149 / 411
帝国の激震
第147話 そのままメルガに抱きつくと、
しおりを挟むメルガの父親は、これまでの経緯を話してくれた。
ルガ・ハイヤーと名乗るその男は、皇帝の側近であり、代々皇帝一族の影武者を務めてきたのだそうだ。
実は、今回も不穏な空気を察した皇帝からの密命を受けての旅であったらしい。
偶然にも、エレーナは退屈を持て余していて、旅に出たいと無茶な注文を繰り返していたところ、その利害が一致してしまったのだそうだ。
先ほどの部屋割りの際、ウクルキは偶然メルガが女性であることに気付いてしまったことから、彼だけが一番最初に事情を知ることとなったらしい、、、、
ああ、ボーイズなんとかじゃないのね、、。
ん?、女性?、メルガの今の服装って、女装じゃなくて、本当に女性なのか?
そう言われてみれば、品があって、とびっきりの美人だな、男だと思っていたから気付かなかったが、、、こうして見ると、見れば見るほど美少女だ。
だから、反乱の事実が告げられた時に、泣き崩れたのか。
「私は、エレーナ様と共に幼少期から過ごして参りました、この日のために。私はエレーナ様の全てを熟知しております、私が、必ずエレーナ様の代わりを務めて参ります」
エガが、もう、どうしようもない表情でメルガを見つめる。
なんだ?、身代わりがそんなに大変なことなのか?
「、、、メルガ、、、」
堪えきれず、涙を流すエレーナが、そのままメルガに抱きつくと、それまで我慢していた全てを吐き出すように大声で泣き出した。
「嫌よ、絶対に嫌!、貴女はわたくしの唯一の親友じゃない、絶対に許さないわ、貴女まで失ったら、わたくしはこれからどうやって生きて行けばいいの!、嫌、嫌ー!」
おいおい、これじゃあまるで、今生の別れみたいじゃないか、どうしたエレーナ。
『メルガさん、エレーナさん、本当に姉妹のように仲がいいんですね、私ももらい泣き、、、、しちゃい、、、ます、、。」
珍しく、シズももらい泣きしていた。
なんだよ、なに?
「マキュウェル姫、メルガについては我々フキアエズの側で、、、でよろしいですね」
マキュウェルも、半泣き状態で、ハンカチを口に充てながらエガに、それで、とお願いをする。
マキュウェルまで、、、、、そうか、そう言うことか。
でも、それってあんまりじゃないか。
「おい、ベナル、これはメルガを帝国の反乱勢力に引き渡す、ということなんだよな、それじゃあ、メルガは、、、」
「ああ、、、エレーナの影武者であると言うことは、、、処刑が前提の引き渡しになる」
そう、彼等反乱勢力が一番恐れているのが、正当な血統による復権そのものだ。
それだけに、エレーナの生存自体が、彼等にとっては問題であり、生かしておいても政治的活用方法など、最初から無いわけだ。
だから、皇女が死んだという事実が、どうしても必要となる。
そうしなければ、エレーナを巡って延々と戦いが起きてしまうから、、、。
それを、みんな承知しているから、、、この状況なのか。
「おい、メルガを行かせる訳ではないだろう、他に何か方法は無いのか?」
「ユウスケ、落ちついてくれ、それがあれば、こんなに皆、悩まないだろ。皇女の死によってのみ、反乱勢力と各国間の平和は維持される」
、、、、そりゃ、そうだけどさ、メルガは死ぬことを前提として、今正装しているんだぞ、これじゃあ死装束じゃないか!。
そんな時、小さな声でウクルキが話し始めた。
「、、、あらためまして、お父上、私にメルガさんを頂けないでしょうか?」
「いや、、、、ウクルキ少佐、貴男のそのお気持ちだけで十分でございます。メルガはもう、覚悟を決めております故、どうかそっとしておいてあげて下さいまし」
「いえ、だからこそ、です。彼女を私の妻として逝《い》かせたいのです、、、どうか私のわがままを、聞き入れては頂けないでしょうか」
メルガは、涙を流しながら、ウクルキを見つめ、、、「ウクルキ様」とだけつぶやいて立ち尽くしていた。
そんなメルガを囲んでいた女性陣が、全員集まりはじめ、メルガに抱きついて共に涙を流し始めた。
マキュウェルは、必死に抱きつくエレーナの肩を優しく叩きながら、メルガに顔を押しつけて、必死に泣くのを我慢しているようだったが、、それは無駄な抵抗と言えた。
女性陣達の涙は、メルガの正装を潤してゆく。
どうして俺たちは、出会って間もないのに、これほど解りあえたのだろう、どうして人間は憎しみ合うのだろう、と、ぼんやり俺は考えていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―
kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。
しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。
帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。
帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる