自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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旅立ちの朝に

第122話 ブラック・ナイト

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美鈴玲子 ドットス以降の装備 ↓

 キニーレイ少尉は、自分以外の気配を感じ、未明に周囲を警戒していた時に、後方より友軍数名が迫っているのを確認し、彼らより早くマキュウェルのパーティと合流しなければならないと感じたようだった。
 、、、、それを早く言ってくれよ、進行ルート、変えちゃったじゃん。

 んでもって、その、後方から迫ってくる友軍の正体は間もなく判明した。
 

「マキュウェル様、本国より参りました使者にございます」

「こら、よせ、人の目があるんだぞ!」

 マキュウェルのいう事はもっともで、こんなところで深々と頭を下げられたら、マキュウェルがただ者ではないことが明白になってしまう。

「で、なんだ、手短に用件を申せ、そして、ここでは頭を下げるな、上下関係を悟られる」

「はい、吉報にございます」

 使者が言うには、先の戦いの武功が認められ、各々の処遇についての知らせであった。
 中隊長の二人については、一階級昇進で、大尉から少佐へ、ここにはいないがマキヤ少佐も中佐へ昇進、この階級だともう中隊長職ではなく、大隊長職へと大きい昇進だな。
 大きい昇進の言えば、ロームボルド連隊長は、大佐から准将《じゅんしょう》へ、将軍職となった。
 そのため、連隊長職から離れると思いきや、ロームボルド連隊自体が「旅団《りょだん》」へ増強、昇格となるため、ロームボルド准将は、そのまま旅団長へ就任した。
 そして、一番驚いたのが、ベナルは大佐から一気に二階級昇任し、「少将」へとなった。
 これにより、王都の軍師長・次級ぐんしちょうじきゅうとなってしまった。
 これは、ドットス王立軍司令部《おうりつぐんしれいぶ》の4将軍よんしょうぐんに名を連ねることになる。
 ドットス王国では最年少の将軍であるとともに、20代の少将も歴代初だとのことだった。
 そのため、ベナルはロクソム城に戻れない可能性が高くなった、そりゃそうだ、司令部の少将クラスが地方の城に籠っているはずがない。
 

 そして、これが最も意外な人事だった。
 

「ユウスケ殿、貴殿はその功績により、客員ながら軍師、大佐相当の権限を与えるとともに、ドットス栄誉勲章を添えて騎士《ナイト》の称号が与えられます。」

 いきなりコマが進んでないか?、ナイト? 俺が?、ナイトって騎士《ナイト》だよな。

「ユウスケ、おめでとう、これで晴れてドットスの仲間だな」

 マキュウェルが、なんだか嬉しそうだ。
 外国人に対する称号とはいえ、正式にマキュウェルを君主王女とする立場になるわけだから、彼女からすれば嬉しいことかもしれない。
 マキュウェルは、「いつまでもブラック・ナイトという訳にも行くまい」と言っていたが、ブラック・ナイトってなんだ?

『黒騎士ですね、要するに、君主を持たない浪人騎士《ろうにんきし》のことです、本来、GFみたいに紋章のあるべきところが黒塗りなので、そう呼ばれているそうですね」

 ああ、そうなんだ、ちょっとカッコいいけど、この世界じゃ意味を成さないんだろうな。
 それに、まさかドットス王国の紋章を付けてオルコ帝国内に進入するわけにはいかないから、結局この旅では俺たち全員ブラック・ナイトなんだよな。

 しかし、軍師大佐相当って、凄いな。
 俺、軍曹同等だから、本当はカシラビと近いくらいの階級だったんだけどな。
 
 ご機嫌だったマキュウェルが、ここで少し機嫌が悪くなってしまう、それは玲子君の待遇についての所でだった。

「レディー・ミスズ」

 ただそれだけで、特別階級や役職を与えた訳ではなかった。
 、、、え、何で?、何がそんなに気に食わない?

「なあノアンカ、マキュウェルは何であんなに機嫌が悪いんだ?」

「え、お気づきじゃない?、今、使者はミスズ嬢のこと「レディ・ミスズ」って呼んだからでは?」

 え、レディ・ミスズ、いいじゃん、なんかカッコよくて、何が悪いの?

『もう、GF、鈍感ですね、苗字の前に「レディ」が付いたら、それはナイトの妻を意味しちゃうんですよ、つまり、国王はミスズの事を、GFのお嫁さんとして公的に認めたことになるんです。」

 あれ?、んん?、それってヤバくない?
 あー、マキュウェルが怒ってるよ、なんだかムスキも機嫌、めちゃくちゃ悪いじゃん。

「ああ、ユウスケ、そういうことだから、今夜から君たち二人は同部屋ね。何せ夫婦なんだから!」

 マキュウェルさ~ん、、、かなり怒っているな、、。

 おいおい、これじゃあ振り出し戻ってんじゃん。
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