持と言うものがあるでな、ベナルもエレーナ皇女軍の司令官なんぞ、また厄介なクジを引いたもんだがな」
二人は少し笑った、笑うしかなかった。
ロクソム城時代のメンバーが一同に会することが今後あれば、きっと楽しく笑い合えるだろうに、と。
「いやあ、ロームボルド少将、お久しぶりです!」
二人の静かな笑いを破って、俺は二人に話しかけた、二人とも、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見る。
、、、あれ、俺、忘れられた?
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