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ハイハープの戦い
第97話 明らかにおかしい時間帯
しおりを挟む↑ ドットス軍装備の斎藤雄介
俺は、オルコ帝国軍の主力に、攻撃兆候ありとの連絡を受け、少し意外に感じた。
それは、軍事の常識であれば、 攻撃はできるだけ日中の明るい時間帯に兵を進めたいから、夜明けとともに攻撃を開始する方が有利だからだ。
そう考えるならば、午前中も半ばまで過ぎてから侵攻してくるということは、当然理由があっての事だろう。
さて、、、問題は、その理由が作戦であった場合だ。
「ベナル、この時間帯の攻撃、どう思う?」
「ああ、明らかにおかしい時間帯だ、私はこの動きを陽動《ようどう》と見る」
「同意見だ、そして陽動だとすると、敵の本当の狙いは、、、ここだろうな」
俺がそう言うと、早速オルコの軍勢がハイハープ峡谷を上がってくる音が聞こえた。
地上の軍勢が囮《おとり》、こっちが本丸、、、。
『シズ、どうだ、上空から見て、あとどれくらいでオルコの尖兵《せんぺい》はここと接触しそうだ?」
『意外と早いです、もう後5分で見えてくると思います。それと、この規模、尖兵じゃありません、大隊規模です、昨日の人たちとは違う部隊です」
なるほど、これは時間帯といい、攻撃方向といい、こちらの意表を突く作戦か。
「カシラビ、ムスキ、ここで銃を使えるのは、ここにいる兵士と君たちだけだ。この銃があれば大隊規模と十分に渡り合える、やってくれるか?」
「さすがにこの人数で大隊規模と戦うのは非常識ですぜ、ましてやムスキ嬢を戦闘に加えたなんて、さすがに出来ません」
「いいかカシラビ、俺たちは常識と戦っているんじゃないんだ。ここへ向かっている軍勢は、そもそも常識的な戦いをしていないよな。それに、ムスキより上手に銃を扱える兵士がいるか?、俺だって女性を戦場に出したくはない、だが、ロクソム城を守るために、君は常識を捨てて、勝つことに全力を注がなければ、ここで全員が死ぬ事になる。出来るな!」
カシビラ伍長は、少し冷静さを欠いていたように感じたが、女性が戦場に残ることにはやはり抵抗があったようだ。
中隊長のノアンカ大尉も、それは同じであった。
、、、まいったなあ、そんなことを議論している余裕なんてないのに。
「雄介様、遅くなりました」
突然現れたのは、ドットス軍の軍服を身に纏《まと》った玲子君だった。
『おい、君はシズと同行する予定だろ」
『いえ、こちらの状況を考えますと、多分この方が良いかと」
そういう彼女の手には、小型の迫撃砲と対戦車ミサイルがあった。
こんな重量の武器、どうやって持って来たんだ。
「ミスズ嬢まで、一体何を考えているのですか」
ノアンカ大尉が叫ぶ、まあ、ノアンカ大尉の言っていることが最も正しいのだけれども。
そうこうしている内に、川の奥からオルコ軍の先頭中隊が縦隊《じゅうたい》で迫って来る。
こちらに気付いたオルコ軍が、一斉にクロスボウガンで矢を放ってきた。
そうか、こちらの世界の飛び道具は、銃が無い分、ボウガンが使われているんだな。
そんな時だった。
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