自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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ハイハープの戦い

第99話 撃ち方、止め

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撃ち方うちかた止めやめ

 そんなこと言っても、解らないか、とも思ったが、騎士道精神に基づいた戦いをする兵士たちは、俺の号令と連動して、自然と射撃を停止した。
 死体の山、、、ではないよな、死体の何倍もの負傷兵がいる。
 倒れた敵軍の塊からは、ひどい呻き声が峡谷の深部を満たした。
 
「ムスキ、君はヒールはできるのか?」

「はい、専門ではありませんが、、、」

「ユウスケ様、ムスキ、私も加わります」

 リラルも駆けつけてくれた。
 ノアンカ大尉から聞いたのだろうか、こんな最前線、恐ろしかったろうに。

「負傷した敵兵を城内に入れろ、兵士の何名かは、城内の者を掻き集めて連れてきてくれ」

 そんな時、B中隊を率いてノアンカ大尉が到着した、戦闘には間に合わなかったが、丁度良いタイミングだ。
 俺は負傷兵を出来るだけ多く城内に入れるようノアンカ大尉に指示した。

 B中隊の兵士達は、この敵兵に対する厚遇《こうぐう》に納得行かない様子だった。
 この世界は、俺たちの世界のように、国際人道法《こくさいじんどうほう》なんてないだろうから、捕虜は奴隷、、、なんて仕組みなんだろうしな。
 
「俺たちの猛攻撃を勇敢に凌いだオルコの兵士諸君に、最大限の尊敬の念をもって答えたい、誰か、俺の言うことに異を唱えるものは前へ出ろ」

 俺の声は、峡谷にこだました。
 さすがの兵士たちも、ここは俺のいう事を聞かざるを得ないだろう、なにしろ、B中隊はこのハイハープ出身者が多い、あの敵兵の中にも、同郷の者がいることだろう。
 その効果はだった。
 最初に走り出したのはカシラビ伍長だった、貴族の小隊長は、かなり躊躇《ちゅうちょ》していたが、中隊長のノアンカ大尉が、俺をサポートするように

「騎士道に基づき、厚遇をもって負傷者を救助する、ドットス王立軍の気高い精神を示せ」

 これにはさすがの貴族小隊長も従わざるを得なかった。
 サンキュー、大尉!。

 ところが、そんな騎士道をも吹き飛ばしそうな情報が上の戦場からもたらされた。

「大変です軍師、城の守備部隊が押されています!」

「なに?、、押されている?、どうして?」

「解りませんが、見たこともない武器でオルコ軍が攻勢に出ています」

 なんだ、何が起こってる?
 、、、見たこともない武器、、?

 俺は、頭の中でまた、妙な符号が一致してゆくのがわかった。
 俺の勘が正しければ、、、、こっちが囮《おとり》という事か!

「シズ、ロクソム城の守備の状況をモニターできるか?」

『はい、大変ですGF、オルコ軍に小銃部隊《しょうじゅうぶたい》がいます!」

 やっぱりか、失敗した!

 俺はそれで
 
「玲子君、君はシズに乗り込んで、当初話していた通り、迫撃砲弾《はくげきほうだん》をオルコの頭上から降らせてくれ、盛大に頼む!」

 玲子君は、少し理解できていない様子だったが、まずシズとの合流が先だ。


 これはもしかしたら、この世界へ来て一番のミスになるやもしれない!
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