64 / 207
第八章 虚無の呪詛
虚無の呪詛 第七節
しおりを挟む ゲームセンターの後、一行は行き先が無くなってしまった。
ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。
「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」
サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。
「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」
御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。
「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」
羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。
「あの、ちょっといいですか?」
子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」
クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。
「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」
サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
それなのに、疎外感がぬぐえない。
むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。
「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」
クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。
「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」
サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。
「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」
御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。
「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」
羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。
「あの、ちょっといいですか?」
子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」
クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。
「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」
サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
それなのに、疎外感がぬぐえない。
むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。
「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」
クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
魔法少女の異世界刀匠生活
ミュート
ファンタジー
私はクアンタ。魔法少女だ。
……終わりか、だと? 自己紹介をこれ以上続けろと言われても話す事は無い。
そうだな……私は太陽系第三惑星地球の日本秋音市に居た筈が、異世界ともいうべき別の場所に飛ばされていた。
そこでリンナという少女の打つ刀に見惚れ、彼女の弟子としてこの世界で暮らす事となるのだが、色々と諸問題に巻き込まれる事になっていく。
王族の後継問題とか、突如現れる謎の魔物と呼ばれる存在と戦う為の皇国軍へ加入しろとスカウトされたり……
色々あるが、私はただ、刀を打つ為にやらねばならぬ事に従事するだけだ。
詳しくは、読めばわかる事だろう。――では。
※この作品は「小説家になろう!」様、「ノベルアップ+」様でも同様の内容で公開していきます。
※コメント等大歓迎です。何時もありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる