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帝国の激震
第156話 俺の大切な友人
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エフライム公王殿下の誘いで、交渉した日の夜は晩餐会が開かれた。
俺とノアンカは、先を急ぎたいところであったが、交渉が成立したとはいえ、一国の君主の誘いを無碍にも出来ないことと、シズとムスキを引き合わせる必要性から、晩餐の誘いを受ける事にした。
ノアンカは、最初頑なに参加を拒んだが、半ばマキュウェルの命令により強制参加となった。
まあ、考えてもみれば、三国の首脳級が揃った晩餐の場に、一介の少佐がポツンと参加したって、何喰ったって味もしないだろう。
それに、俺たち全員、冒険者装備で晩餐会なんて参加出来るような服装を持っていないことを、ノアンカは心配していた、従者を連れてこの国へ来たのはエガだけだからな。
もっとも、本来少佐級の中堅将校が、国王級と肩を並べて食事をすること自体がおかしな話ではあるが、そもそもこのパーティの存在自体がおかしな集まりであるため、この例外的措置はエフライム側の最大限考慮と言えるんだろう。
俺とノアンカは従者付きの客間に通され、晩餐会に着て行く礼装まで全てエフライム公王のご厚意に甘えることとなった。
それは、俺が自室で晩餐前の時間を持て余し、ソファーでくつろいでいる時の事だった。
部屋をノックする音が聞こえたので、部屋の従者が扉を開けると、そこにはマキュウェルが立っていた。
それを見た従者は、かなり驚いた様子でマキュウェルが来たことを俺に伝えた。
本来、王族が自ら格下の、それも男の部屋を訪れるという事自体、異様な事なんだろう。
部屋を人払いして話をしようと考えたが、さすがに従者の目がある中で、未婚の男女が二人きりになるのは噂になるだろうと思い、少し庭でも散歩しようということになった。
「、、、どうした、マキュウェル、元気ないな?」
「、、、、」
「なんだよ、らしくないな、、、」
マキュウェルは、いつになく黙ったまま、庭の中央にあるローズアーチまで歩いて行った。
「なあ、ユウスケ、これ一度きりだ、一度だけちゃんと答えてくれないか」
「ん?、何を?」
「、、、ユウスケは、私の事をどう思っている?」
ああ、、、そう言うことか。
俺自身、マキュウェルのことはいい奴だと思っているし、友人としても最高の友だ、もちろん彼女にしてもいいとさえ思っただろう、、、自称「未来人」の彼女が訪れる前までの俺ならば。
だが、彼女と俺とは、住む世界が違う。
やはり男女の相性は、好き嫌いだけじゃない。
お互いの育った環境や周囲の祝福まで含めて相性なんだと思う。
だから、俺から彼女に話せることは、一つしかない。
「マキュウェル、君は美しい俺の大切な友人だ」
「、、、、、ユウスケ、、、お前は優しいな。では、最後にもう一つ、ミスズのことは、どう思っている?」
「、、、、そうだな、俺は、、、、好きだよ、それが成就するかどうかは別として、でもね」
そう言うと、彼女は何か吹っ切れたような清々しい表情に変わり、俺の背中をバンと叩くと、満面の笑みで一度だけ振り返り、そのまま屋敷へ戻って行った。
これでいいよな、、、、
実は、俺は何度かマキュウェルと本当に結婚して、ドットス王国の為に将来を捧げるということを想像したことがある。
もちろん、実際に口に出すこともないし、選択肢の一つ程度の話ではあるが、、、一応、本気で考えた事があるのは事実だ。
だから、彼女の幸せを、心の底から願わずにはいられない。
俺が去ったドットスやその周辺国が、幸福で喜びに満ちあふれた王道を築けるよう、ただ祈るだけだ。
しかし、そんなハッピーエンドのような妄想に浸るのはまだ大分早い。
この世界で俺が出来る事が山ほど残っている。
今はそれを全力で行うだけのことだ。
マキュウェル、離れていても、君の幸福を願っているよ。
俺とノアンカは、先を急ぎたいところであったが、交渉が成立したとはいえ、一国の君主の誘いを無碍にも出来ないことと、シズとムスキを引き合わせる必要性から、晩餐の誘いを受ける事にした。
ノアンカは、最初頑なに参加を拒んだが、半ばマキュウェルの命令により強制参加となった。
まあ、考えてもみれば、三国の首脳級が揃った晩餐の場に、一介の少佐がポツンと参加したって、何喰ったって味もしないだろう。
それに、俺たち全員、冒険者装備で晩餐会なんて参加出来るような服装を持っていないことを、ノアンカは心配していた、従者を連れてこの国へ来たのはエガだけだからな。
もっとも、本来少佐級の中堅将校が、国王級と肩を並べて食事をすること自体がおかしな話ではあるが、そもそもこのパーティの存在自体がおかしな集まりであるため、この例外的措置はエフライム側の最大限考慮と言えるんだろう。
俺とノアンカは従者付きの客間に通され、晩餐会に着て行く礼装まで全てエフライム公王のご厚意に甘えることとなった。
それは、俺が自室で晩餐前の時間を持て余し、ソファーでくつろいでいる時の事だった。
部屋をノックする音が聞こえたので、部屋の従者が扉を開けると、そこにはマキュウェルが立っていた。
それを見た従者は、かなり驚いた様子でマキュウェルが来たことを俺に伝えた。
本来、王族が自ら格下の、それも男の部屋を訪れるという事自体、異様な事なんだろう。
部屋を人払いして話をしようと考えたが、さすがに従者の目がある中で、未婚の男女が二人きりになるのは噂になるだろうと思い、少し庭でも散歩しようということになった。
「、、、どうした、マキュウェル、元気ないな?」
「、、、、」
「なんだよ、らしくないな、、、」
マキュウェルは、いつになく黙ったまま、庭の中央にあるローズアーチまで歩いて行った。
「なあ、ユウスケ、これ一度きりだ、一度だけちゃんと答えてくれないか」
「ん?、何を?」
「、、、ユウスケは、私の事をどう思っている?」
ああ、、、そう言うことか。
俺自身、マキュウェルのことはいい奴だと思っているし、友人としても最高の友だ、もちろん彼女にしてもいいとさえ思っただろう、、、自称「未来人」の彼女が訪れる前までの俺ならば。
だが、彼女と俺とは、住む世界が違う。
やはり男女の相性は、好き嫌いだけじゃない。
お互いの育った環境や周囲の祝福まで含めて相性なんだと思う。
だから、俺から彼女に話せることは、一つしかない。
「マキュウェル、君は美しい俺の大切な友人だ」
「、、、、、ユウスケ、、、お前は優しいな。では、最後にもう一つ、ミスズのことは、どう思っている?」
「、、、、そうだな、俺は、、、、好きだよ、それが成就するかどうかは別として、でもね」
そう言うと、彼女は何か吹っ切れたような清々しい表情に変わり、俺の背中をバンと叩くと、満面の笑みで一度だけ振り返り、そのまま屋敷へ戻って行った。
これでいいよな、、、、
実は、俺は何度かマキュウェルと本当に結婚して、ドットス王国の為に将来を捧げるということを想像したことがある。
もちろん、実際に口に出すこともないし、選択肢の一つ程度の話ではあるが、、、一応、本気で考えた事があるのは事実だ。
だから、彼女の幸せを、心の底から願わずにはいられない。
俺が去ったドットスやその周辺国が、幸福で喜びに満ちあふれた王道を築けるよう、ただ祈るだけだ。
しかし、そんなハッピーエンドのような妄想に浸るのはまだ大分早い。
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今はそれを全力で行うだけのことだ。
マキュウェル、離れていても、君の幸福を願っているよ。
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