自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

帝国の激震

第144話 思いがけない人物

「多分、こちらにおられると思います！」

　外から何か、誰かを案内している声が聞こえた、、、ん？、聞き覚えのある声だな。
　すると、その声の主は、俺たちの宿泊している建物の中に、ノックをしてくるではないか。

「夜分に申し訳ない、私はドットス王立軍、ロームボルド連隊所属、エド・キニーレイ少尉と申します、こちらに、、、、マキュウェル ・メイ ・ドットス王女殿下はおられますか？」

　あのバカ、王女って言っちゃってるよ、まったく俺たちの行動を全く理解していないのかよ、空気読めよお前！

「、、、王女ではないマキュウェルなら、ここにいるが、、キニーレイ少尉だな、、、入れ」

　マキュウェルが、キニーレイ少尉を建物内に招き入れる、ああ、もうこの段階で、マキュウェル、王女の風格、醸し出てるじゃん、誤魔化せるのか、これは？
　キニーレイ少尉が入ってきた瞬間、何故かエレーナの表情がトキメイていた、、、あれ、こっちでも新たな恋が生まれた感じか？、なんだかベビーラッシュの予感、、、なのか？
　エレーナの瞳は、キラキラと輝きながら、キニーレイ少尉の事を目で追い続けていた。
　そして、恐る恐る入ってくるキニーレイ少尉の後ろから、思いがけない人物が入ってきた、、、おいおい、何でだよ。

「ベナル少将、、と、ロームボルド准将？」

　これは驚いた、ドットス本国から軍師次長とロクソム旅団長、自らお出ましとは、もうこれはただ事ではないな。

「どうした、何用か？、こんな夜分に、、、、緊急事態か？」

　マキュウェルが、もはや冒険者モードをぶっちぎりで無視して本題に入ろうとする、、、が、その話の中に割って入ろうとする人物がいた、、、エガだ。

「おい、エガ、、、君の目の前にいるのはドットス王立軍の軍師次長と旅団長だそ！」

　俺がそう言うと、それは予想外の展開になった、、。
　ベナル少将と、ロームボルド准将は、その場に跪き、エガに深々と敬礼するではないか？

「おい、何だよ、何が一体どうなって、、、エガ、お前は一体何者なんだ？」

　すると、まるでそれを解説するかのように、ベナルがエガに御礼の言葉を述べたのだ。

「この度は、ご厚意によりドットス軍関係者を、このように領内への通行権限をお与え頂き誠にありがとうございます、、、殿下」

　殿下、、、これを聞けば、大体彼の素性はその場に居る者全てが理解したのだろう、一番驚いていたのは他ならぬマキュウェルだった。

「殿下、、、殿下か、そういうことか、、、。これは大変失礼致しました、、、貴方もお人が悪い、エニオガーノ・フキアエズ殿下」

　ああ、、、そういう事か、と誰もが納得した。
　この品のある身のこなし、王族ならば納得だ。
　それにしても、ドットスの国王といい、フキアエズの国王といい、何でまた自分の子供を、こんな危険な旅に出そうとするんだ。

「マキュウェル姫、大変失礼を致しました、あらためて自己紹介させてください、わたくしはこの国、フキアエズ王国の王子、エニオガーノ・フキアエズと申します、マキュウェル様は、いつからお気づきでしたか？」

　そう優しく微笑むと、マキュウェルは真っ赤になってツンデレ属性最大発揮した。
　ムスキは、何かを予感したのか、両手を口に当てて、頬を紅潮させながら、エガの次の言葉を待っているようだった。
　そして、エガがマキュウェルの前に跪き、彼女にこう言うのだった。

「マキュウェル姫、どうか、我が妃となってはいただけないでしょうか」

　と、ね。
　なんだよ、この急展開は！
　なんだか、俺と玲子君の作戦が、あまり意味無かったんじゃないか、これは！