自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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旅立ちの朝に

第119話 このルールにいい加減慣れろ

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 カシラビは、敵から奪った旧式の小銃が気に入ったらしく、敵兵の残していった残弾《ざんだん》を集めるだけ集めて、装備した。
 彼の選んだ小銃は97式狙撃銃、旧日本軍の狙撃銃で、あの日の戦闘でムスキの頭を銃だ。
 銃剣を着剣すると128センチもあって、大柄なカシラビ伍長が持つと案外丁度良い長さに見えた。
 
 そして、このパーティに参加するには、一つ条件があった、それは、「敬語、敬称禁止」だった。
 これはマキュウェルの提案だった。
 しかし、案外これは的を得ていて、敵地オルコ領内に進入して、マキュウェルに皆敬語を使って平伏していれば、それは明らかにおかしいと感じる。
 、、、、しかし、それを真っ向から否定したのは、二人の中隊長だった。

「ご勘弁くださいマキュウェル様、我ら将校団はマキュウェル様をお守りする命を受けている身、敬称も付けずにお呼びするなど不敬《ふけい》に値します、一族から何と言われるか、わかったものではありません」

 ウクルキ大尉も、慌てると結構のように饒舌なんだなと感じた。
 疾風の如く高速で攻め込む機動中隊の指揮官、戦いの時には眼光鋭《がんこうするど》く口数少ない寡黙な男だと思っていたが、慌てたところは案外かわいいじゃないか。
 そんなウクルキ大尉とノアンカ大尉の進言は一切無視され、この決まりはマキュウェルの「命令」として徹底された。
 そこへ行くと、もう早速違和感なくそれが出来てしまうのがカシラビ伍長だった。

「お嬢、この先の宿場町にはいい酒場があるんで、今日はそこで一杯やりましょうや」

「こら、カシラビ、マキュウェル、、、様、、マキュウェルになんてことを進言する」

 半ば、呆れ顔のマキュウェルが、ノアンカを諭す。

「ほらほらノアンカ、それはカシラビが正しいぞ、それにカシラビはこの地方の町には詳しい、今日は酒場で一杯やって、このルールにいい加減慣れろ」

 いや、マキュウェル、それは王国軍人には酷な話なんだぞ、カシラビはむしろ例外だよ。
 まあ、俺にも最初はほとんど無言だったし、会話が成立している段階で彼なりのサービスなのかもしれないけどな。
 心なしか、カシラビもご機嫌な様子に見える、多分普通の人には解らない程度の、微妙な変化だが、この木偶の坊でくのぼうにしては明るいのだ。
 逆に、すっかり萎縮してしまっているのはムスキの方で、俺以外の男が、急にパーティに3人も加わったことで緊張している様子だった。
 元々、彼女は内向的なところがある女性だから、これは慣れてもらうしかないのだが、これが意外だったのがカシラビの、家柄を一切気にしない話し方が、逆にムスキを安心させ、会話を成立させていたことだった。
 二人とも、銃の腕前が良いなどの共通の話題もあって、旅の道中はむしろこの二人の会話は弾んでいた。
 、、、おいおい、将校の二人もしっかりしろよ、、、と言っても、ムスキはあの軍師ベナルの妹君だからな、気軽に話しかけるという訳にもいかないんだろう。
 また、このパーティではノアンカ大尉だけが唯一の妻帯者で、残りは揃いもそろって独身だ。
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