異世界少年タケルの冒険記

ソウト

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第2の世界

最終決戦の時、そして帰還へ

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とても大きくて、重厚な雰囲気が漂っている扉を開けて中に入った。するとそこにはボスらしき人物が荘厳な椅子に座っていた。その周囲には側近らしき人物が1人だけいた。どこかにまだ敵が隠れているのではないかと警戒していたが、ボスが残る敵はここにい2人だけだと言ってきた。
 さまざまな生物を作り出して従えていたのだが、寿命を延ばすことが出来なかったようだ。それが原因で焦ってしまったために技術力が低下したのだとか。なんとも滑稽な話である。


 おそらく組織にはもう、まともに戦うだけの力は残っていないだろう。だからといってそのまま見逃すわけにもいかないだろうな。再び力を蓄える可能性がゼロだとは言いきれないからだ。
 この世界を救うという任務を考えれば、安易に和解というのは好ましくない。それは敵も同じようで、そう簡単に引き下がるわけにはいかないようだ。やはり戦いは避けられないだろう。
 数だけで言えば対等、2対2なのだ。戦略をしっかりと考えて、落ち着いて戦えば必ず勝てるはずだ。スカイと力を合わせて、最後の戦いに臨む。


 敵は2人とも人間で、剣を扱うようだ。魔力は全く感じられない。他には武器を持っていないようだ。まずは側近が独りで戦うようだよ側近という立場を考えれば当然かもしれないが。ひとまずスカイを待機させて、1対1で戦うことにした。
 相手の動きもそこそこに素早いようだ。だけど、状況把握の点においては劣っているだろう。なりふり構わず、剣を振っているという印象だ。しかし、だからこそ隙も多くなる。
 側近を倒すことはそんなに難しいことではなかったし、勝ってみればどうということはなかった。正直なところ、側近でこの程度なのかと思うほどだった。


 だからといってボスもそうだとは限らないわけだ。たとえボス単独であっても油断すべきではないだろう。相手が何かしらの力を隠している可能性はゼロじゃないからだ。
 スカイと協力してボスを倒すことができればと思っている。おもむろにボスが立ち上がった。剣を構えて、お互いに戦闘態勢に入った。しばらく睨み合いが続いた。
 どちらが先に踏み込むか、うかがっている状況だ。神経が研ぎ澄まされて、戦いの世界に入り込んでいるような感覚だ。


 睨み合いが続いたあと、敵がより踏み込んできた。それを受け流してこちらも斬りこんだ。すかさずスカイが敵の足元へ飛び込む。ボスは足にダメージを受けて、動きが鈍くなった。それを見逃すことなく、僕はさらに斬りこんでいった。
 衝撃で敵の剣がはるか遠くへ飛ばされた。そしてスカイがボスに飛びかかって押し倒した。それから最後に僕がとどめを刺した。ボスが息絶えたのを確認して、任務完了だ。


 今回もなんとか任務を遂行することが出来た。無事にこの世界を守ることができた。それが何よりの栄誉だと思う。スカイが居てくれたおかげで頑張ることができたと思う。
 スカイは僕にとって大切な相棒であり、友でもある。これまで共に戦ってきたのだ。かたい抱擁をかわして、喜びを噛みしめたのだった。
 もし叶うのであれば、ずっとスカイと冒険できればと思う。だけどスカイはこの世界の理に相反して人工的に作り出された生き物なのだ。他の世界に行くことが許されるのか、それはコンゲルネに聞くことになる。


 ボスを倒してアジトから出たあと、建物は痕跡すら残らないように消滅した。コンゲルネがそうしたのだろう。きっと歴史に残さない方がいいのだろう。
 そして村に戻ると、住民たちからものすごく歓迎された。この世界を救ったヒーローという事で、みんなが感謝してくれているようだ。スカイが受け入れてもらえるかどうか不安だったが、僕と共に戦ったのであればと言ってもらえた。
 住民たちが労いの食事を用意してくれた。もちろんスカイの分もある。すごくありがたいことだ。住民から感謝されるとやりがいを感じることができる。


 美味しい食事にとても満足することができた。その日はもう遅い時間なので、族長の家に泊まることになった。
 スカイと一緒に眠っていると、コンゲルネが夢の中に現れた。何か伝えたいことがあるのだろう。その声に耳を傾けた。
 すると、コンゲルネはスカイと一緒に居たいかと問うてきた。言うまでもなくその答えは「イエス」だ。スカイは大切な仲間だ。


 コンゲルネは僕から強い信念を感じ取ったらしい。双方が強く望むのであれば、それを受け入れようとの事だった。
 スカイはどう考えているのだろうか? 経緯がどうであれ、スカイにとってはこの世界がふるさとなのだ。無理強いはできない。
 明日の朝に話をした方がいいと思い、僕も深い眠りに落ちていった。


 翌朝に僕が目を覚ますと、スカイが僕の胸に顔を埋めてきた。どうやら僕との別れを意識したらしい。一緒に冒険したいか尋ねたところ、いろいろな世界を巡って経験したいという事だった。
 そこへコンゲルネが姿を現した。昨日、スカイの夢にも現れたそうで、2人の意志を受け入れてスカイが人間の姿になれるようにしてもらった。
 第238の世界、僕の居る世界にオオカミはいるものの、日本には生息していない。姿を見られてしまうと騒ぎになってしまうだろう。
 だから人間の姿で生活する方がいいと考えたのだ。スカイがせっかくならずっと人間の姿がいいと言った。僕と同じ種族で、同じように生活したいという事だ。


 スカイは僕と同じ年齢で男の子の姿になった。大切な友で仲間だから同じ年齢がいいと思ったのだそうだ。
 いよいよ元の世界に戻る時が来た。この世界の住民に見送られながら、コンゲルネの光に包まれた。元の世界に着くまでの間、スカイといろいろな事を話していた。
 コンゲルネの配慮で、僕のいとことして生活できることになった。住民登録などもしっかりとされた、元から存在していたものとして人々の記憶も書き換えられた。
 あとは住むところだ。僕の家で住むことができるならありがたいことだが、こればかりは僕の独断で決めることはできない。なんとか両親を説得しなければと思っている。


 そうこうしているうちに、元の世界に帰り着いた。スカイも疲れることなく、移動は問題ないようだった。
 家に着くと、母さんが居た。今日は父さんも早く帰ってくるらしい。ひとまずスカイにも家の中に入ってもらった。隠しても仕方がないので、正直に母さんに話した。どれだけ真剣なのか、しっかりと気持ちを伝えた。母さんは先代のワールド・トリッパーということもあって、すんなりと受け入れてくれた。
 だけど、父さんはそう簡単には納得してくれないかもしれない。曖昧にせず、きちんと話し合うのがいいだろう。父さんが帰ってくるまで、少し時間がある。スカイと一緒に街をめぐることにした。
 スカイにとっては初めて見るものばかりで、すごく興味津々な様子だった。二人でカフェに入って、紅茶とケーキを食べた。スカイもとても満足したようで、来てよかったと思う。その後もいろいろな場所を回った。


 夕食の時間が近づいてきたので、家に戻った。僕たちが家に着いてからしばらくして父さんが帰ってきた。先に母さんが話の概要を伝えてくれた。そして夕食が出来上がるまでの間に話し合いをすることになった。
 やっぱり父さんは懸念を示した。全く違う環境で生活していけるのかなど、心配することはなんらおかしいことではない。しっかりと自分達の考え、意志を伝えた。すると父さんにも真剣さが伝わったようで、一緒に暮らすことを認めてくれた。そして、立派に成長していると褒めてくれた。
 両親が応援してくれているのはすごくありがたい。ちょうど夕飯が出来上がったみたいだ。スカイと一緒に運ぶのを手伝った。スカイも含めて4人全員で食卓に座った。


 母さんの手料理を食べて、スカイも幸せそうな表情をしていた。やっぱり家族囲む食卓はいいものだ。大切な団らんの時間だからだ。今までは3人だったが、そこにスカイが加わった。母さんや父さんも、幸せそうに食べるスカイを見て嬉しくなっていた。スカイが来てくれて本当によかった。
 夕食後はお風呂に入って、自分の部屋に行った。ちょうど空いている部屋があったので、スカイも自分の部屋がる。まだほとんど物がないけど、これから少しずつ欲しいものができてくるだろう。
 勉強面に関しては僕と同じ年代、中3の平均より高いくらいの水準で身につけたことになっている。おおよそ僕と同じくらいの学力だ。そこから先は自分の力で勉強していく。2人で一緒に参考書を読むことにした。すると、スカイの理解力、吸収力がものすごく優れていることがわかった。僕も油断していると大差をつけられてしまうかもしれない。これからは任務に限らず、さまざまなことで切磋琢磨して高め合っていけることだろう。
 これからはスカイとの楽しい日々になるだろう。時にはぶつかることもあるかもしれない。だけどそれも含めて仲良くなれればいいと思う。それが今の僕の、僕たちの願いなのだから。
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