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第9章
終ぞ
しおりを挟むしんとした室内には、いつもと変わらない加湿器のコポコポと泡が弾ける音が静かに反芻する。
暫く茫然としていた佐助は、真田の呻き声でふと我に帰った。
怪我をしている訳ではなさそうだが、乱れた衣服や鼻に付く噎せ返るような雄の匂いで、真田が北条に何をされたのかは一目瞭然だった。
「畜生…っ!!また俺は…」
お前を護れなかったーーー。
激しい自責の念が佐助を苛む。
涙でぐちゃぐちゃになった真田の頬をするりと撫ぜる。目は泣き腫らして紅く染まっていた。
佐助は真田を抱え直し、ベッドに静かに身体を下ろす。乱れた衣服を整え、タオルで顔を丁寧に拭いた。
「ぐっ!」
不意に佐助の手首に激痛が走る。皮膚は赤黒く変色し、手首の尺骨が少し変形しているのが見えた。
骨折には至らなかったようだが、無理矢理脱臼させる行為に身体が順応出来なかったらしい。
だがそんな事は、佐助にとって瑣末な問題だった。
『ごめんな、幸村。』
お前が受けたキズの方がもっと痛いのに。
それなのに、佐助はもっと違う何か別のどす黒い感情に支配されていた。
自分以外の他者が真田の身体に触れ、心を侵した。
唯の嫉妬だとわかっている。
わかっているから、どうにもならないのだ。
「…どうしようもなく、お前に惚れてんだよ!俺以外の奴に触れられるだけで、そいつを殺したくなる程な!本当は、絶対誰にも渡したくねえんだ…っ!!」
死してなお、俺はお前の側に居たかった。
だって俺の命は、“あの時”からお前のものなのだからーーー。
刹那、
「…幸村…?」
一筋の雫が、真田の閉じられた瞳から綺麗な弧を描き、頬を伝って落ちた。
そして、聞き慣れたあの柔らかな声でーーー、
「…佐助…」
名を呼んだ。
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