自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

文字の大きさ
上 下
114 / 411
怒号と雄叫び

第113話 情熱のロクソム城

しおりを挟む
 その日の夜、ロクソム城は、城下町の隅まで聞こえるほどの興奮で満たされた。
 中庭に集められた兵士は、マキュウェルの訓示の一つ一つに歓声をもって答えた。
 公約通り、兵士たちには城の酒保を開放して、思う存分に祝杯を上げさせた。
 普段は、ライバル同士であまり仲の良くない各連隊の兵士達も、今日は同じ勝者の仲間である意識が芽生え、8000名の将兵と、城内は一体感をもって飲み明かした。
 その頃、ロクソム城内、謁見の間において、各級指揮官が集められ、マキュウェル王女と至近距離で話が出来る機会を得た、、、こりゃ、若い将校はイチコロだな。
 最後にマキュウェルは、将校団に対して演台からこう話をした。

「先ほど、国王陛下から使者が訪れ、此度の勝利に対する並々ならぬお褒めの言葉と、処遇に対するお話を賜りました」

 場内がどっと沸き上がる。
 今回の戦勝は、近年希な大戦であるとともに、3万の敵を相手に、僅か8千の兵で敵を撃退しての勝利であり、その英雄的行為は武功として比類ないものになるだろう。
 そして、この戦いの中心にいた軍人達、特に軍師のベナル、ロームボルド連隊長、A中隊長のマキヤ少佐、B中隊長のノアンカ大尉、C中隊長のウクルキ大尉は、確実に昇格だろう。
 ベナルは晴れて将軍職確定だろうな、やったなリラル。
 マキュウェルの演説中も、リラルは列中で、瞳を潤ませて微笑んでいた。
 そして、マキュウェルは突然、ベナルを壇上に呼ぶと「リラルに言うべきことがあるでしょう」と、彼に水を向けた。

「リラル、、、この勝利を君に捧ぐ。、、、我が妻となってほしい。」

 一瞬、城内の全員がキョトンとした。
 何しろ、戦勝の興奮に包まれた会場に、それ以外の要素が入り込むなんて、だれも考えていなかったからだ。
 しかし、あの堅物、ベナル軍師の突然の告白に、それまでの事情を知らない各級指揮官の興味は、大いに奮い立ったようだった。
 そして、そんな均衡を最初に破ったのは、意外にもロームボルド大佐だった。

「今日の良き日に婚姻の誓とは、なんと縁起の良い!、立会人の名誉を我に頂ければ光栄ですぞ」

 会場が再び歓喜に包まれる。
 珍しく赤面するベナル、、、幸福そうなリラル、、、感動する玲子君、、、、玲子君?
 おいおい、また、真っ先に泣いているよ、本当に女性は友人の結婚に弱いんだな。
 
 、、、俺もいつか、玲子君と、そんな関係になれるだろうか。 
 もう、心の奥にあるものを隠さず晒すならば、俺はもう玲子君に求婚したいほど、普通に惚れている。
 
 、、あまり玲子君の事を言えないな、俺もすっかりここの空気に飲まれている、うっかり玲子君にプロポーズしてしまいそうだ。

 で、その玲子君は、さっきから紅潮しながら、俺の方をチラチラと見ている。
 、、、、大丈夫か?この状況。
 今夜だけは、一緒に寝られない。
 彼女を自分のものにしてしまいたくなる。

 でも、それは今ではない。

 俺たちは、再び危険な旅に出る。
 その時、妻となった玲子君が近くに居れば、俺はきっと判断を誤る。
 だから、、、この気持ちは、もう少し我慢だ。
 
  見れば、悪乗りした小隊長クラスの青年将校たちが、ベナルを担いでそこら中を練り歩いている。
 それを見て、会場は笑と歓声に包まれている。
 幸福な情景だ。
 俺にもこの幸福を守る一翼を担いたいという願望が顔を出す。
 そうだな、この幸福な時間を守らなければいけないな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

処理中です...