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海軍基地の攻防戦
第38話 彼女はこの時代を「戦前」と呼称した
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海軍基地内は、防空サイレンが鳴り響き、恐らく停泊中の艦船からの反撃なのか、対空ミサイルと対空機関砲のけたたまし音で基地内は満たされていた。
まるで映画で見た戦争のシーンのように、空には幾重にもロケット砲のような白い軌跡が走り、基地内の道路には軍用車両が慌ただしく往復していた。
軍服を着た海軍の兵士たちが、小銃を持って走っているのがあちこちに見える。
そんな中、大きなジープのような軍用車両に乗った兵士が、俺たちに声をかけてきた。
「ミスターGF、無事でしたか、ちょっと非常事態が発生しています、美鈴も自転車を置いて、車にのりなさい」
マーシャンが迎えに来てくれたのだ。
この男が、これほど頼もしいと思えるものか。
俺たちは急いで車両の後部へ乗り込むと、猛スピードで発車した。
「とりあえず、一度宿舎に戻って着替えてください、そして、この車を渡しますから、速やかに基地外へ出てください。今やここは世界で一番危険な場所です」
車両は先ほどの空母が停泊している横を通過した。
既に数発の弾道弾が命中していて、多くの艦船からは煙が上がっていた。
残った艦艇も、錨を上げて出港準備をしているようだったが、まさかそんなに早く出港など出来るわけもない。
けたたましく艦船からは対空機関銃が濃紺の空目がけて発射されているが、目にもとまらぬ弾道弾に、効果があるかは全く不明だ。
「玲子君、さっきはどうして弾道弾の接近が解ったんだ?」
「私達は、特定の音波で定期的に情報を直接伝道される通信機のようなものを体内に仕込んでいます。その放送の中で、おかしな情報が流れていました、これは極めて危険な兆候です」
おいおい、世界が崩壊する奴じゃなかろうな。
「世界、、、は、大丈夫なのか?」
「そうですね、そこが一番恐ろしい部分です」
珍しく彼女が震えていた。
それを見れば、この状況がいかに危険かは容易に想像できた。
「これは、もしや第3次世界大戦というやつなのか?」
「いえ、、、、第3次世界大戦は、もう少し後のはずなのです。今現在、このような大規模攻撃が起こるはずがありません。私達の知っている時間軸から、大きく外れた過去となってしまっています」
そんなことってあるのか?
もしかして、俺が原因?
だとしたら、俺がここに居ること自体に問題があるんじゃ。
「しかし、敵は、この時代の人間を殺してはいけないのだろ、私どころか、もう既に相当数の死者が出ているぞ」
「はい、ですので、この状況はイレギュラーで異常なことなのです、、、、もしかして」
彼女は、何か思いついた様子だった。
「Mrディッカーソン、送信機はありますか?」
「ああ、私のものだが、問題ないか?」
「ええ、この際、仕方がありません、緊急事態ですので」
彼女が言う送信機とは、多分、未来との通信が可能なものだろうか、それとも、この時代にいる他の仲間との通信だろうか。
このような通信をしている所を見たことがない、つまり、それほど緊急事態だということだ。
彼女は通信機を使い、誰かと話し始めた。
この通信機は、相手からの音が俺には一切聞こえないため、隣にいてもどかしい気持ちになる。
ただ、相手との通信内容は、それがかなり追い込まれた状況であることと、その後の指示を仰いでいる様子だった。
「はい、ええ、いえ、しかしそれは、よろしいのですか、それは危険ではないかと思いますが、はい、ええ」
彼女は、通信の相手から、かなりの無理難題を告げられているらしく、会話が明らかに困っていた。
「Mrディッカーソン、GF本部からの指令です、私と雄介様で、エラーノリターンを実施せよ、とのことです」
マーシャンが、かなり本気で驚いている。
やめてくれよ、そういう俺が知らない単語使って会話するの!怖いじゃん!
まるで映画で見た戦争のシーンのように、空には幾重にもロケット砲のような白い軌跡が走り、基地内の道路には軍用車両が慌ただしく往復していた。
軍服を着た海軍の兵士たちが、小銃を持って走っているのがあちこちに見える。
そんな中、大きなジープのような軍用車両に乗った兵士が、俺たちに声をかけてきた。
「ミスターGF、無事でしたか、ちょっと非常事態が発生しています、美鈴も自転車を置いて、車にのりなさい」
マーシャンが迎えに来てくれたのだ。
この男が、これほど頼もしいと思えるものか。
俺たちは急いで車両の後部へ乗り込むと、猛スピードで発車した。
「とりあえず、一度宿舎に戻って着替えてください、そして、この車を渡しますから、速やかに基地外へ出てください。今やここは世界で一番危険な場所です」
車両は先ほどの空母が停泊している横を通過した。
既に数発の弾道弾が命中していて、多くの艦船からは煙が上がっていた。
残った艦艇も、錨を上げて出港準備をしているようだったが、まさかそんなに早く出港など出来るわけもない。
けたたましく艦船からは対空機関銃が濃紺の空目がけて発射されているが、目にもとまらぬ弾道弾に、効果があるかは全く不明だ。
「玲子君、さっきはどうして弾道弾の接近が解ったんだ?」
「私達は、特定の音波で定期的に情報を直接伝道される通信機のようなものを体内に仕込んでいます。その放送の中で、おかしな情報が流れていました、これは極めて危険な兆候です」
おいおい、世界が崩壊する奴じゃなかろうな。
「世界、、、は、大丈夫なのか?」
「そうですね、そこが一番恐ろしい部分です」
珍しく彼女が震えていた。
それを見れば、この状況がいかに危険かは容易に想像できた。
「これは、もしや第3次世界大戦というやつなのか?」
「いえ、、、、第3次世界大戦は、もう少し後のはずなのです。今現在、このような大規模攻撃が起こるはずがありません。私達の知っている時間軸から、大きく外れた過去となってしまっています」
そんなことってあるのか?
もしかして、俺が原因?
だとしたら、俺がここに居ること自体に問題があるんじゃ。
「しかし、敵は、この時代の人間を殺してはいけないのだろ、私どころか、もう既に相当数の死者が出ているぞ」
「はい、ですので、この状況はイレギュラーで異常なことなのです、、、、もしかして」
彼女は、何か思いついた様子だった。
「Mrディッカーソン、送信機はありますか?」
「ああ、私のものだが、問題ないか?」
「ええ、この際、仕方がありません、緊急事態ですので」
彼女が言う送信機とは、多分、未来との通信が可能なものだろうか、それとも、この時代にいる他の仲間との通信だろうか。
このような通信をしている所を見たことがない、つまり、それほど緊急事態だということだ。
彼女は通信機を使い、誰かと話し始めた。
この通信機は、相手からの音が俺には一切聞こえないため、隣にいてもどかしい気持ちになる。
ただ、相手との通信内容は、それがかなり追い込まれた状況であることと、その後の指示を仰いでいる様子だった。
「はい、ええ、いえ、しかしそれは、よろしいのですか、それは危険ではないかと思いますが、はい、ええ」
彼女は、通信の相手から、かなりの無理難題を告げられているらしく、会話が明らかに困っていた。
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