自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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マグネラ攻防戦

第210話 情報統制

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「まさか、でも、そんなことって」

「はい、私も信じられませんでしたが、私は夢の世界で、メルガと会ってきたのです」

 おい、ウクルキ、エレーナに本当の事は話すなよ、大丈夫か?

『大丈夫だユウスケ殿、そこは弁えている」

『頼むぞ、さすがにエレーナにバレたら、ヤバいからな」

 実際、彼女の勘の良さは危険だ。
 まさかと思うが、エレーナは何かこちら側の技術と繋がるような特性でもあるのだろうか。

「エレーナ様、メルガの身体には恐らく大きな問題はありません、問題は心なのです」

 ウクルキは、エレーナにメルガが何故目を覚まさないかについて、自分の考えを話した。
 メルガ自身、物心ついた頃からエレーナ様の御身に何かあれば、それをお守りするのが自分の仕事だと、繰り返し言い聞かされて育ってきたメルガは、今回エレーナを庇ったことによって、自分は十分に役割を果たした、と思い込んでいること、そして、自分はもう助からないと覚悟を決めてエレーナの前に飛び出して行ったこと、、、、。
 エレーナはそれを聞くと、再び目に涙を一杯に溜めてメルガを見つめなおした。

「メルガ、貴女は本当にバカね。私ならここに元気でいるわ、、、、もし私が死ぬの言ったら、貴女は目覚めてくれるのかしら?」

「お止めくださいエレーナ様、ここで話していることは、いくら思いを込めてもメルガには届きません。直接届かせるためには、エレーナ様と私が、夢の世界でメルガに直接話す必要があるのです」

「しかし、、、、他人の夢に登場するなんて、聞いた事が無いわ、、、ウクルキさん、あなた、まさかそのような特殊な術を扱う一族なのかしら」

「いえ、どちらかと言えば、そのような術に秀でているのはミスズの一族かと」

 エレーナは、少し納得したようにウクルキの話を飲み込んだ。
 なるほど、この世界のサイズで話をするなら「術」という言い方で説明すればよかったのか。
 エレーナは、玲子君を傍に呼ぶと、メルガとウクルキ、そしてエレーナ自身が足を延ばして寝れるだけのスペースが欲しいこと、そしてその傍に、必ずリラルに居てもらいたいこと、そして、メルガの夢に入れるよう、玲子君に賛助を依頼したのだ。

「解っていると思うけど、皇女である私が、成人男性と寝具を並べて寝たなどという事が、世間に公表されないよう、ここに居る者には情報統制を徹底させます、良いですね」

 すると、不思議そうにエド・キニーレイ大尉がエレーナに、、、

「そんなに気にすることは無いじゃありませんか、私となんて、もう何度も一緒に野宿もしていますし」

 それを聞いた男性一同は、ああ、なんて空気の読めない将校なんだろう、女性一同は、なんて女心の解らない人なんだろうと、それぞれあきれ顔になっていた。
 そして、エレーナは、、、、顔を真っ赤にして、エドの頬に一発平手打ちを決めるのであった。


 、、、大丈夫か?、これから寝ると言うのに、目が冴えてるよな。
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