45 / 390
海軍基地の攻防戦
第45話 工作員の頭めがけて
しおりを挟む水兵達の制圧射撃が始まると、一時的に工作員からの射撃が止んだ。
もう、今しかないな。
俺は無我夢中でヘリに向かって走った。
走りながら銃を撃ちながら、とにかく走った。
途中、弾が切れた小銃を放り投げ、腰の拳銃を抜いてそのままヘリの中に入り込むと、操縦席で操作中だった工作員の頭めがけて至近距離から数発、拳銃を発射した。
、、、これほど至近距離で人を撃ったことは、もちろん初めてだった。
わかってはいたが、これが戦争だ。
目の前の敵は、操縦桿を握ったまま、血塗れになってもう動く気配が無かった。
ヘリの下では、先ほどまで銃撃戦を繰り広げていた工作員が、水兵との銃撃に負け、死体になっていた。
、、、終わったのだ。
ヘリのローターはまだ回ったままだが、制圧し、ヘリを確保したことを水兵に親指を立てて合図すると、向こうから歓声が上がった。
ぞろぞろと、飛行甲板上に水兵が出てくる。
、、、え、こんなにいたの?
おまえ等、少しは手伝えよ、と思いつつ、この単身乗り込んだ陸軍軍曹である俺を、彼らは歓喜で迎え入れてくれた。
「おい、だれか、医務室に運ばれた女性士官がどうなったか知らないか?」
「ああ、彼女は今、緊急手術をしています、案内します」
甲板上に出る時は、随分混乱したが、案内がいると早いものだ。
それでも原子力空母の艦内はまるで迷路だ。
敵は倒した、空母も洋上に出ることが出来た。
これで歴史は、第3次世界大戦を回避出来たのだ。
あとは、彼女の怪我だけが心配だ。
医務室に到着すると、既に手術は終わっていた。
軍医が言うには、命に別状はないとのことであったが、出血があるため、もう少し療養が必要となるだろうとのことだった。
ああ、もう気が抜けた。
彼女が助かる。
俺の命の恩人だ。
そう、彼女は俺にとって、特別な存在なのだ。
知り合って何日とか、そう言う時間の問題ではない、俺のせいで、こんな大けがをしてしまったのだから、俺は彼女の一生に対して、責任を追わなくてはならないな。
「、、、、ああ、雄介様、ご無事で」
彼女が目を覚ました。
手術に麻酔を使っていなかったらしく、彼女は酷く辛そうにしていた。
「まったく、君は無茶をする、、、申し訳ない、まさか君をこれほど危険な目に合わせるとは思っていなかった。」
「雄介様、ここは?」
「安心したまえ、ここは原子力空母の艦内だ」
すると、彼女の顔は、見る見る蒼白となっていった。
「どうした?何か不安でもあるのか?」
「雄介様、そのままお耳をおかしください、この空母は、もうだめです、脱出のご準備を」
「何を言っている、この艦の工作員は全て排除した、安心してくれ」
「いえ、そうではありません。マーシャンからの通信が入っています。艦内の工作員は、恐らく排除仕切れていません」
マジか?まだ潜入しているのか?
どうする?脱出ったって、ここ、原子力空母だぞ。
無事に沖合に出れれば、こちらの勝ちと思っていたのに、クソ!
「おい、だれか、話を聞いてくれ、艦内にまだ、武装工作員が潜入している可能性がある、調査を、、、」
そう言い終える前に、空母が大きく動揺した。
もの凄い音の爆発が、艦内深部から伝わって来た。
「なんだ、どこからだ?」
「機関部から、爆発音」
艦内スピーカーから、爆発音が機関室の方であることが流れてきた。
、、、ん?機関部?
おいおい、それって原子炉じゃん。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
『量子の檻 -永遠の観測者-』
葉羽
ミステリー
【あらすじ】 天才高校生の神藤葉羽は、ある日、量子物理学者・霧島誠一教授の不可解な死亡事件に巻き込まれる。完全密室で発見された教授の遺体。そして、研究所に残された謎めいた研究ノート。
幼なじみの望月彩由美とともに真相を追う葉羽だが、事態は予想外の展開を見せ始める。二人の体に浮かび上がる不思議な模様。そして、現実世界に重なる別次元の存在。
やがて明らかになる衝撃的な真実―霧島教授の研究は、人類の存在を脅かす異次元生命体から世界を守るための「量子の檻」プロジェクトだった。
教授の死は自作自演。それは、次世代の守護者を選出するための壮大な実験だったのだ。
葉羽と彩由美は、互いへの想いと強い絆によって、人類と異次元存在の境界を守る「永遠の観測者」として選ばれる。二人の純粋な感情が、最強の量子バリアとなったのだ。
現代物理学の限界に挑戦する本格ミステリーでありながら、壮大なSFファンタジー、そしてピュアな青春ラブストーリーの要素も併せ持つ。「観測」と「愛」をテーマに、科学と感情の境界を探る新しい形の本格推理小説。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
呪鬼 花月風水~月の陽~
暁の空
ミステリー
捜査一課の刑事、望月 千桜《もちづき ちはる》は雨の中、誰かを追いかけていた。誰かを追いかけているのかも思い出せない⋯。路地に追い詰めたそいつの頭には・・・角があった?!
捜査一課のチャラい刑事と、巫女の姿をした探偵の摩訶不思議なこの世界の「陰《やみ》」の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる