自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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帝国の激震

第147話 そのままメルガに抱きつくと、

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 メルガの父親は、これまでの経緯を話してくれた。
 ルガ・ハイヤーと名乗るその男は、皇帝の側近であり、代々皇帝一族の影武者を務めてきたのだそうだ。
 実は、今回も不穏な空気を察した皇帝からの密命を受けての旅であったらしい。
 偶然にも、エレーナは退屈を持て余していて、旅に出たいと無茶な注文を繰り返していたところ、その利害が一致してしまったのだそうだ。

 先ほどの部屋割りの際、ウクルキは偶然メルガが女性であることに気付いてしまったことから、彼だけが一番最初に事情を知ることとなったらしい、、、、


 ああ、ボーイズなんとかじゃないのね、、。


 ん?、女性?、メルガの今の服装って、女装じゃなくて、本当に女性なのか?

 そう言われてみれば、品があって、とびっきりの美人だな、男だと思っていたから気付かなかったが、、、こうして見ると、見れば見るほど美少女だ。
 だから、反乱の事実が告げられた時に、泣き崩れたのか。

「私は、エレーナ様と共に幼少期から過ごして参りました、この日のために。私はエレーナ様の全てを熟知しております、私が、必ずエレーナ様の代わりを務めて参ります」

 エガが、もう、どうしようもない表情でメルガを見つめる。
 なんだ?、身代わりがそんなに大変なことなのか?

「、、、メルガ、、、」

 堪えきれず、涙を流すエレーナが、そのままメルガに抱きつくと、それまで我慢していた全てを吐き出すように大声で泣き出した。

「嫌よ、絶対に嫌!、貴女はわたくしの唯一の親友じゃない、絶対に許さないわ、貴女まで失ったら、わたくしはこれからどうやって生きて行けばいいの!、嫌、嫌ー!」

 おいおい、これじゃあまるで、今生の別れみたいじゃないか、どうしたエレーナ。

『メルガさん、エレーナさん、本当に姉妹のように仲がいいんですね、私ももらい泣き、、、、しちゃい、、、ます、、。」

 珍しく、シズももらい泣きしていた。
 なんだよ、なに?

「マキュウェル姫、メルガについては我々フキアエズの側で、、、でよろしいですね」

 マキュウェルも、半泣き状態で、ハンカチを口に充てながらエガに、それで、とお願いをする。
 マキュウェルまで、、、、、そうか、そう言うことか。



 でも、それってあんまりじゃないか。



「おい、ベナル、これはメルガを帝国の反乱勢力に引き渡す、ということなんだよな、それじゃあ、メルガは、、、」

「ああ、、、エレーナの影武者であると言うことは、、、処刑が前提の引き渡しになる」

 そう、彼等反乱勢力が一番恐れているのが、正当な血統による復権そのものだ。
 それだけに、エレーナの生存自体が、彼等にとっては問題であり、生かしておいても政治的活用方法など、最初から無いわけだ。
 だから、皇女が死んだという事実が、どうしても必要となる。
 そうしなければ、エレーナを巡って延々と戦いが起きてしまうから、、、。
 それを、みんな承知しているから、、、この状況なのか。

「おい、メルガを行かせる訳ではないだろう、他に何か方法は無いのか?」

「ユウスケ、落ちついてくれ、それがあれば、こんなに皆、悩まないだろ。皇女の死によってのみ、反乱勢力と各国間の平和は維持される」

 、、、、そりゃ、そうだけどさ、メルガは死ぬことを前提として、今正装しているんだぞ、これじゃあ死装束じゃないか!。
 そんな時、小さな声でウクルキが話し始めた。

「、、、あらためまして、お父上、私にメルガさんを頂けないでしょうか?」

「いや、、、、ウクルキ少佐、貴男のそのお気持ちだけで十分でございます。メルガはもう、覚悟を決めております故、どうかそっとしておいてあげて下さいまし」

「いえ、だからこそ、です。彼女を私の妻として逝《い》かせたいのです、、、どうか私のわがままを、聞き入れては頂けないでしょうか」

 メルガは、涙を流しながら、ウクルキを見つめ、、、「ウクルキ様」とだけつぶやいて立ち尽くしていた。
 そんなメルガを囲んでいた女性陣が、全員集まりはじめ、メルガに抱きついて共に涙を流し始めた。
 マキュウェルは、必死に抱きつくエレーナの肩を優しく叩きながら、メルガに顔を押しつけて、必死に泣くのを我慢しているようだったが、、それは無駄な抵抗と言えた。
 女性陣達の涙は、メルガの正装を潤してゆく。

 どうして俺たちは、出会って間もないのに、これほど解りあえたのだろう、どうして人間は憎しみ合うのだろう、と、ぼんやり俺は考えていた。
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