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第3部.リムウル 第4章
17.押し問答
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アイリーンは早足で彼の横に追いついて、自分の目線よりかなり高いところにある彼の顔を見上げながら話しかけた。
「あの、……」
何だ?と言うようにギメリックが見下ろしてくる。
トパーズの瞳に鋭く見つめられると胸がドキッとするのは、彼を恐れていた頃の名残なのだろうか。
「どうしていつもそんな不機嫌そうな顔してるの? みんなが怖がるわ」
「……地顔だ、仕方ないだろう」
かまわずどんどん先に行ってしまう彼に一生懸命ついて行きながら、アイリーンは言う。
「せめて、もう少し、あの……愛想良くしてみる、とか……できないの?」
「そんな必要はない」
「どうして。いずれあなたは、エンドルーアの王として、もっとたくさんの人と接していかなくちゃならないのに」
「何度言えばわかる。王はお前だ」
「こっちのセリフよ、何度言えばいいの? 私は、エンドルーアの王になんかなれないわ。あなたがいるのに」
「フレイヤの涙の主こそ、エンドルーアの王だ。石がお前を選んだのだ」
「そんなのおかしいわ。どうしてわからないの?
村のみんなはあなたこそ王にふさわしいと思っているのよ。
私は苦しんでいる人たちを助けたいから、石の力を私しか使えないなら、薄明宮を狂王の手から取り戻すために戦うわ。
だけど王になりたいとは思わないし、その役目を果たせるとも思えない」
ギメリックは段々、彼女と押し問答するのが面倒になってきた。
それに、人の気も知らない彼女の物言いにムッと来るものがあり、かなり面白くなかった。
彼はいきなりパッと振り返って、アイリーンを腕の中に抱き込んだ。
「きゃっ……?!」
驚いて身を引こうとするところを逆に強く引き寄せ、桜色に染まった彼女の耳に、触れんばかりに唇を寄せる。
「お前が王にならなくて済む方法がひとつだけあると言ったら?」
息がかかるほど近くで、ささやかれた低い声。
思わず身をすくめたアイリーンだったが、その答えを彼女は知っている。
「し、知ってるわ!!」
「……え?」
ギメリックの腕が緩んだ隙に、アイリーンはするりとそこから抜け出した。
そしてサッと飛び退いて、彼の手が届かない所まで離れてから言った。
「あなたと結婚することでしょ?」
「……」
「何で知ってるかって? カーラが教えてくれたのよ!」
ギメリックに意外そうな顔をさせたことが少し得意で、アイリーンは嬉々として言う。
「いいわよ、結婚しましょう!!
だって王族同士の縁組みは、昔から行なわれてきたことだもの。
本当は私、リムウルに嫁ぐはずだったみたいだけど、エンドルーアでもかまわないはずよ、お父様はきっと許してくださるわ」
ギメリックはガックリと肩を落とした。
“……わかってない。こいつは絶対、わかってない……”
「あの、……」
何だ?と言うようにギメリックが見下ろしてくる。
トパーズの瞳に鋭く見つめられると胸がドキッとするのは、彼を恐れていた頃の名残なのだろうか。
「どうしていつもそんな不機嫌そうな顔してるの? みんなが怖がるわ」
「……地顔だ、仕方ないだろう」
かまわずどんどん先に行ってしまう彼に一生懸命ついて行きながら、アイリーンは言う。
「せめて、もう少し、あの……愛想良くしてみる、とか……できないの?」
「そんな必要はない」
「どうして。いずれあなたは、エンドルーアの王として、もっとたくさんの人と接していかなくちゃならないのに」
「何度言えばわかる。王はお前だ」
「こっちのセリフよ、何度言えばいいの? 私は、エンドルーアの王になんかなれないわ。あなたがいるのに」
「フレイヤの涙の主こそ、エンドルーアの王だ。石がお前を選んだのだ」
「そんなのおかしいわ。どうしてわからないの?
村のみんなはあなたこそ王にふさわしいと思っているのよ。
私は苦しんでいる人たちを助けたいから、石の力を私しか使えないなら、薄明宮を狂王の手から取り戻すために戦うわ。
だけど王になりたいとは思わないし、その役目を果たせるとも思えない」
ギメリックは段々、彼女と押し問答するのが面倒になってきた。
それに、人の気も知らない彼女の物言いにムッと来るものがあり、かなり面白くなかった。
彼はいきなりパッと振り返って、アイリーンを腕の中に抱き込んだ。
「きゃっ……?!」
驚いて身を引こうとするところを逆に強く引き寄せ、桜色に染まった彼女の耳に、触れんばかりに唇を寄せる。
「お前が王にならなくて済む方法がひとつだけあると言ったら?」
息がかかるほど近くで、ささやかれた低い声。
思わず身をすくめたアイリーンだったが、その答えを彼女は知っている。
「し、知ってるわ!!」
「……え?」
ギメリックの腕が緩んだ隙に、アイリーンはするりとそこから抜け出した。
そしてサッと飛び退いて、彼の手が届かない所まで離れてから言った。
「あなたと結婚することでしょ?」
「……」
「何で知ってるかって? カーラが教えてくれたのよ!」
ギメリックに意外そうな顔をさせたことが少し得意で、アイリーンは嬉々として言う。
「いいわよ、結婚しましょう!!
だって王族同士の縁組みは、昔から行なわれてきたことだもの。
本当は私、リムウルに嫁ぐはずだったみたいだけど、エンドルーアでもかまわないはずよ、お父様はきっと許してくださるわ」
ギメリックはガックリと肩を落とした。
“……わかってない。こいつは絶対、わかってない……”
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