自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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マグネラ攻防戦

第182話 第2部隊

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 朝靄のオルコ共和国軍キャンプ・マグネラでは、ブラックナイト討伐第3連隊の連隊長撲殺により、大混乱に陥っていた。
 それは、隣接の第2連隊の兵士が3連隊C中隊のレッグ少佐以下の将校によって殺された事実も手伝って、反逆の狼煙《のろし》を挙げた旧C中隊は、中隊のメンバーに対する反感をもって、一触即発の状況に陥っていたのである。

 本来であれば、レッグ少佐を慕って付いて行きたい将校も数多くいたが、それは連隊長の撲殺という事件が、彼等を犯罪者であり逆賊である、という雰囲気が醸成され、マグネラ包囲部隊の内紛という、レジスタンスにとって絶好の機会は奇しくも失われることになった。
 しかし、そんなこととは全く予想外であるウクルキたちブラックナイト・ユニットは、眼前に迫るオルコ軍1個中隊の前進に、中隊を挙げて防御陣形へ移行していた。

「中隊、射撃用意!」

 ドロエ中尉が射撃線を構成すると、普段は騎乗し帯剣している騎兵中隊員は、珍しく洋弓銃《クロスボウ》を構え、敵部隊が射程に入るのを固唾を飲んで待ちかまえた。
 洋弓銃《クロスボウ》の射程圏内に入ってきた彼等を、いよいよ引き金を引こうというその時、ウクルキは、その部隊の先頭が、昨日話したばかりの敵、レッグ・ホーウエイ少佐であることを視認した。

「中隊、撃ち方、待て!」

 射撃を制すると、ウクルキはバリケードの前へ駆け出し、レッグ少佐の前まで来た。

「これは一体どうしたことか?、貴君等は抜刀もせずことらに来たという事は、交戦意志が無い、ということで良いのか?」

「ああ、ウクルキ殿、何とも恥ずかしい話ではあるが、我々はエレーナ皇女遠征軍と合流し、皇女の復権を手助けしたい。そのため、、、恥を忍んで話してしまえば、、、一時的にではあるが、諸君等と行動をともにしたい。」

 バリケードを築いたレジスタンスの一部からは、信じられないという趣旨の野次が飛び交った。
 無理もない、これまで無慈悲な包囲部隊として振る舞ってきた側なのだから。

「待ってくれみんな、彼等は暴行・略奪を行う兵士を厳罰に処し、その場で処刑までしている、騎士道に基づいて行動する本物の軍人だ、話を聞いてやってはくれまいか」

 すると、騒ぎを聞きつけたレジスタンスリーダーのマルスルが訪れた。

「ウクルキ、彼らを信頼できる理由を聞かせてくれないか?」

「俺たちも、元はドットスの軍人だが、民間人に手を挙げた事は一度も無い、彼らも同じく、それが命令であっても市民には手を出さなかった。昨日私は直接それを確認したんだ、彼らは少なくとも共和国軍ではない、まかりなりにも帝国軍人だ、それは信頼に足るのではないか?」

 マナスルはしばらく考えた、が、レジスタンス側も増援が欲しい中、実際にエレーナ皇女遠征軍が到着するまで、多勢に無勢、ここは軍を離脱した彼らを厚遇することで、共和国軍に不協和音を起こさせることに繋がるのではないか、と考えた。

「よろしい、では、ウクルキ少佐の預かりということで、君たち離反部隊を正式にブラックナイト・ユニットとして受け入れる、よろしいな」

 レッグ・ホーウエイ少佐は、それを聞いて安堵の表情となったが、中隊の隊員は、元々ブラックナイト討伐に来たはずが、自分たちがブラックナイトとなったことに少々動揺した、しかし、その後に自分たちの中隊長が取った行動を見て、それはさして気にすることではないことに気付くのである。
 ウクルキとレッグは、まるで古い友人同士のように握手を交わすと、自身をウクルキの配下に置いて欲しいと申し出る。

「いや、貴君らも、我々と全く同様の機動騎兵中隊ではないか、階級も同じ、、元少佐同士、上下関係などなかろう」

「それでは自分たちの気が収まらない、我々は君たちの元討伐隊だ、同等の扱いでは、市民にも遺恨を残すことになるだろう。ここは人助けだと思って、我々をブラックナイト・ユニットに加えてくれないか」

 ウクルキはかなり悩んだが、マルスルが少し助言をしてくれた。
 それは、ウクルキを部隊長とし、元々のブラックナイト旧ドットス軍のリーダーにドロエ中尉を充てて第1部隊とし、今回加わったブラックナイト旧オルコ軍を第2部隊として、引き続きレッグ少佐に指揮を執らせる、というものであった。

 こうして双方は合意に至り、ここに、増強されたブラックナイト・ユニットが再編されたのである。
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