自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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海軍基地の攻防戦

第44話 飛行甲板、奪還

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 さすがにこれはまずい。

 彼女を運んでくれた水兵に、彼女の近くにいて手当をしてもらいたい旨を伝え、俺は一人で艦内の武装工作員を探した。
 俺の保有弾薬は、まだ半分はある。
 まだ、十分に戦える。
 彼女をこんな目にあわせた敵を、この手で葬り去る。
 そう思っていると、飛行甲板上から、銃撃戦の音が聞こえた。
 この上か、艦内の通路状況がさっぱり解らない中、もはや音だけで敵の位置にたどり着こうとしていた。
 複雑な艦内の構造を上へ上へと行くと、飛行甲板に続くハッチにようやくたどり着いた。
 そして、ハッチを開けた瞬間、工作員の放った銃弾が数発鋼鉄の扉に当たって跳弾した。
 俺は、この時、彼女の被弾と銃撃戦のテンションで、かなり好戦的になっていたのかもしれない、銃弾が飛び交う飛行甲板に飛び出し、一気に艦載機の車輪部分を目指して走った。
 気付いた敵工作員は、俺に向かって機関銃を乱射した。
 敵も、かなり形振り構っていられない様子だった。
 何とか無事に戦闘機の車輪までたどり着くと、今度は俺が銃の切り替えを連発にして、敵めがけて射撃した。
 今度は敵が横にスライドし、艦載機の中からヘリを奪うべく、その一部は操縦席を占拠した。
 体当たりでもする気なのか?
 工作員って何でも出来るのか、そのヘリは、メインローターの回転が始まった。
 これは絶対に止めなければ、ここは、勇気を振り絞って前に進まないと。
 しかし、敵も必死だ。
 もの凄い勢いで銃撃してくる。
 そんな時、空母搭乗員だろうか、話しかけてくる。

「軍曹殿、援護します、何かほかに出来ることはありますか?」

 銃を持った水兵が、援護射撃を申し出てくれた。

「いいか、あのヘリの横にいる敵工作員が撃っているのが見えるか?あいつの銃撃を一時的に止めてくれ、その援護射撃の間に、俺は敵が乗ったヘリまでたどり着いて、工作員を排除する」

 言ってはみたものの、そんなことが出来る自信は全くない、しかし、シチュエーションとは怖いもので、不安そうに応戦している水兵達を見ていると、陸軍の軍服に軍曹の階級を付けた俺が打開しなければならないと、変な使命感を感じていたのだ。

「よし、射撃を頼む」

俺がそう言うと、水兵達は一斉に射撃をしている工作員にい向けて制圧射撃を開始した。
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