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第3章
二人の距離感
しおりを挟む「…お邪魔します」
真田はそう小声で言うと、遠慮がちに靴を脱ぐ。佐助は部屋の明かりを点けて、申し訳程度に散乱していた洗濯物や物を片付け、二人分の座布団を敷いた。
「…悪い、散らかってるけど。」
「いや、こっちこそ急に押しかけて悪かったな。」
それっきりお互い口を噤んでしまい、久遠に感じる程の永い静寂が辺りを包む。
どのくらいそうしていただろう。
先に口火を切ったのは真田の方だった。
「あの…これ、忘れ物。届けるように頼まれたんだ。遊馬、具合が悪かったんならちゃんと先生に断ってから帰れよ。心配するだろうが。」
そう言って、真田は佐助の鞄とコートを手渡した。
「…ああ…。」
他になんて言えばいいのかわからない。
佐助はギュッと拳を握り締め、意を決して口を開いた。
「…真田、俺…っ」
「何も言うな。」
「…!」
真田の言葉に胸が詰まる。顔を上げると、悲しげに微笑んだ真田と視線が絡んだ。
「やっと、お前と目が合ったな。」
真田は正座を崩して胡座をかき、今度は臆面も無く笑った。
「今日会ったばかりの俺が、遊馬の踏み入れちゃならない領域に土足で入り込んだことは、本当に悪かったと思ってる。ごめんな。」
そう言って、真田は深く頭を垂れた。
「…ふざけんな!!あんた、自分が何されたかわかってんのか!?俺はあんたに…っ」
最低なことをして辱めたのに。
何故俺を責めない。
何故俺を罵倒しない。
何故俺を突き放さない。
これじゃあ何のために、あんたをあんな目に合わせたのかわからないじゃないか。
「わかってる。でも俺は、今日のことを誰にも言わないし、言うつもりもない。だから、もう遊馬も忘れろ。」
「んな都合のいいことできるかよ!!」
佐助はたまらず真田の胸倉を掴み、ぐっと自分へと引き寄せた。
「なかったことになんか…、できるわけねぇじゃねぇか…っ」
『やっぱりあんたは勝手だよ。このまま半端な距離感を保てる程、俺は大人じゃないんだ。』
その時、乱れた真田の襟元から自分が付けた紅い痕が見えた。その瞬間、抑えていた穢い欲がどくどくと渦巻いていくのがわかった。
本当に、女々しくて反吐が出る。
「あんたは、この痕の意味なんて一生わからねぇんだろうな…」
「あ、遊馬…。あの…」
佐助は情けない顔を見られたくなくて、真田の男にしては細い首筋に顔を埋めた。真田は困惑した表情でやんわりと佐助の肩を揺する。
嗚呼もうーーー、
何もかも滅茶苦茶に壊してしまいたい。
「真田、あんたはなんで、あんな事があった後にすぐ一人で俺の所に来れるんだよ。」
「…え?」
獣のような欲求が全身を駆け巡り、理性の箍が外れそうになる。
目の前にある、白い柔らかな肌にもっともっと紅い印を刻みたい。息をさせないくらい深く口付けて、自分のことだけしか考えられなくしてやりたい。
「本気で抵抗しねぇと、どうなっても知らないからな」
「…!」
真田の細い顎を捕らえ、ぐっと上を向かせる。
教師と生徒?
そんなの知ったことか。
俺がどれだけーーー、
あんたのことが欲しくてたまらなかったと思っている。
俺はもうあんた以外は愛せない。
佐助の理性は、いとも簡単に崩れ去った。
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