上 下
52 / 332
当初の目的地へ強行着陸

第52話 男性の遺伝異常と

しおりを挟む
 すっかり日が暮れた。
 俺は玲子君のベットの横に座って、とにかく彼女の状況を見ていた。
 キャサリンが、俺のために別室を準備してくれたが、とても離れる気がしなかった。
 横須賀基地から運ばれてきたと思われる海軍の兵士も、悲鳴を上げながら何人か運ばれてきていた。
 ヘリポートは俺が燃やしてしまったので、グラウンドに臨時の発着所を準備して、何度も繰り返し飛来していた。
 あの後、空母エンタープライズ以外の艦船も被害を受け、地上の守備隊も激戦を繰り広げたのだから、横須賀地域あけでは収集が付かないだろう。
 キャサリンは、真っ暗になっていた病室の明かりを付けると、ワインとグラスを持って入ってきた。

「GF、美鈴はいつ起きるかわかりません、少しリラックスなされたらいかがですか?」

「それは、ワインか?あいにく飲酒の習慣がないのでな、あまり興味がないんだ」

「それでも、少しはお休みにならないと。大丈夫です、このワインはこの時代のものですので」

 キャサリンが俺のことを気遣ってくれているのは十分に理解できたが、とてもそんな気にはなれなかった。
 俺が一切酒に手を出さずにいると、キャサリンはワインのコルクを抜いて、一人で飲み始めてしまった。

「すまないが、二人っきりにしてもらえないか」

「では、一杯だけ、お飲みになってください、この時代では、これが最も有効です」

「まるで未来では有効ではないように聞こえるが」

「じつは、未来では完全禁酒法の世界ですので」

 そうなのか?おい、キャサリン、君は未来人だろ、それは違法ではないか

「未来で飲酒が禁止された理由は何だ?」

「はい、飲酒によって、遺伝子の一部に影響が出てしまうのです」

「玲子君が言っていた、男性の遺伝異常と何か関係があるのか」

「はい、自然界において、なぜ人間の男性だけが強く影響を受けたのかが長らく謎でしたが、答えは意外なものでした。考えてみれば、あらゆる動植物の中で飲酒をするのは人間だけですから」

「それならば、尚の事、私は飲酒すべきではないな」

「今日は特別ということでいかがですか?GFは、どのみち、、、」

 キャサリンは、少し慌てて口を閉ざした。
 なんだよ、どのみち、、、、、何?
 怖いんだよ、未来の出来事を知っている人たちの会話は。
 どのみち、、、子だくさんですから、、、、ではないよな。

「わかった、一杯だけくれ、それでいいだろ」

 俺は少し自棄になっていた。
 酒という方法で今日一日に起きた事から逃げてしまいたいという気持ちもあったことだろう。
 なにより、これまで出会った未来人の言動は間違ったことがない、少なくとも、良い未来へ導こうと努力をしてくれている。
 ならば、俺はキャサリンの言う通り、飲んでしまう方が良いのだろう。
 ワイングラスに一杯注がれた真っ赤なワインは、先ほどまでの戦闘で流れた血を彷彿とさせ、少しこみあげて来るものがあったが、ここは薬だと思って、一気にいった。

「それで大丈夫です、少しお休みになられた方が良いですわ」

 彼女はそう言い終えると、部屋の明かりを消してその場を立ち去った。
 、、、いや、消さなくてもいいんだけどね。

 俺は、そういいつつも、彼女のベットの横で座りながら、寝てしまうのであった。
 そうだ、この一日の疲れは、実は尋常ではない、初めて経験した実戦、初めての航空機操縦、それは眠くもなるわけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...