自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

フキアエズ大会戦

第215話 人の潜在能力

「私の意思と、メルガの意思が繋がったの。そして私は確信したわ、人の意思は、強さによってつながる事が出来るって」

　エレーナが作戦会議を終えた後、俺にそう呟いた。
　今日は長い一日となった。
　エレーナのマグネラ解放宣言、それに引き続く皇国の復活宣言。
　、、、そして、新たな王国の宣言。

　一日で世界が大きく動いたような日だった。

　そんな一日の最後に、エレーナが不思議な事を呟いた、、、エレーナにとって、それは皇国の復活宣言よりも重要なことに思えたのだろう。
　そう、真相心理の世界で、エレーナはメルガと繋がった、一瞬だけ。
　でも、彼女たちは、その一瞬が繋がっただけで十分に解り合えた。
　それは異世界人である俺たちにも理解出来ない不可解な事でもあった。

『シズ、体内ディバイスを使わずにシズの部屋に行くことなんて出来るのか？」

『私もこれは意外でした、、、データベース上には無いのですが、噂の域から漏れ出た情報ですが、、、人間の一部にそれが出来る人が稀に居て、この技術の応用にも利用された、と言われているらしいですね、、、ただ、正式なデータベースには記載が無いのですが」

　多分、エレーナは硬直したメルガと一瞬だけ繋がり、彼女の意思を理解出来たのだろう。
　それは玲子君や俺には理解出来ない現象だ、もちろんシズにも。
　オルコ帝国皇帝、恐らくこの一族は何か力を遺伝的に継続することが出来るのかもしれない、その力がある故に、皇帝と皇国はここまで巨大な国家を構築できたのかもしれない。
　これは、これからの戦いに少なからぬ影響を及ぼしそうだ。

「ユウスケ、会議ばかりで大変だろう、疲れていないか？」

　ベナルが俺を気遣ってくれたが、一番疲れているのは他ならぬ司令官ベナルだろう。
　慣れない旧オルコ帝国軍の軍人を束ね、エレーナを皇帝とした新たな軍
　それはドットスの総兵力の倍近い軍勢なんだからな。

「ああ、俺は大丈夫だ、ベナルこそ、少し休んだ方がいいんじゃないか？」

「そうも言っていられないな、空前の大会戦が起こるのだ、まだ誰も見た事のない巨大な作戦図を作らなければならないのだから」

　ベナルは少し嬉しそうにすら見えた。
　軍人の血が騒ぐのだろう、世紀の大決戦、それも我が軍が数の上では相当に有利なのだから。
　ベナルは既に、エレーナがオルコ帝国軍として新たに宣戦布告し、兵を挙げる意思表明をしたことを同盟各国に対し使者を送り伝達を開始していた。
　恐らく、そう時間がかからずに伝達は完了するだろう、、、、一か所を除き。

『シズ、フキアエズ王国軍はどうだ？」

『はい、凄いですね、一国の軍隊が見事に誰もいません！」

　エガ王子は、どうやらうまくやっているようだ。
　国王が全軍率いて南下したとは言え、１０万もの兵力を統制するには優秀な参謀が必要だ、エガもまた王子として多才なのだろう、この作戦には重要な人物だ。
　そして、この作戦には一番適任でもあるだろうな、、、行き先が行き先だからな。


「エガ、、、エガ・フキアエズ王子、、、」

「、、、、、お久しぶりですね、マキュウェル王女殿下」

　それは久々の再会だった。
　二人は共に惹かれあい、それでも友人たちのためにそれぞれの国に帰り、三国同盟として戦うために挙兵の準備をしていた。
　もちろん、マキュウェルもまた、管理人妖精によってこちら側の情報はまるでニュースを見るように理解出来ていた。
　それはフキアエズ王国に残していたムスキとシズ妖精も同様であった。

　それ故に、エガとマキュウェルの再会は、なんとも複雑な感情が入り混じるのである。