自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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海軍基地の攻防戦

第41話 私、なんでもします

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「さすが、GFですわ、噂通りの勇敢なご発言。しかし、ここにいてはいけません、お忘れですか?今攻撃をしかけているのは、私たちの時代から来た敵とは別の存在、この時代の工作員です」

 ああ、そうだった、この時代の人間同士なら、殺し合っても許容範囲を越えないんだったな。
 ん、まてよ、すると、ここで一番不利なのは、反撃出来ない彼女じゃないか?
 
「君は、反撃が出来ないではないか?」

「私のことは問題ありません、しかし、この基地は、今世界で最も危険な場所となりました」

「武装工作員の目標は、一体何なんだ?」

「はい、先ほど停泊していた原子力空母と、その先にあった実験艦です」

「いや、空母はもう被弾しているから、多分使い物にならないぞ」

「この基地と、周辺からの反撃により、見た目より軽微な損傷のはずです」

 俺たちは話をしながら車に乗った。
 軍服姿に軍用車両、完全に軍人にしか見えない。
 
「歴史では、この後、武装工作員が上陸して、原子力空母と実験艦を狙うんだな」

「はい、そして、戦史では、ここの原子力空母と実験艦の破壊により、太平洋の軍事バランスが崩れ、アメリカ一強ではなくなり、大きな海戦へと発展、第3次世界大戦が始まるのです」

「では、この時点ではまだ、第3次世界大戦は始まっていないということだな」

 そうだ、それならば、まだこの時代の俺が頑張れば、小さな戦闘だけでこの戦いを完結できるかもしれない。
 ここから手が届く範囲の艦船を、俺が守りきれば、この勝負は俺の勝ちとなる。
 ならば、ここは勝負をかけるべきだ、俺にも予備自衛官としての矜持がある。

「玲子君、正面ゲートではなく、空母が停泊している港へ向かってくれないか」

「どうしてですか?ここで雄介様を危険に晒す訳にはいきません、それだけはお考え直しください」

「いや、今なら第3次世界大戦を止めることが出来るかもしれない、君たち未来人へも、もっとより良い未来を提示できるかもしれないじゃないか」

「、、、雄介様は、お優しいのですね。しかし、これだけはいけません。私がここへ派遣されてきた目的が崩れてしまいます、この願いを叶えて頂ければ、私、なんでもいたしますわ」

 美女の口から、何でもします、、、、これは魔法の言葉か?
 彼女から受ける、あんなサービスやこんな、、、って考えてしまうが、今回ばかりはそうはいかない、俺が犠牲になってでも、これから起こる悲劇をくい止めるべきだ、あんなことなどは諦めるんだ。

「玲子君、君の申し出は有り難いが、私もこの状況を見て逃げるような人間にはなりたくないのだ。君のあんなことは、後日に取っておいてもよいか?」

「、、、あんなこと、、、ですか?」

「あ、いや、、、え、何?、、、どんなこと?」
 
 あぶねー、ごまかせた?
 うっかり口に出てしまったよ。

「どうしても、だめか?」

「はい、どうしてもだめです」

「では、仕方がない、、」

 俺はそう言うと、運転中の助手席からドアを開けて、勢いよく飛び出した。
 ちょっと強引だったが、もうこうするしかない。
 驚いた彼女が、車を急停車させ、俺に近寄る。
 よし、予想通りだ。
 俺は当初、痛むフリをして、彼女が近づくのを待った。
 そして、彼女が近づいたタイミングを見計らい、素早く立ち上がると、俺は急いで運転席を目指して走った。

「雄介様、いけません!」

 彼女がそう言うが、俺はお構いなしに運転席に座ると、車を走らせようとした。
 
「わかりました、それでは条件があります。私から絶対に離れないでください、それだけは守ってもらいます」

 そうだな、さすがにここで彼女を置いて行くのは可哀想だ。
 今度は、彼女が右の助手席に座り、車を発進させた。

「まあ、階級も私の方が下だから、この方が違和感もないだろう。さすがに将校が運転する車両に、軍曹が助手席では見た目が悪い」

 俺は、彼女と出会ってからずっと主導権を握られっぱなしだったこの状況が逆転したことに、少しの優越感を覚えた。
 しかし、そんなことは、非常にくだらない拘りであったことに、俺はこの後気付くのだ。
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