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決 意

第169話 オルコ共和国軍

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 玲子君たちは、旧皇帝派の貴族とともに、村の一番奥にある集会所へ案内された。
 ここでは、既にマグネラの街を包囲しているオルコ軍の焼き討ちにあった住民の避難にも使用されていた。
 そのため、集会所内には小さな子供や母親、老人も含まれていて、子供の泣き声が響く室内は悲壮感に満ちていた。
 そんな時、包囲中のオルコ軍からこちらへ呼びかける声が、村の最深部まで響き渡った。

「我々は新生オルコ軍である、我々は、旧皇帝を打倒し、新たな共和制によって国民主体の政治により、豊かなオルコを構築する。よって、我らオルコ帝国軍は、オルコ共和国軍として新たな道を歩み始めたのだ。マグネラの民よ、我ら新規事業に参加し、豊な国家建設に協力せよ。これは国民主体の国家設立に必要な儀式である、これを妨害する輩は、共和政策への反抗と見なし、一様に処刑する。加担した者の家族も同様とする」

 言っていることが無茶苦茶過ぎる。
 民主主義を盾に、虐殺を公言するようなものだ。
 この状況から、オルコ国民はマグネラのような武装蜂起が出来ないでいる、つまり、このマグネラでの住民の行動一つに、これからオルコが共和制に寄るか、皇帝を復権させるかの分水嶺と言えた。

 その、声明を読み上げた将校の後方から、土煙が上がって行くのが見えた。
 
 ブラックナイト・ユニットだ。

『玲子君、ウクルキが動いた!先ほどの指示通り頼む!」

 玲子君は、住民が作るレジスタンス組織に依頼をし、ブラックナイト・ユニットが襲撃する方向へ向け、今出せる最大限の兵力を包囲部隊の一角へ投入することに成功した。
 このレジスタンスには、カシラビやローハンも加わっていたため、予想以上に統制の取れた動きとなった。
 カシラビは、手持ちの小銃をもって、包囲部隊の一部を瞬殺するが、単発式の小銃ではやはり一気に叩くことが出来ない。
 しかし、今レジスタンスと対峙している正に真後ろからは、駿足で名を馳せた機動騎兵であるブラックナイト・ユニットが急速に迫っていた。
 ここで包囲部隊が一旦は後退すると思われたその時だった。
 包囲部隊の最も強い重装甲騎兵中隊が、その道を塞がんと迫って来る。
 ウクルキは一瞬戸惑ったが、彼らの気質なのか、その速度を緩めることなく重装甲騎兵めがけて突撃を敢行する。
 そんな時だった、カシラビが大声で叫ぶ。

「ゼンガ!、撃て!」

 そう叫んだとほぼ同時に、街の反対側から大きな炸裂音が聞こえたと思った次の瞬間、重装甲騎兵の先頭が、装甲を纏った馬ごと銃弾が貫き、崩れ落ちるではないか。
 
 重装甲騎兵中隊長は、一体何が起こっているのかが理解出来ぬまま、立ちすくみ、数秒が過ぎた。

 そうしている間に、再び炸裂音が聞こえ、数騎の重装甲騎兵が崩れ落ちた。

「後退!、後退せよ!」

 重装甲騎兵の指揮官は、後退を命ずると、それを目の当たりにしていたオルコの一般兵も瓦解するように敗走を始めた。
 その敗走するオルコ兵に、ブラックナイト・ユニットの鋭い剣が襲いかかる。

 バリケードを築いていた住民や、オルコ軍と対峙していたレジスタンスは、その光景を見るや歓喜を挙げて、ブラックナイト・ユニットに駆け寄った。

「あなた方は、もしや今噂になっている、ブラックナイトの方々ですか?」

 ウクルキが馬上から、そうだ、と頷くと、周囲は更に歓声が挙がり、街は久々に喜びの声で満たされた。
 それはまるで、英雄の帰還のように。
 そんな、喝采の中を凱旋するかのようにゆっくりと馬を進めるウクルキの元に、玲子君とルガ・ハイヤー氏が駆け寄ると、ウクルキは

「お義父さん?、、、ハイヤーさんですか?、まさか、何でここにあなたが!」

「ウクルキ殿、噂を聞いております、メルガは、メルガは無事にしていますでしょうか、、、」

 ルガ ハイヤーがそう言い終わる前に、部隊の最後尾にいたメルガがウクルキとルガのいる所に駆け寄り、メルガはルガに抱き着いた。

「ああ、あああ、神よ、何という奇跡を!」

「、、、お父様、、、!」

 抱き合うメルガとルガはその場に跪き、勝利の歓喜に沸く街の広場の中心で、いつまでもそうしていた。
 今生の別れと覚悟を決めていた二人にとって、それはまさに奇跡の再会であった。

 しかし、そんな再会を、いつまでも喜んでいられるほど、状況は回復してはいなかった。
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