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フキアエズ大会戦
第219話 ロームボルド第12師団
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「お父様、そのお姿は一体、、、」
マキュウェルが、つい先ほどまでエガ王子と交わした誓の興奮も冷めやらぬその日の夜の事だった。
複雑な事情を抱えつつ、自分の婚約が成立した旨の報告をしようと国王のプライベートの部屋を訪れた時、マッシュ国王は、既に礼装を脱ぎ、前線に赴く大元帥の軍服に身を包んでいた。
「おお、マキュウェルか、早速見られてしまったな」
「お父様、その装備は、もしや前線に出られるおつもりですか?、さすがに一国の君主が、先陣切って前にお出になるのはいかがなものかと、、、」
いつになく、父がギラギラした目でいることに、マキュウェルは気付いていた。
、、、ああ、フキアエズ王といい、父親といい、どうしてこうも血が騒ぐのだろうと半ば諦めモードのマキュウェルであった。
聞けば、今回マキュウェル軍の創設に当たり、軍首脳部を説得させる一つの策であるとのことだった。
それは、兵力分散による自軍の不利益を、同盟による戦略であることを内外に示すために、国王自らが軍を率いてオルコ共和国に挑む必要があるのだとか。
マキュウェルからすれば、それは国王が前線に出たいという衝動を誤魔化すための言い訳のように感じられたが、実際はその逆で、マキュウェル軍創設のため、自身が軍服に身を包むことで、予備役招集や、軍の増強を順調に進めるためのものでもあった。
それでも、随分久々の軍服姿に、やはり気持ちの昂りを隠すことが出来ないマッシュ国王であった。
、、、、当然、大親友であり、士官学校同期のワイアット・メイ・ロームボルドも馳せ参じていた。
「まあ、ロームボルド准将、、、、あら、まあ、これはご昇進を?」
ロームボルドは、久しぶりの姫君を前に、自身の新たな階級章も少々照れ隠し半分で陽気に話しかけて来た。
「これはマキュウェル様、、、益々お美しくなられましたな」
「止してください、おじさま、、、、それより少将ご昇進、おめでとうございます、いつご昇進を?」
イタズラっぽい表情で、マッシュ国王がロームボルドとマキュウェルを眺めている、、、そういう事か、とマキュウェルは察した。
此度の進軍に備え、大規模な人事異動がなされていた。
それは、このマキュウェル軍を、しっかり戦いに勝てる軍隊に編成しなければならなかった故でもある。
マッシュ国王は、これまで娘の監視も兼ねて、長らくロクソム城で連隊長、旅団長をさせていたロームボルドを、マキュウェル軍の一翼に添えた。
しかし、旅団長では、部隊規模がやや小さいこともあり、この度准将から少将へ昇進させ、同時にロクソム旅団をロームボルド第12師団として総兵力1万2千の師団級に昇格させたのである。
これにより、ルームボルドは再びマキュウェルの元で元気よく指揮を執ることとなった。
先日、准将に昇進したばかりのロームボルドが、一気に少将へ昇任というこの人事に不満が噴出するかと思われたが、実はこれにはブラックナイト・ユニットの名声が少なからず影響していた。
と言うのも、現在のブラックナイト第1部隊は、旧ロームボルド連隊C中隊のほぼそのままのメンバーである。
本来であれば、国王陛下の軍隊が、離反し個人の男の元に馳せ参じ、義勇兵として戦うなどという事はタブー中のタブーであった。
しかし、その行動原理は、主君の身代わりとして処刑される予定であった若き妻の救出と、虐殺の危険に晒されたマグネラの解放の主戦力として戦い抜いた、今や英雄たちである。
そんな彼らの行動を、むしろ背中を押してやる男気に、ドットス国内は元より、周辺国一体でもこの話は英雄譚として急速に広まっていたのである。
もちろん、マッシュ国王もそれに気付いていた。
そして、ブラックナイト・ユニットの指揮官、アッガ・ウクルキ元少佐が、その英雄的行動から、やがては一国の主となることは、既に織り込み済みなのである。
三国同盟により、長らく良好とは言えない隣国との関係も、今やフキアエズ王国は王女と共に戦う同士であり、婚約関係にある。
北のエフライム公国も、雄介の活躍により、こちら側に付いている。
なにより、エレーナ皇女の挙兵には、大きな貸がある上に、未来の伴侶となるであろうエド・キニーレイ大尉もドットス軍人だ。
緩衝地帯に設ける新たな国家ですら、その国王候補は元自国の軍人という、マッシュ国王にとって、全てが期待通りの方向へ向かっていたのだから。
ただ、その大いなる勝利には、今まさに大きすぎる壁が立ちはだかっていた。
この、オルコ共和国軍との戦いに勝利してこそ、初めてそれらは成就するのだから。
マキュウェルが、つい先ほどまでエガ王子と交わした誓の興奮も冷めやらぬその日の夜の事だった。
複雑な事情を抱えつつ、自分の婚約が成立した旨の報告をしようと国王のプライベートの部屋を訪れた時、マッシュ国王は、既に礼装を脱ぎ、前線に赴く大元帥の軍服に身を包んでいた。
「おお、マキュウェルか、早速見られてしまったな」
「お父様、その装備は、もしや前線に出られるおつもりですか?、さすがに一国の君主が、先陣切って前にお出になるのはいかがなものかと、、、」
いつになく、父がギラギラした目でいることに、マキュウェルは気付いていた。
、、、ああ、フキアエズ王といい、父親といい、どうしてこうも血が騒ぐのだろうと半ば諦めモードのマキュウェルであった。
聞けば、今回マキュウェル軍の創設に当たり、軍首脳部を説得させる一つの策であるとのことだった。
それは、兵力分散による自軍の不利益を、同盟による戦略であることを内外に示すために、国王自らが軍を率いてオルコ共和国に挑む必要があるのだとか。
マキュウェルからすれば、それは国王が前線に出たいという衝動を誤魔化すための言い訳のように感じられたが、実際はその逆で、マキュウェル軍創設のため、自身が軍服に身を包むことで、予備役招集や、軍の増強を順調に進めるためのものでもあった。
それでも、随分久々の軍服姿に、やはり気持ちの昂りを隠すことが出来ないマッシュ国王であった。
、、、、当然、大親友であり、士官学校同期のワイアット・メイ・ロームボルドも馳せ参じていた。
「まあ、ロームボルド准将、、、、あら、まあ、これはご昇進を?」
ロームボルドは、久しぶりの姫君を前に、自身の新たな階級章も少々照れ隠し半分で陽気に話しかけて来た。
「これはマキュウェル様、、、益々お美しくなられましたな」
「止してください、おじさま、、、、それより少将ご昇進、おめでとうございます、いつご昇進を?」
イタズラっぽい表情で、マッシュ国王がロームボルドとマキュウェルを眺めている、、、そういう事か、とマキュウェルは察した。
此度の進軍に備え、大規模な人事異動がなされていた。
それは、このマキュウェル軍を、しっかり戦いに勝てる軍隊に編成しなければならなかった故でもある。
マッシュ国王は、これまで娘の監視も兼ねて、長らくロクソム城で連隊長、旅団長をさせていたロームボルドを、マキュウェル軍の一翼に添えた。
しかし、旅団長では、部隊規模がやや小さいこともあり、この度准将から少将へ昇進させ、同時にロクソム旅団をロームボルド第12師団として総兵力1万2千の師団級に昇格させたのである。
これにより、ルームボルドは再びマキュウェルの元で元気よく指揮を執ることとなった。
先日、准将に昇進したばかりのロームボルドが、一気に少将へ昇任というこの人事に不満が噴出するかと思われたが、実はこれにはブラックナイト・ユニットの名声が少なからず影響していた。
と言うのも、現在のブラックナイト第1部隊は、旧ロームボルド連隊C中隊のほぼそのままのメンバーである。
本来であれば、国王陛下の軍隊が、離反し個人の男の元に馳せ参じ、義勇兵として戦うなどという事はタブー中のタブーであった。
しかし、その行動原理は、主君の身代わりとして処刑される予定であった若き妻の救出と、虐殺の危険に晒されたマグネラの解放の主戦力として戦い抜いた、今や英雄たちである。
そんな彼らの行動を、むしろ背中を押してやる男気に、ドットス国内は元より、周辺国一体でもこの話は英雄譚として急速に広まっていたのである。
もちろん、マッシュ国王もそれに気付いていた。
そして、ブラックナイト・ユニットの指揮官、アッガ・ウクルキ元少佐が、その英雄的行動から、やがては一国の主となることは、既に織り込み済みなのである。
三国同盟により、長らく良好とは言えない隣国との関係も、今やフキアエズ王国は王女と共に戦う同士であり、婚約関係にある。
北のエフライム公国も、雄介の活躍により、こちら側に付いている。
なにより、エレーナ皇女の挙兵には、大きな貸がある上に、未来の伴侶となるであろうエド・キニーレイ大尉もドットス軍人だ。
緩衝地帯に設ける新たな国家ですら、その国王候補は元自国の軍人という、マッシュ国王にとって、全てが期待通りの方向へ向かっていたのだから。
ただ、その大いなる勝利には、今まさに大きすぎる壁が立ちはだかっていた。
この、オルコ共和国軍との戦いに勝利してこそ、初めてそれらは成就するのだから。
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