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決 意
第159話 あなたの妻として
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短い新婚生活を送るメルガ ↓
翌日の早朝、未明にオルコ反乱勢力の使者からもたらされた要求文により、フキアエズ王国は予定通りオルコ帝国、フキアエズ王国の当面の不可侵条約を交換条件に、エレーナ皇女の引き渡しに合意した。
これにより、エレーナの身代わりとなっているメルガは、即刻オルコ反乱勢力側に引き渡されることとなった。
突然のことであったため、エガもマキュウェルも、メルガとの別れには到底間に合わない。
『シズ、、、王都上空へ飛べるか?、メルガとウクルキの状況が知りたい、、、知ったところで何も解決はしないのだが」
『解りました、、、、管理人様、GFを、よろしくお願いします」
『無論だ、さ、行きなさい、今回は共闘だからな」
見た目には二人の妖精はそのままだが、シズの本体は、エフライム上空からフキアエズの王都へ向かった。
ここから王都は早馬でも二日はかかる距離だが、シズなら数分で到着できる。
この装置を公《おおやけ》に使えたらいいのだが、さすがにこれは最後の手段だ。
ただ、今回に至っては、メルガの連行には間に合わない可能性もある、、、どうしたらいい?。
同じころ、フキアエズの城の離宮では、深夜ながらオルコの使者によって告げられた引き渡し要求について、メルガとウクルキに伝えられた。
ウクルキは自室でメルガを強く抱き寄せ、そのまましばらく離すことは無かった。
「ごめんなさい、とうとうこの日が来てしまいました。でも私は最後に本当に幸せな日々を過ごすことが出来ましたわ。立場はエレーナ皇女であっても、私の心はあなたの妻として逝《い》きます」
「、、、メルガ、、、君を離したくない、ユウスケ殿なら、何とかできるかと思ったが、さすがに間に合わぬか、、。」
「あなた、、、あなたが可愛そう、私が去ったこの家で、貴方は一人になってしまうのね」
そんな二人の時間を引き裂くように、オルコの使者はズカズカと部屋に侵入してくる。
「おや、エレーナ様、これは意外な、、、不貞行為はいけませんぞ、貴女は清らかに逝かねば皇民も納得はしないでしょう」
「なんと下衆《げす》なことを、貴官の前に居るのは皇女殿下だぞ」
「我々の勢力には関係ありませんな、もはや帝国は帝国ではありません、皇女も実効性の無いもの、不敬などという考えはもはやありません」
ウクルキは、歯を食いしばって我慢した。
メルガはウクルキに会釈すると、鏡台の前を指さして、オルコ反乱勢力によって連行されて行った。
ウクルキは、どうすることも出来ず、その場に立ち尽くしたが、それでも家のバルコニーに飛び出すと、本名を伏せてこう叫んだ。
「エレーナ様、必ずお迎えに上がりますので、どうか最後まで諦めずに!」
メルガは、立ち止まると、少し振り返り、それが無理な事だと承知の上で微笑んだ。
ウクルキは、非力な自身を、この時ほど恨んだことは無いだろう。
結局、王立軍少佐と言っても組織の人間、国家間の事情に何ら口出しなど出来ないのであった。
朝焼けの中、武装した衛兵に厳重に守られ、メルガの乗った馬車は情緒も無く走り出した、皇女が乗った馬車とは思えないほど荒々しく。
ウクルキは、馬車を追う事は出来なかった、そんな事をすれば、三国の関係に罅《ひび》が入る、そんなことは解っていた。
彼は一人部屋に入ると、メルガのいない広々とした部屋の中に、自分はただ一人だのだと悟った。
体の芯からこみあげて来る悲しみと無力感に、それは泣かずにはいられなかった。
ここには誰も見ている者もおらず、存分に涙を流して良い状況と言えたが、未だ彼はそれを拒否していた。
それは新妻の今の気持ちを考えると、自分だけが自由に涙することすら申し訳ないと感じたからだ。
そんな時、ウクルキは先ほどメルガが去り際に、鏡台を指さしていたことを思い出した。
彼女の最後の行動、、、、ウクルキは急いで鏡台に駆け寄ると、引出しの最上段に、一通の手紙が残されていた。
翌日の早朝、未明にオルコ反乱勢力の使者からもたらされた要求文により、フキアエズ王国は予定通りオルコ帝国、フキアエズ王国の当面の不可侵条約を交換条件に、エレーナ皇女の引き渡しに合意した。
これにより、エレーナの身代わりとなっているメルガは、即刻オルコ反乱勢力側に引き渡されることとなった。
突然のことであったため、エガもマキュウェルも、メルガとの別れには到底間に合わない。
『シズ、、、王都上空へ飛べるか?、メルガとウクルキの状況が知りたい、、、知ったところで何も解決はしないのだが」
『解りました、、、、管理人様、GFを、よろしくお願いします」
『無論だ、さ、行きなさい、今回は共闘だからな」
見た目には二人の妖精はそのままだが、シズの本体は、エフライム上空からフキアエズの王都へ向かった。
ここから王都は早馬でも二日はかかる距離だが、シズなら数分で到着できる。
この装置を公《おおやけ》に使えたらいいのだが、さすがにこれは最後の手段だ。
ただ、今回に至っては、メルガの連行には間に合わない可能性もある、、、どうしたらいい?。
同じころ、フキアエズの城の離宮では、深夜ながらオルコの使者によって告げられた引き渡し要求について、メルガとウクルキに伝えられた。
ウクルキは自室でメルガを強く抱き寄せ、そのまましばらく離すことは無かった。
「ごめんなさい、とうとうこの日が来てしまいました。でも私は最後に本当に幸せな日々を過ごすことが出来ましたわ。立場はエレーナ皇女であっても、私の心はあなたの妻として逝《い》きます」
「、、、メルガ、、、君を離したくない、ユウスケ殿なら、何とかできるかと思ったが、さすがに間に合わぬか、、。」
「あなた、、、あなたが可愛そう、私が去ったこの家で、貴方は一人になってしまうのね」
そんな二人の時間を引き裂くように、オルコの使者はズカズカと部屋に侵入してくる。
「おや、エレーナ様、これは意外な、、、不貞行為はいけませんぞ、貴女は清らかに逝かねば皇民も納得はしないでしょう」
「なんと下衆《げす》なことを、貴官の前に居るのは皇女殿下だぞ」
「我々の勢力には関係ありませんな、もはや帝国は帝国ではありません、皇女も実効性の無いもの、不敬などという考えはもはやありません」
ウクルキは、歯を食いしばって我慢した。
メルガはウクルキに会釈すると、鏡台の前を指さして、オルコ反乱勢力によって連行されて行った。
ウクルキは、どうすることも出来ず、その場に立ち尽くしたが、それでも家のバルコニーに飛び出すと、本名を伏せてこう叫んだ。
「エレーナ様、必ずお迎えに上がりますので、どうか最後まで諦めずに!」
メルガは、立ち止まると、少し振り返り、それが無理な事だと承知の上で微笑んだ。
ウクルキは、非力な自身を、この時ほど恨んだことは無いだろう。
結局、王立軍少佐と言っても組織の人間、国家間の事情に何ら口出しなど出来ないのであった。
朝焼けの中、武装した衛兵に厳重に守られ、メルガの乗った馬車は情緒も無く走り出した、皇女が乗った馬車とは思えないほど荒々しく。
ウクルキは、馬車を追う事は出来なかった、そんな事をすれば、三国の関係に罅《ひび》が入る、そんなことは解っていた。
彼は一人部屋に入ると、メルガのいない広々とした部屋の中に、自分はただ一人だのだと悟った。
体の芯からこみあげて来る悲しみと無力感に、それは泣かずにはいられなかった。
ここには誰も見ている者もおらず、存分に涙を流して良い状況と言えたが、未だ彼はそれを拒否していた。
それは新妻の今の気持ちを考えると、自分だけが自由に涙することすら申し訳ないと感じたからだ。
そんな時、ウクルキは先ほどメルガが去り際に、鏡台を指さしていたことを思い出した。
彼女の最後の行動、、、、ウクルキは急いで鏡台に駆け寄ると、引出しの最上段に、一通の手紙が残されていた。
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