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第八章 虚無の呪詛
虚無の呪詛 第九節
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「あ、あああははハハはハはは」
町から離れた森の奥。曇天の下で、泣きとも笑いともつかない顔で奇声を上げながらカトーは走り続けた。やがて壊れたゼンマイ人形のようにガクガクと体が震えては跪く。
曇りの日の森はまるで夜のように昏く、その暗がりからあるはずのない視線が、ざわめく木々が、人の目と声のようにカトーの心を苛む。
「い、いやだ…、いやだっ!僕の作品を見て…哀れな僕を見ないでくれよっ!」
カトーが頭を抱えてヒステリーに泣き喚く。自分が生み出した自虐の思想が、今や呪いで感情を誘導する必要もなく自発的に心の中でネガティブに循環し、膨張していく。だがライムはあえてそれを更に加速させた。
『カアッ』
呪詛の鳴き声が響いた。感情という呪詛がカトーの心に絡みつき、虚無のより深くへと引きずり込んでいく。
「あ、アアあああアアァァッ!」
「カトーっ…?!」
ようやく追いついたアリスが、呪いの渦の中心で喚くカトーを見て絶句する。カトーの周りの赤黒い呪いの光が、ぼんやりと赤目のカラスの影を成しているのだ。
「カトーさん!アリスさん…きゃあっ!?」
「かはっ!なんだこれ…気持ちワリィッ!」
「エリーっ、カイっ?」
アリス達の後を追ってきたエリネ達はウィルフレッドを除き、カトーから放たれる呪いの渦に触れて急激に足を止めた。胃がひっくり返す程の強烈な不快感を感じたからだ。それは更に後ろから追ってきたケントも同じだった。
「アリスッ…カトー!?うっ、おあっ…!」
悪寒が、羞恥が胸と胃に暴れ、ケントは思わず立ち止まる。
「ケント様大丈夫!?」
レクスが慌てて彼を支える。
「ケント様!…これ以上進んでは危険です!」
「アイシャ様っ、これはいったい…っ」
「カトーさんの感情がライムの呪いによって暴走して溢れ出している…迂闊に近づくと呪いに汚染されてしまいますっ」
「カトーの…感情が?」
ケントは体から沸き立つ不快感を必死に抑えながら困惑する。この気持ち…この感情…、かつて商売を始めたはがりで度々挫折し、一人で悔し涙を流していたあの時に感じたものと同じだ。
「くそっ!これじゃ迂闊に近づけないぞ!」
カイが叫ぶなか、呪いの暴風の影響を受けないウィルフレッドは強行突破してカトーの元に駆けるのを躊躇っていた。
(どうする?カトーに接近するのはできるが、呪いに疎い俺が勝手に手を出したら状況が悪化する可能性も…っ)
立ち往生するウィルフレッド達に、アイシャが一歩前に出た。
「私が魔法でライムを追い出してみますっ。夜の闇を照らす――」
『カアアァァァァッ!』
「うわあ!」「きゃあ!」
ライムのひと際大きな威嚇の鳴き声がコダマし、呪いの風圧がアイシャ達を押し退ける。アイシャに自分の脅威に足る力を持っていることを本能的に察したのだ。
「あ…ああアアあアァァっ!!!」
カトーの目と口、耳と鼻から、血が滲み出た。
「ああっ、カトーっ!」
思い人の凄惨な姿を見て、アリスがなりふり構わずにカトーの元へと走る。ケントやアイシャ達が叫んだ。
「アリスっ!」
「アリス様だめっ!呪いに汚染されます!」
だがアリスは足を止めない。赤黒い呪いの嵐に一歩も臆することなく、風圧に耐えながらカトーの元にたどり着いた。
「カトー!カトーしっかりしてっ!私よ!アリスよ!」
「あ…ああアぁァ…アリ、ス…?」
自分の肩を掴むアリスを、血で真っ赤に染めた目で心あらずに見るカトー。
「そうよっ!しっかりしてカトー…っ!」
「あ…あははハハハは…そうだよ…アリスだよ…」
搾り出すような乾いた笑いをするカトー。
「カトーっ…?」
「アリス…僕はバカだよ…自分の力量も、弁えずに…ヴィーネスなんか夢見ちゃってさぁ…。そこさえ行けば、みんなに認められて…アリスと一緒にいるのを見せびらかせることができて…恥知らずにも程があるよね…っ」
「カトー…っ」
「ごめんよアリス…だから僕、一人で離れたんだ…アリスだって…誰にも見ない僕と、ヴィーネスにさえ行けない落ち零れなぼくと一緒にっ、い、いたくないよね…っ。君まで、は、恥を晒すすす必要なんてっ、な、ななな―――」
パァンッ!
呪いの爆風よりもなお大きく響く平手打ちの声が、呪いで壊れそうなカトーの頬に炸裂した。
「「「うわっ!?」」」」
カイ達でさえ思わず驚いて身が竦む。レクスも何故かラナに平手打ちされたような感覚を覚え、無意識に頬をさすった。
(い、痛そう…)
「あ…」「カトーのバカッ!」
涙ぐむアリスに呆然とするカトー。
「勝手に自分で思い込んで、勝手に自分で完結して…っ、私の気持ちは私のものなの!恥になるとか勝手に決め付けないで!」
カトーの頬を、アリスの温かな両手が優しく包み、その細い指が血の涙を拭っていく。
「私はカトーがヴィーネスに行くことを期待して付き合ったんじゃないわっ。カトーが創作してる時の純粋な気持ち…そんな貴方の楽しそうな顔が好きだから、私は貴方と一緒にいたいのっ!」
カトーへの思いが積もった不安と共に涙となって流れるアリス。
「誰も貴方を見ないだなんて、そんなことあるものですかっ。私はずっと見てきたわ、だって…だって私にとってカトーは誰よりも大切な人なのっ!一緒にいるって言ってた癖に、私の気持ちを、私のことを無視しないでよっ!」
カトーの呆然としてた目が、ゆっくりと焦点を定めて目の前のアリスを認識した。
「ア、アリス…ぼくは…」
『カアァァッ!』「うわああぁぁっ!」「カトーっ!」
カラスの影が蠢き、禍々しい呪詛の鳴き声を絶えずに発し始めた。
『カアァッ!カアアァァァッ!』「あっ、あがああぁぁっ!」「カトーッ!しっかりしてカトーッ!」
呪いの爆風が一層強まり、森が吹き荒れる。カトーの体が劇的に震え、流れる血がさらに勢いを増した。
「畜生っ、カトーの奴どうしたんだっ!?」
エリネが耳を傾ける。
「この声…ライムが焦ってるっ、アリスさんの声で正気に戻ろうとするカトーさんをこの場で呪い殺すよう呪力を強めていているのっ!」
「じゃあ早く助けておかないと…っ、アイシャっ」
「ええっ、皆様下がってください…っ、――破魔っ!」
柔らかな銀の月光がアイシャから撃たれる。光は赤黒の呪詛の暴風を容易くかき分け、カトー達へと命中した。
『カアァァッ!』「うあぁぁっ!」
退魔の光に当てられてライムの影が悶え声を上げる。だが同時にカトーまでもが苦しい叫びを上げてしまい、血の流出が加速してしまう。アリスが悲鳴をあげる。
「カトーっ!」
一度弱まった呪詛の爆風がさらに狂うかのように吹き荒れてしまい、カイ達は後退を余儀なくされた。
「うおっ!?どうなってんだこりゃっ?」
「これは…楔ですっ。ライムはミーナ先生が言っていた楔の魔法陣を通してカトーさんに取り憑いていますっ」
エリネがはっとする。
「アトリエの魔法陣…っ」
「はいっ、楔は強力な因果要素でカトーさんとライムを縛りついていて、無理やり剝がそうとするとカトーさんまで傷ついてしまいますっ。アトリエの方で同時に解呪しないと…っ」
「今さらアトリエの方に行けるかよっ!くそっ、どうすりゃいいんだっ!」
「アリス…カトーっ」
自分の娘とカトーが苦しむ姿にケントの心が締め付けられる中、アリスは吹き飛ばされないように懸命にカトーにしがみつく。
「カトー…ッ!カトーから離れてこの化け物!」
アリスがカラスの影に虚しく叫ぶも、ライムは意にも介さずに更に虚無の鳴き声をあげた。
『カアァァッ!』
カトーは服を破るほど苦しく悶え、目や口からの血がついに噴泉のように噴出し始めた。
「ぎゃああアアぁぁアァァーーーー!」
「いやぁぁぁっ!カトーっ!止めて!お願いっ!カトーを、カトーを私の傍から――」
カトーの胸に顔を埋めてはアリスが泣き叫ぶ。
「私の傍から連れてかないでぇっ!」
滝のように流れるアリスの涙が、カトーの胸に滴った。
『カアアァァッ!?』
カトーが、ライムの影が突如苦しみだす。
「カトーっ!?」
アリスが顔を上げると、涙が振り撒かれたカトーの肌が不思議な光とともに、まるで熱湯に浴びられたかのように煙が立ち、彼がじたばたと暴れる。その喉の奥からは、カトーではなくライムの悲鳴が吐き出される。
「な、なんだっ?なにが起こったんだ!?」
突然の変異にカイ、エリネ達が困惑する。
「分からないっ、ライムが何故か苦しんでいる…っ!」
『カアァァッ!カアアアァァッ!』
アリスもカトーの変化に愕然とするも、彼に取り憑いているライムがなんらかの理由で悶えてることだけは理解した。
「…出ていって、私のカトーを、返してぇっ!」
アリスの叫びと共に再び涙がカトーの胸へと滴り、光が一層強まる。
「『ガアアアァッ!』」
カトーの全身に黒色の血筋が走り、彼の影が歪む。呪いの渦が爆散したかのように散り、嵐と爆音が森を震撼させた。
「おごおおおぉぉっ!」
カトーの目や口、鼻や耳から黒い影が吐き出される。それが歪んだカトーの影と重なり、どろりとまるでタールの如く溶け出すと、森の影へと拡散した。これと同時に、カトーのアトリエに描かれた魔法陣が悲鳴に似た音をあげて雲散した。
――爆風が収まった。カトーがぐたりと倒れこみ、アリスも糸が切れたように彼の上へと重なる。
「アリス様!」「アリスっ!アリス!」「カトー!」
アイシャ、ケントやカイ達が急いで二人の元へ駆け込む。
「アリスっ、しっかりしてくれアリスっ!」
アリス達を揺さぶるケントの肩にレクスが手を置く。
「落ち着いてケント様っ、ここは僕たちに任せて」
「レクス様…っ」
レクスになだめられて離れるケント。アイシャとエリネが大急ぎ、アリスとカトーの容態を確認する。
「アイシャ、エリー、二人は無事なのかっ?」
「静かにしてお兄ちゃんっ。…大丈夫、アリスさんはただ気を失っただけで、カトーさんも命に別状はないわ」
「ええ、それにアリス様、ライムの呪いを間近に浴びたのに全然汚染されてません。どうして…」
「それよりもアイシャ様、早く手当てをっ」
「そ、そうですね」
アイシャとエリネが二人を魔法で治療する中、ウィルフレッドは立ち上がって周りを見渡しながら身構える。
「カイ、レクス、注意しろっ。あいつはまだここにいるっ」
「なんだって」
二人は急いで弓と剣を構え、ウィルフレッドは全精神を周りの警戒に集中した。熱探知やX線センサー等の類はライムをまったく検知できないが、彼自身が磨いた感覚は、森の中で移動しているライムの存在を訴えていた。
「…全然見当たらないけど、どこにいるの?」
まるで夜となったように仄暗い森を風がざわつかせ、ぼんやりとした森の影が揺らいだ。
「そこだっ!」
複雑に絡める木々の影めがけ、ウィルフレッドが投げた剣が槍の如く飛翔する。この時、影の一部が突如液体のようにぐにゃりと歪んでは剣を避け、そして地面を這って疾走し始めた。
「なっ!」
カイが叫ぶ隙を狙い、影はカイ達めがけて飛びかかった。
「――月光!」
『カアァァッ!』
白銀の輝きが突如影とカイ達の間に挟まる。それに照らされた影がカラスの奇声を上げて方向を逸らし、すぐ傍の空き地に墜落した。
「アイシャッ!」
カトーとアリスの治療をエリネに任せたアイシャが凛と前に出る。
「気を付けてください、さっきのは大して効いてないはずですっ」
四人は墜落した影と対峙する。アイシャが出した月光の光は未だ空に浮遊し、月の女神由来の光源魔法が影を照らし続ける。影はまるで光に焼かれたように煙立ち、妖しく蠢いた。
『カァッ、カアァァァ…ッ』
退魔の光に影が呻り、ドロリと溶けては形を成し、立ち上がった。
「こ、これがライム、なのかい…っ」
レクスが驚愕の声を上げる。漆黒のカラスの翼に頭、鮮血で綴ったかのような赤い目。その鳥の容貌に反して上半身は裸の人間男性みたいで腕まで生えており、下半身は鳥の脚になっていた。その奇怪な怪人の風貌に、ウィルフレッドはかつてアオトが見せた話にある悪魔を連想した。
「なるほど影を操れる訳だぜ。元の姿がこんな真っ黒な陰湿カラスだと、なぁっ!」
カイがライムに向けて弓を構えた。
『カァッ!』
ライムが叫びと共に翼を大きく広げ、影の風が吹き荒れた。
「うおっ!」「ああっ!」
怨嗟の声が鳴り響く影の風にカイやアイシャ達は思わずよろめく。渦巻く風は木の一本をなぎ倒し、倒木は月光の光に直撃してそれを消散せしめた。
「いけないっ!」『カァァッ!』
アイシャ達が体勢を立て直そうとするその隙に、月光の影響から脱したライムは再び溶けて影となった。
「ライムを止めてください!逃げる気です!」「くそっ!」
カイが急いで矢を放つが、ライムの影は容易くそれをかわし、濃い影のある森の方へと疾走していく。
「ちぃぃっ」
ウィルフレッドやレクスがすぐさま反応して走ろうとする、その時だった。
「光よ!」
ライムの行き先に強烈な光が爆ぜ、森の影がライムから遠さがり、ライムも眩い光に照らされて悶え始める。
『カァァァッ!』
「光よ!光よ!」
連続して放たれた光の玉はライムを囲むように浮遊し、それと同時に一つの袋が影へと命中した。
『カァァァーーーッ!』
袋の中の銀色の粉が飛散すると、影は悶えて再びライムの姿に戻った。
「太陽の巫女謹製の陽光の味はいかがかしら。月の明かりでなくとも中々効くものでしょう?」
「加えて魔の力を封じる月鈴草の粉も撒いた。影に化けることはもはやできまい」
「あ…ラナ様!ミーナ殿!」
森の奥から駆けつけたばかりのラナとミーナの姿がそこにあった。
「遅れてすまん。町からかなり離れた場所へと行ったのでな」
ミーナは倒れてるカトーとアリス、二人を看護するエリネにケントの方を見やる。
「我はそっちの様子を見る。ラナはアイシャ達とともにライムを。気をつけるのだぞ」
「ええ」
『カァァァッ!カァァァァァッ!』
太陽の如き眩い光に囲まれ、影なきライムはその黒き翼で自分を覆いながら苦しそうに呻る。それを見てラナは不敵に笑いながらアイシャ達の元へと合流した。
「みんな無事のようね」
「まったく、旨いタイミングで出てきますねラナ様」
「レクス様の言うとおりです。ラナちゃんが出てこなかったらライムを逃してしまうところでした」
「ほんまかっけぇよラナ様っ」
「ああ、見事な手際だ」
「ふふ、そんなにおだてても何も出ないわよ」
喜ぶウィルフレッド達にラナが微笑み返す。
「大体の状況はあそこのアリス殿やケント様を見れば察しがつくけど、まずはライムを片付けないとね」
ラナ達一同が改めて悶えるライムに向いて構えた。
『カァッ!カァ…カァァッ』
光の牢獄に囚われたライムだが、徐々に落ち着いたように苦悶の声が低い呻りへと変わり、その赤い目が明確な敵意をはらんでラナやアイシャ達を睨んだ。
「陽光じゃやはり効果は限られるわね。みんな、今の内に片付けましょうっ」
「ええっ」「おうっ。覚悟しやがれカラス野郎っ!」
アイシャやカイがライムへと呪文と弓を構え、ウィルフレッドとレクス、ラナが剣を持ってライムに止めを刺そうと駆けた。
ライムの目が怪しく輝いた。
「! みんな離れろっ!」
『カァァァァァァッ!』
異状を察したウィルフレッドが叫ぶと、ライムの禍々しい雄叫びとともにその体から影がスドンと油井の如く高く噴出し、おどろおどろしい怨嗟の声を含んだ魔力が周りを震撼させた。
「なに!?」「きゃあ!」
その衝撃にラナやアイシャ達は押し退けされ、離れたミーナとエリネ達も思わず身を伏せてしまう。
「なにごとっ?いったい何が…っ」「こ、この感覚は…っ」「キュウゥゥ…ッ!」
『カァァァッ!カァァaaaaa!』
赤き目を狂気的に震わせながらライムの声が変質する。妖しい血の色のオーラが巡り、ライムの体が膨らんで下半身が変形していく。漆黒の羽が逆立ちして体とともに禍々しい外宇宙的な質地へと変わり、目のような無地の緑の結晶が体中に浮ぶ。下半身がやがて四肢動物に似た形へと変わり、刺々しい先端をもつ尻尾を危なげに振り回す。背中の異形の翼を広げると、背筋さえ凍るおぞましい高鳴りと共にその赤い目が威圧的に光った。
『Kaaaaa!』
「なっ、こ、こいつはっ!」
カイ達が驚愕する。その異様な姿が何なのか一目で分かったからだ。ウィルフレッドが拳を握りしめた。
「変異体だ…っ」
【続く】
町から離れた森の奥。曇天の下で、泣きとも笑いともつかない顔で奇声を上げながらカトーは走り続けた。やがて壊れたゼンマイ人形のようにガクガクと体が震えては跪く。
曇りの日の森はまるで夜のように昏く、その暗がりからあるはずのない視線が、ざわめく木々が、人の目と声のようにカトーの心を苛む。
「い、いやだ…、いやだっ!僕の作品を見て…哀れな僕を見ないでくれよっ!」
カトーが頭を抱えてヒステリーに泣き喚く。自分が生み出した自虐の思想が、今や呪いで感情を誘導する必要もなく自発的に心の中でネガティブに循環し、膨張していく。だがライムはあえてそれを更に加速させた。
『カアッ』
呪詛の鳴き声が響いた。感情という呪詛がカトーの心に絡みつき、虚無のより深くへと引きずり込んでいく。
「あ、アアあああアアァァッ!」
「カトーっ…?!」
ようやく追いついたアリスが、呪いの渦の中心で喚くカトーを見て絶句する。カトーの周りの赤黒い呪いの光が、ぼんやりと赤目のカラスの影を成しているのだ。
「カトーさん!アリスさん…きゃあっ!?」
「かはっ!なんだこれ…気持ちワリィッ!」
「エリーっ、カイっ?」
アリス達の後を追ってきたエリネ達はウィルフレッドを除き、カトーから放たれる呪いの渦に触れて急激に足を止めた。胃がひっくり返す程の強烈な不快感を感じたからだ。それは更に後ろから追ってきたケントも同じだった。
「アリスッ…カトー!?うっ、おあっ…!」
悪寒が、羞恥が胸と胃に暴れ、ケントは思わず立ち止まる。
「ケント様大丈夫!?」
レクスが慌てて彼を支える。
「ケント様!…これ以上進んでは危険です!」
「アイシャ様っ、これはいったい…っ」
「カトーさんの感情がライムの呪いによって暴走して溢れ出している…迂闊に近づくと呪いに汚染されてしまいますっ」
「カトーの…感情が?」
ケントは体から沸き立つ不快感を必死に抑えながら困惑する。この気持ち…この感情…、かつて商売を始めたはがりで度々挫折し、一人で悔し涙を流していたあの時に感じたものと同じだ。
「くそっ!これじゃ迂闊に近づけないぞ!」
カイが叫ぶなか、呪いの暴風の影響を受けないウィルフレッドは強行突破してカトーの元に駆けるのを躊躇っていた。
(どうする?カトーに接近するのはできるが、呪いに疎い俺が勝手に手を出したら状況が悪化する可能性も…っ)
立ち往生するウィルフレッド達に、アイシャが一歩前に出た。
「私が魔法でライムを追い出してみますっ。夜の闇を照らす――」
『カアアァァァァッ!』
「うわあ!」「きゃあ!」
ライムのひと際大きな威嚇の鳴き声がコダマし、呪いの風圧がアイシャ達を押し退ける。アイシャに自分の脅威に足る力を持っていることを本能的に察したのだ。
「あ…ああアアあアァァっ!!!」
カトーの目と口、耳と鼻から、血が滲み出た。
「ああっ、カトーっ!」
思い人の凄惨な姿を見て、アリスがなりふり構わずにカトーの元へと走る。ケントやアイシャ達が叫んだ。
「アリスっ!」
「アリス様だめっ!呪いに汚染されます!」
だがアリスは足を止めない。赤黒い呪いの嵐に一歩も臆することなく、風圧に耐えながらカトーの元にたどり着いた。
「カトー!カトーしっかりしてっ!私よ!アリスよ!」
「あ…ああアぁァ…アリ、ス…?」
自分の肩を掴むアリスを、血で真っ赤に染めた目で心あらずに見るカトー。
「そうよっ!しっかりしてカトー…っ!」
「あ…あははハハハは…そうだよ…アリスだよ…」
搾り出すような乾いた笑いをするカトー。
「カトーっ…?」
「アリス…僕はバカだよ…自分の力量も、弁えずに…ヴィーネスなんか夢見ちゃってさぁ…。そこさえ行けば、みんなに認められて…アリスと一緒にいるのを見せびらかせることができて…恥知らずにも程があるよね…っ」
「カトー…っ」
「ごめんよアリス…だから僕、一人で離れたんだ…アリスだって…誰にも見ない僕と、ヴィーネスにさえ行けない落ち零れなぼくと一緒にっ、い、いたくないよね…っ。君まで、は、恥を晒すすす必要なんてっ、な、ななな―――」
パァンッ!
呪いの爆風よりもなお大きく響く平手打ちの声が、呪いで壊れそうなカトーの頬に炸裂した。
「「「うわっ!?」」」」
カイ達でさえ思わず驚いて身が竦む。レクスも何故かラナに平手打ちされたような感覚を覚え、無意識に頬をさすった。
(い、痛そう…)
「あ…」「カトーのバカッ!」
涙ぐむアリスに呆然とするカトー。
「勝手に自分で思い込んで、勝手に自分で完結して…っ、私の気持ちは私のものなの!恥になるとか勝手に決め付けないで!」
カトーの頬を、アリスの温かな両手が優しく包み、その細い指が血の涙を拭っていく。
「私はカトーがヴィーネスに行くことを期待して付き合ったんじゃないわっ。カトーが創作してる時の純粋な気持ち…そんな貴方の楽しそうな顔が好きだから、私は貴方と一緒にいたいのっ!」
カトーへの思いが積もった不安と共に涙となって流れるアリス。
「誰も貴方を見ないだなんて、そんなことあるものですかっ。私はずっと見てきたわ、だって…だって私にとってカトーは誰よりも大切な人なのっ!一緒にいるって言ってた癖に、私の気持ちを、私のことを無視しないでよっ!」
カトーの呆然としてた目が、ゆっくりと焦点を定めて目の前のアリスを認識した。
「ア、アリス…ぼくは…」
『カアァァッ!』「うわああぁぁっ!」「カトーっ!」
カラスの影が蠢き、禍々しい呪詛の鳴き声を絶えずに発し始めた。
『カアァッ!カアアァァァッ!』「あっ、あがああぁぁっ!」「カトーッ!しっかりしてカトーッ!」
呪いの爆風が一層強まり、森が吹き荒れる。カトーの体が劇的に震え、流れる血がさらに勢いを増した。
「畜生っ、カトーの奴どうしたんだっ!?」
エリネが耳を傾ける。
「この声…ライムが焦ってるっ、アリスさんの声で正気に戻ろうとするカトーさんをこの場で呪い殺すよう呪力を強めていているのっ!」
「じゃあ早く助けておかないと…っ、アイシャっ」
「ええっ、皆様下がってください…っ、――破魔っ!」
柔らかな銀の月光がアイシャから撃たれる。光は赤黒の呪詛の暴風を容易くかき分け、カトー達へと命中した。
『カアァァッ!』「うあぁぁっ!」
退魔の光に当てられてライムの影が悶え声を上げる。だが同時にカトーまでもが苦しい叫びを上げてしまい、血の流出が加速してしまう。アリスが悲鳴をあげる。
「カトーっ!」
一度弱まった呪詛の爆風がさらに狂うかのように吹き荒れてしまい、カイ達は後退を余儀なくされた。
「うおっ!?どうなってんだこりゃっ?」
「これは…楔ですっ。ライムはミーナ先生が言っていた楔の魔法陣を通してカトーさんに取り憑いていますっ」
エリネがはっとする。
「アトリエの魔法陣…っ」
「はいっ、楔は強力な因果要素でカトーさんとライムを縛りついていて、無理やり剝がそうとするとカトーさんまで傷ついてしまいますっ。アトリエの方で同時に解呪しないと…っ」
「今さらアトリエの方に行けるかよっ!くそっ、どうすりゃいいんだっ!」
「アリス…カトーっ」
自分の娘とカトーが苦しむ姿にケントの心が締め付けられる中、アリスは吹き飛ばされないように懸命にカトーにしがみつく。
「カトー…ッ!カトーから離れてこの化け物!」
アリスがカラスの影に虚しく叫ぶも、ライムは意にも介さずに更に虚無の鳴き声をあげた。
『カアァァッ!』
カトーは服を破るほど苦しく悶え、目や口からの血がついに噴泉のように噴出し始めた。
「ぎゃああアアぁぁアァァーーーー!」
「いやぁぁぁっ!カトーっ!止めて!お願いっ!カトーを、カトーを私の傍から――」
カトーの胸に顔を埋めてはアリスが泣き叫ぶ。
「私の傍から連れてかないでぇっ!」
滝のように流れるアリスの涙が、カトーの胸に滴った。
『カアアァァッ!?』
カトーが、ライムの影が突如苦しみだす。
「カトーっ!?」
アリスが顔を上げると、涙が振り撒かれたカトーの肌が不思議な光とともに、まるで熱湯に浴びられたかのように煙が立ち、彼がじたばたと暴れる。その喉の奥からは、カトーではなくライムの悲鳴が吐き出される。
「な、なんだっ?なにが起こったんだ!?」
突然の変異にカイ、エリネ達が困惑する。
「分からないっ、ライムが何故か苦しんでいる…っ!」
『カアァァッ!カアアアァァッ!』
アリスもカトーの変化に愕然とするも、彼に取り憑いているライムがなんらかの理由で悶えてることだけは理解した。
「…出ていって、私のカトーを、返してぇっ!」
アリスの叫びと共に再び涙がカトーの胸へと滴り、光が一層強まる。
「『ガアアアァッ!』」
カトーの全身に黒色の血筋が走り、彼の影が歪む。呪いの渦が爆散したかのように散り、嵐と爆音が森を震撼させた。
「おごおおおぉぉっ!」
カトーの目や口、鼻や耳から黒い影が吐き出される。それが歪んだカトーの影と重なり、どろりとまるでタールの如く溶け出すと、森の影へと拡散した。これと同時に、カトーのアトリエに描かれた魔法陣が悲鳴に似た音をあげて雲散した。
――爆風が収まった。カトーがぐたりと倒れこみ、アリスも糸が切れたように彼の上へと重なる。
「アリス様!」「アリスっ!アリス!」「カトー!」
アイシャ、ケントやカイ達が急いで二人の元へ駆け込む。
「アリスっ、しっかりしてくれアリスっ!」
アリス達を揺さぶるケントの肩にレクスが手を置く。
「落ち着いてケント様っ、ここは僕たちに任せて」
「レクス様…っ」
レクスになだめられて離れるケント。アイシャとエリネが大急ぎ、アリスとカトーの容態を確認する。
「アイシャ、エリー、二人は無事なのかっ?」
「静かにしてお兄ちゃんっ。…大丈夫、アリスさんはただ気を失っただけで、カトーさんも命に別状はないわ」
「ええ、それにアリス様、ライムの呪いを間近に浴びたのに全然汚染されてません。どうして…」
「それよりもアイシャ様、早く手当てをっ」
「そ、そうですね」
アイシャとエリネが二人を魔法で治療する中、ウィルフレッドは立ち上がって周りを見渡しながら身構える。
「カイ、レクス、注意しろっ。あいつはまだここにいるっ」
「なんだって」
二人は急いで弓と剣を構え、ウィルフレッドは全精神を周りの警戒に集中した。熱探知やX線センサー等の類はライムをまったく検知できないが、彼自身が磨いた感覚は、森の中で移動しているライムの存在を訴えていた。
「…全然見当たらないけど、どこにいるの?」
まるで夜となったように仄暗い森を風がざわつかせ、ぼんやりとした森の影が揺らいだ。
「そこだっ!」
複雑に絡める木々の影めがけ、ウィルフレッドが投げた剣が槍の如く飛翔する。この時、影の一部が突如液体のようにぐにゃりと歪んでは剣を避け、そして地面を這って疾走し始めた。
「なっ!」
カイが叫ぶ隙を狙い、影はカイ達めがけて飛びかかった。
「――月光!」
『カアァァッ!』
白銀の輝きが突如影とカイ達の間に挟まる。それに照らされた影がカラスの奇声を上げて方向を逸らし、すぐ傍の空き地に墜落した。
「アイシャッ!」
カトーとアリスの治療をエリネに任せたアイシャが凛と前に出る。
「気を付けてください、さっきのは大して効いてないはずですっ」
四人は墜落した影と対峙する。アイシャが出した月光の光は未だ空に浮遊し、月の女神由来の光源魔法が影を照らし続ける。影はまるで光に焼かれたように煙立ち、妖しく蠢いた。
『カァッ、カアァァァ…ッ』
退魔の光に影が呻り、ドロリと溶けては形を成し、立ち上がった。
「こ、これがライム、なのかい…っ」
レクスが驚愕の声を上げる。漆黒のカラスの翼に頭、鮮血で綴ったかのような赤い目。その鳥の容貌に反して上半身は裸の人間男性みたいで腕まで生えており、下半身は鳥の脚になっていた。その奇怪な怪人の風貌に、ウィルフレッドはかつてアオトが見せた話にある悪魔を連想した。
「なるほど影を操れる訳だぜ。元の姿がこんな真っ黒な陰湿カラスだと、なぁっ!」
カイがライムに向けて弓を構えた。
『カァッ!』
ライムが叫びと共に翼を大きく広げ、影の風が吹き荒れた。
「うおっ!」「ああっ!」
怨嗟の声が鳴り響く影の風にカイやアイシャ達は思わずよろめく。渦巻く風は木の一本をなぎ倒し、倒木は月光の光に直撃してそれを消散せしめた。
「いけないっ!」『カァァッ!』
アイシャ達が体勢を立て直そうとするその隙に、月光の影響から脱したライムは再び溶けて影となった。
「ライムを止めてください!逃げる気です!」「くそっ!」
カイが急いで矢を放つが、ライムの影は容易くそれをかわし、濃い影のある森の方へと疾走していく。
「ちぃぃっ」
ウィルフレッドやレクスがすぐさま反応して走ろうとする、その時だった。
「光よ!」
ライムの行き先に強烈な光が爆ぜ、森の影がライムから遠さがり、ライムも眩い光に照らされて悶え始める。
『カァァァッ!』
「光よ!光よ!」
連続して放たれた光の玉はライムを囲むように浮遊し、それと同時に一つの袋が影へと命中した。
『カァァァーーーッ!』
袋の中の銀色の粉が飛散すると、影は悶えて再びライムの姿に戻った。
「太陽の巫女謹製の陽光の味はいかがかしら。月の明かりでなくとも中々効くものでしょう?」
「加えて魔の力を封じる月鈴草の粉も撒いた。影に化けることはもはやできまい」
「あ…ラナ様!ミーナ殿!」
森の奥から駆けつけたばかりのラナとミーナの姿がそこにあった。
「遅れてすまん。町からかなり離れた場所へと行ったのでな」
ミーナは倒れてるカトーとアリス、二人を看護するエリネにケントの方を見やる。
「我はそっちの様子を見る。ラナはアイシャ達とともにライムを。気をつけるのだぞ」
「ええ」
『カァァァッ!カァァァァァッ!』
太陽の如き眩い光に囲まれ、影なきライムはその黒き翼で自分を覆いながら苦しそうに呻る。それを見てラナは不敵に笑いながらアイシャ達の元へと合流した。
「みんな無事のようね」
「まったく、旨いタイミングで出てきますねラナ様」
「レクス様の言うとおりです。ラナちゃんが出てこなかったらライムを逃してしまうところでした」
「ほんまかっけぇよラナ様っ」
「ああ、見事な手際だ」
「ふふ、そんなにおだてても何も出ないわよ」
喜ぶウィルフレッド達にラナが微笑み返す。
「大体の状況はあそこのアリス殿やケント様を見れば察しがつくけど、まずはライムを片付けないとね」
ラナ達一同が改めて悶えるライムに向いて構えた。
『カァッ!カァ…カァァッ』
光の牢獄に囚われたライムだが、徐々に落ち着いたように苦悶の声が低い呻りへと変わり、その赤い目が明確な敵意をはらんでラナやアイシャ達を睨んだ。
「陽光じゃやはり効果は限られるわね。みんな、今の内に片付けましょうっ」
「ええっ」「おうっ。覚悟しやがれカラス野郎っ!」
アイシャやカイがライムへと呪文と弓を構え、ウィルフレッドとレクス、ラナが剣を持ってライムに止めを刺そうと駆けた。
ライムの目が怪しく輝いた。
「! みんな離れろっ!」
『カァァァァァァッ!』
異状を察したウィルフレッドが叫ぶと、ライムの禍々しい雄叫びとともにその体から影がスドンと油井の如く高く噴出し、おどろおどろしい怨嗟の声を含んだ魔力が周りを震撼させた。
「なに!?」「きゃあ!」
その衝撃にラナやアイシャ達は押し退けされ、離れたミーナとエリネ達も思わず身を伏せてしまう。
「なにごとっ?いったい何が…っ」「こ、この感覚は…っ」「キュウゥゥ…ッ!」
『カァァァッ!カァァaaaaa!』
赤き目を狂気的に震わせながらライムの声が変質する。妖しい血の色のオーラが巡り、ライムの体が膨らんで下半身が変形していく。漆黒の羽が逆立ちして体とともに禍々しい外宇宙的な質地へと変わり、目のような無地の緑の結晶が体中に浮ぶ。下半身がやがて四肢動物に似た形へと変わり、刺々しい先端をもつ尻尾を危なげに振り回す。背中の異形の翼を広げると、背筋さえ凍るおぞましい高鳴りと共にその赤い目が威圧的に光った。
『Kaaaaa!』
「なっ、こ、こいつはっ!」
カイ達が驚愕する。その異様な姿が何なのか一目で分かったからだ。ウィルフレッドが拳を握りしめた。
「変異体だ…っ」
【続く】
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