上 下
154 / 341
帝国の激震

第152話 85万の軍勢

しおりを挟む
 俺とマキュウェル、ノアンカ、ムスキの4人は、一路北のエフライム公国を目指した。
 フキアエズ王国にはマキュウェルの事情説明と、公的な通行権をもらい、軍からは馬まで徴用させてもらった。
 こちらのルートはまだ未確認事項が非常に多い。
 エフライムとの国交がほとんどないドットスでは、マキュウェルが公的に王女として訪問しても突破口が開けない可能性がある。

 そこで、俺は第2の担保を考えていた。
 
 ドットスとフキアエズが同盟関係となってオルコと対峙しても、オルコの分裂工作が失敗すれば、85万の軍勢と対峙する事になる。
 そうすると、同盟を組んだ両国は、この世から消滅することになるだろう。
 分裂工作が成功する公算を半分として考えても、もう一つは大きな担保が必要となるだろう、それがこのエフライムだ。
 軍事強国でもあるエフライムが、わざわざこちらの同盟に荷担するとは思えない、付くなら強い方に付くだろう。
 逆に、オルコ反乱軍と共に、一気にフキアエズ領内に侵攻されたら一溜まりもない。
 もちろん、そうならないよう、エガも色々根回しをしているようだった。 
 要するに、自国領内とはいえ、一国の王子がわざわざ冒険者に扮して巨人退治なんてしていたかと言えば、こうなることを予想してのことらしい。
 んでもって、ちゃっかりマキュウェルに求婚まで済ませたんだから、大した策略家だよ。
 フキアエズの民は、は良い君主を得たな。
 そして、俺はエフライムを味方に出来なかったとしても、ある取引をするつもりだった。
 
「おいユウスケ、見えてきたぞ」

 ノアンカが、前方の古城を指すと、そこには工業都市に囲まれた大きな城が見えてきた。
 これまでに見たドットスの城と違って、なんだか威圧感が目立って、優雅さに欠けるな。

 途中、先回りしていたエガと、フキアエズ軍の一団が俺たちをエスコートしてくれた。

「エガ、ありがとう、まだ数日だが、なんだか久々に感じるな、メルガとウクルキはどうしている?」

「ああ、残された時間を、精一杯生きていると言った雰囲気だね、城の離れに小さな家を提供して生活している。二人とも必死で笑顔っを作っていて、見ていて辛くなる。なんとかしてあげたいところだが、、、さて、ここからが本題だね」

 これほどのリスクを冒して来るのだ、エフライムの公爵殿下も合わないという選択肢は無いだろう。
 何しろ、縦に3つの国のトップ級がこのエフライムに集まるのだから。
 
 マキュウェルが馬上から、恥ずかしそうにエガに会釈をすると、それ以降、下を向いたりソッポ向いたりとエガと目を合わせようとしない。
 まったく、少女じゃないんだから、もっと普通にすればいいのに。

『もう、GFは女心が解っていませんね、プロポーズですよ、プロポーズ!、まともに見れるわけないじゃないですか」
 
『ええ?、雄介様は、また何か女性の心理をご理解されていないんですか?」

 うわ、玲子君の声も、シズと同じく近くで聞こえるな、距離感って感じられない。
 ってか、また何かって、俺がいつも女心を理解出来ていないみたいじゃん。



 、、、、、




 なんだよ、黙るなよ!


 そんなこんなを話している間に、もう公爵家の門まで来てしまったじゃないか。

 門の前には、この館の従者だろうか、公国を名乗るだけあって、王国とは違い城と王の関係ではないのか、金持ちの邸宅、豪邸が正しい解釈かとも思った。
 工業都市だと、考え方も違うもんだな。
 ドットスもフキアエズも、どちらかと言えば農業が盛んだから、領地を持った貴族と王様の関係が色濃いけど、何というかエフライムは合理的な印象を受ける。

「ようこそ皆様、さ、エフライム公王殿下がお待ちです」

 さて、いよいよだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜

たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?  途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定? ※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...