薄明宮の奪還

ria

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第3部.リムウル 第4章

7.早朝

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明け方、目覚めてみると小屋の中にギメリックはいなかった。

けれどもう、アイリーンは不安には思わなかった。

昨夜の彼が、今まで感じさせたことのない落ち着きと、安らいだ雰囲気をまとっていたからだ。

それに、ずっとそばにいると、約束してくれたのだから……。


それにしても、空腹で動けなくなるなんて……と、アイリーンは恥ずかしかった。

四日も食べていなかったのだから当然だと、ギメリックは言ってくれたのだけれど。

また口移しされるかと思って身構えてしまったが、彼は距離を置きつつそれでも優しく世話を焼いてくれた。


彼の優しさが嬉しくて、魂に染み通るような喜びを覚えると同時に、心の奥底ではティレルを想って涙を流し続ける自分がいる。

とても複雑な気分ではあったが、今は考えても仕方ない、自分に出来ることをしよう、とアイリーンは思った。

体力と魔力が回復したら……この村で、魔力を使うすべを学ぶのだ。


体は随分、楽になっていた。

アイリーンはギメリックを探しに行こうと、小屋を出て泉へと向かった。

夏の早朝、さわやかな空気が心地よい。


昨夜二人で食事をした後、アイリーンは勧められるままベッドに横になり……結局また眠ってしまったのだ。

彼の方がむしろ、眠りも休息も、足りていないだろうと思うのに……

彼はアイリーンが寝入ってしまうまで、ベッドのそばについていてくれた。

その後、自分も休んでくれたのだろうか?


姿が見える前から、それとわかる魔力の気配。

泉のほとりのオークの大木にもたれ、ギメリックは座っていた。

“眠っているのかしら……?”

もしもそうなら、起こしたくはない。

アイリーンはもう気付いていた。

彼が横にならずに眠るのは……その方が慣れていて、気が休まるから。

一人で旅する間、常に敵を警戒し、きっと真に安らいで眠ったことなどないのだろう。

この村の中なら安全……せめてここにいるときぐらいは、ゆっくり休ませてあげたい。


アイリーンは昨日カーラと来た時から気になっていた、すぐそばにある洞窟を探検してみることにした。

洞窟といっても入り口はとてつもなく高く大きく、明るい日差しがかなり奥まで差し込んでいる。

中は、乾いた砂の上にところどころ岩が転がっているだけの、ガランとした空間だった。

しかし奥は結構、深そうだ。
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