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第3章
ノイズ (R-18)
しおりを挟むぐちゅぐちゅと粘着質な音が響く。
鈍く呻く嬌声は、女のそれとは違い、酷く掠れた低い声だった。
「…んっ、はぁ…」
必死に声を抑えようとして噛んだ唇からは鮮血が溢れ出し、まるでルージュのように薄い唇を妖艶な色に染めていく。
玉のような汗が滑らかな肌を滑り、宙を舞って弾けた。
後孔に挿れられた指はいつの間にか三本に増えていたが、執拗に嬲られ続けた腸壁は卑しくそれを飲み込んでいく。
腹側に指を折り曲げられ、ぐりっと擦られれば、閉じた口の隙間から抑えきれなかった悲鳴が零れる。
「ひぅ…っ!や…、もう…」
首を横に振り、やめてくれと訴えるも、腹に収まった指はそれを許さず、さらに深いところを犯す。
「やめっ!…っそこは……!」
柔らかなしこりが触れた瞬間、彼は背を弓なりにして叫んだ。
どうやら、ここが前立腺と言うらしい。
男でもここを触れられれば、前を刺激しなくてもイケるようだ。
佐助はそんなことを朧げに考えながら、三本の指でバラバラに弄る。
「あぁ……っ!ま、待って…、も…イくっ」
最早声を抑える余裕もないのか、彼は必死に佐助の背中に手を回して爪を突き立てた。
だが不思議と痛みは感じない。
『……ゆき……、ら……っ』
なんだろう?
酷いノイズに邪魔されて、自身の声すら聞き取れない。
『…なぁ、……れの…名を…呼……で…』
俺は一体なんて言ってるんだ?
綺麗な琥珀色の髪は乱れ、彼の顔を窺い知ることができない。
ただ、頬に伝った雫が光っただけだった。佐助はそれを掬い上げるように、熱く濡れた頬を撫でる。
『…ゆ……ら、呼ん…で…。俺の…な…を』
ノイズは酷くなる一方で、視界が歪む。
もう彼の綺麗な顔も、火照った肢体も、宝石のような汗も見えない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
指先が冷たくなっていく。
この感覚は、自分が死んだ時のあの瞬間に似ていた。
嗚呼、また俺はあんたから離れるのか。
…いや、逃げると言った方が正しいか。
不意に、彼と目が合ったような気がした。
だがそれも、歪に捻じ曲がった空間では何も見ることはできない。
すると、背に回されていた手が、躊躇いがちに佐助の頬に触れた。それはとても暖かくて、冷えていく佐助の身体に熱を移すようで至極心地良かった。
血で紅く染まった唇が、微かに動く。
『…さ、…す……け……』
『っ!!』
確かに彼はそう呟いた。
手を取ろうとした刹那、黒い影が佐助から彼を引き離した。
やめろ…
連れて行かないでくれ。
俺はあんたをーーー、
俺の声は完全にノイズに飲み込まれ、霧散していった。
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