自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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横須賀米海軍基地

第23話 、、、なんて、ご迷惑ですよね、私なんて

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 風呂上り、大き目のリビングに、テーブルと、椅子が四つ。
 間接照明と清潔感あるアイボリーの壁紙。
 トレーナーがUSAでなければ完璧なシチュエーションなのだが、俺は本当にこれが似合わない。

「雄介様は、、その、個性的なファッションセンスなんですね」

「いや、まて、これはちがうぞ、アメリカ合衆国にそこまで執着はないからな。これはマーシャンが置いていった服だ」

 まあ、俺のセンスも、そう大差は無いのだが。

「そうですね、雄介様にはもう少し豪華な印象の服が似合いそうですわ」

「そうかな、それでは今回のことが落ち着いたら、服を選んでもらってもいいかな?」

 いつものように、「はい」と元気よく返事が返ってくるかと思いきや、意外とその表情は曇っていた。
 、、、会話をしていて感じるのだが、彼女はかなり俺に秘密にしていることがあるな。

「やはり、それは不可能なのか?」

「、、、いえ、この騒動がひと段落いたしましたら、ご一緒しますわ」

「君が選んでくれる服には興味がある、早く見たいものだ」

 実際に興味がある。
 これほど美人でイケてる女子が選ぶ、コーディネイト、興味ある。
 試しに聞いてみるか。

「スマホで少し検索してみてくれないか、君のセンスが気になるのでな」

 彼女はスマホを取ると、少し不慣れな手つきで操作し始めた、、、が、やはりこの時代の携帯電話は扱いにくそうにしている。
 多分、教育を受けてきてはいるのだろうが、業務以外のこととなると、いかにも苦手に見えてしまう。

「操作が難しいなら調べてあげよう、検索に必要なキーワードを言ってみなさい」

「そうですか、それではお言葉に甘えて」

 少しほっとした表情の彼女、最初からこうしてあげればよかったな。

「それでは、「男性用」「貴族」「ゴスロリ」「王子様」「キラキラ」、、」

 ちょっとまて、ちょっとまて、なんだこのキーワードは。
 これ、まとめて調べたら凄い画面がでてくるぞ、っていうか、半世紀前の少女漫画ではあるまいに。

「、、、おい、本当にこれでいいのか?」

「はい、これでよろしいかと」

 まあ、そんなに嬉しそうな顔されちゃあな、しらべてみるか、よし、行け。
 、、、まあ、そうなるわな。
 なんだか王子様っぽい服がたくさんヒットしているけど。
 それを彼女に見せると、

「そうです、こんな感じの服ですわ。雄介様にはこのようなキラキラしたお洋服がお似合いですわ」

 いやいや、どう見ても俺の姿形には合わないでしょ。
 未来では、このようなファッションが流行りなのか?
 、、、まあ、彼女のゴスロリファッションには、、興味がない、わけではない。

「君はこのようなファッションを着ないのか?」

「ひっ、いえ、私はこのような派手なファッションは似合いません、顔も地味ですし、、、」

 え、君は地味な部類に入るの? いやいや、結構ゴージャスですよ、顔もボディーも。
 だいたい何でも似合うでしょうに。
 、、、本当は好きなんだろうなあ、しかし、任務のために、それをグッとこらえて、、、涙

「いつか、君にも着てもらいたいな、恐らく似合うだろう」

「いえ、そんな、私なんて。でもちょっと憧れますよね、中世のファッションには」

 なんなら、甲冑《かっちゅう》でも着ようか?俺はどちらかと言えば、そちらの方が興味あるぞ。
 でも、彼女が喜んでくれるなら、いつかプレゼント出来たらいいな、、、メイド服。
 そして、俺は、、、甲冑。
 あー、もう、なんだそのカップルは! おかしいだろ、甲冑にメイドって、色々。

「冷めないうちに頂こう、せっかく君が作ってくれたディナーだからな」

 それにしても、短い時間でよくこれだけ作れたものだ。
 完全に洋食だが、しっかり食卓が出来上がっているではないか。
 慣れないフォークとナイフではあったが、アメリカテイストの料理を楽しむとするか。

「どうですか、お口に合いますか?」

 あれ、本当においしいよ。
 料理も運転も銃撃も出来る、君はきっと良いお嫁さんになれるね。

「ああ、おいしいよ。君は良いお嫁さんになれるな」

 再び彼女は顔を真っ赤にしながら、、とにかく照れた。
 褒められ慣れていないんだろうな、いちいち反応がかわいいわ。

「お褒め頂き光栄です、でも、私は良い妻にはなれませんわ。未来では、ごく一部の女性しか結婚はしないのです。」

 、、、そうなの?こんなに美人で良くできる人なのに?
 まあ、マーシャンみないな男と一緒になりますって言われたら、ちょっとショックだけど、生涯独身って、ちょっともったいないよな、さすがに。

「生涯独身では、さすがにもったいないのではないか?」

 彼女は少し笑うと

「、、、では、雄介様がもらってください」

 え、いいの、俺がもらっちゃって、いいですよ、もらいますよ君を!

「、、、なんて、ご迷惑ですよね、私なんて」

 何言っちゃってんの、ご迷惑なわけないじゃない、、でもいきなりじゃなんだから、、まずは友達以上、恋人未満的なところからお願いします!

「そんなことはない、君は魅力的な女性だと思うよ」

 勢いとはいえ、俺は、らしくないことを言ったかもしれない、言ったあと、なんだか物凄く恥ずかしくなってきた。
 彼女の方も、下を向き、そのまま黙ってしまった。

 会話のない食事が進む。

 彼女は、恥ずかしそうに下を向いて、照れ隠しをしているのだと思っていた。
 しかし、よく見ると、彼女は少し悲しい表情をしているように見えた。

 、、、悲しい表情?
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