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第3部.リムウル 第3章
25.次期国王
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傲然と言い放ち、くるりと踵を返してギメリックが部屋を出て行こうとした時。
“ギメリック!!……どこ?!”
すくみ上がっていた魔力保持者たちの心に、いきなり大音声で、アイリーンの声が響き渡った。
「わっ……?!」
驚いて飛び上がり、耳を塞ぐ仕草をする者もいる中、ギメリックは即座に心話を返し、外へ飛び出した。
“どうした?!”
“どこにいるの?……帰って来て……頭……痛い……”
悲鳴のようなアイリーンの叫び声は、次第に弱々しくなり途切れ途切れになっていく。
“心話を使ったりするからだ! すぐに行くから、しばらく魔力は使うな!”
走り去ってしまったギメリックを見送り、皆と共にあぜんとしていたポルは真っ先に我に返った。
“アイリーン! 何かあったの?!”
そう心話を送りながら戸口へ向かう。
「ポル! やめなさい!!」
バタンと目の前で閉められた扉に、ポルは勢い余って顔から突っ込んだ。
「……っ痛ぇ~~っ……何すんだよっ、ねぇちゃん!!」
赤くなった鼻を押さえ、涙の溜まった目を怒らせて、ポルは振り向いた。
「どうせあんたが行っても、結界の中に入れないでしょう?」
ここに来る途中で、ギメリックは結界を解いてきたに違いない、と思いながらもカーラはそう言ってポルをいさめた。
「だったら、ねぇちゃんが見に行ってくれよ! 心配じゃないか!!」
カーラは少し首を傾げ、考えながら言った。
「大丈夫、敵に結界を破られた気配はないわ。
ほら、あんたにもわかるでしょ?
……しばらく、待ってみましょう。
たぶん、彼を引き止められるのは彼女だけだわ」
ポルの可愛らしいほっぺたが、プッと膨らんだ。
「いいじゃないか! あんなやついなくても!……みんなもそう思うだろ?!」
ポルの問いかけに、村人たちは皆、困惑した様子で顔を見合わす。
カーラは心配そうに、美しいハシバミ色の瞳を曇らせた。
「……彼はね、私たちが準備を整えてリムウル軍の庇護下に入るまで、危険を冒してまた一人でこの村を守るつもりなのよ。
……でもダメ、やっぱり彼がいなくちゃ。
彼の黒髪とトパーズの瞳は、生まれた時から彼が次期国王だと人々に知らしめてきたわ。
だから狂王もあえてクーデターを公にしようとしなかった。
ギメリックほどの適任者を排して王位を奪ったとあれば、国内で抵抗勢力が生まれるに違いないもの。
アイリーン様を王に、と彼は言うけど……本物のフレイヤの涙と共に、彼が姿を見せればエンドルーア内部でもクレイヴとティレルを疑う者も出てくるはず、それこそが最大の武器になるのに……」
「そうだ、おれたちの王はギメリック様だ。
フレイヤの涙がエンドルーアの王位に必要不可欠なものだと言うなら、アイリーン様にギメリック様の妃になっていただくのがいいと思う」
ゲイルの言葉に、ポルはますますほっぺたを膨らませたが、カーラは静かにうなずいた。
「そう、アイリーン様は女性よ。いつ、不測の事態が起きて、魔力を失うかわからない……
その時もしもギメリックがいなければ、血統からして自動的に石はクレイヴのものになってしまうわ。
それだけは許せない。……そうでしょ?
だから私は彼に、この村にとどまって欲しい……命の危険を冒してまで一人戦うより、私たちとアイリーン様のそばにいて、一緒に戦って欲しいわ。
誰が王になるか、そんなことは後で決めればいいことよ……」
“ギメリック!!……どこ?!”
すくみ上がっていた魔力保持者たちの心に、いきなり大音声で、アイリーンの声が響き渡った。
「わっ……?!」
驚いて飛び上がり、耳を塞ぐ仕草をする者もいる中、ギメリックは即座に心話を返し、外へ飛び出した。
“どうした?!”
“どこにいるの?……帰って来て……頭……痛い……”
悲鳴のようなアイリーンの叫び声は、次第に弱々しくなり途切れ途切れになっていく。
“心話を使ったりするからだ! すぐに行くから、しばらく魔力は使うな!”
走り去ってしまったギメリックを見送り、皆と共にあぜんとしていたポルは真っ先に我に返った。
“アイリーン! 何かあったの?!”
そう心話を送りながら戸口へ向かう。
「ポル! やめなさい!!」
バタンと目の前で閉められた扉に、ポルは勢い余って顔から突っ込んだ。
「……っ痛ぇ~~っ……何すんだよっ、ねぇちゃん!!」
赤くなった鼻を押さえ、涙の溜まった目を怒らせて、ポルは振り向いた。
「どうせあんたが行っても、結界の中に入れないでしょう?」
ここに来る途中で、ギメリックは結界を解いてきたに違いない、と思いながらもカーラはそう言ってポルをいさめた。
「だったら、ねぇちゃんが見に行ってくれよ! 心配じゃないか!!」
カーラは少し首を傾げ、考えながら言った。
「大丈夫、敵に結界を破られた気配はないわ。
ほら、あんたにもわかるでしょ?
……しばらく、待ってみましょう。
たぶん、彼を引き止められるのは彼女だけだわ」
ポルの可愛らしいほっぺたが、プッと膨らんだ。
「いいじゃないか! あんなやついなくても!……みんなもそう思うだろ?!」
ポルの問いかけに、村人たちは皆、困惑した様子で顔を見合わす。
カーラは心配そうに、美しいハシバミ色の瞳を曇らせた。
「……彼はね、私たちが準備を整えてリムウル軍の庇護下に入るまで、危険を冒してまた一人でこの村を守るつもりなのよ。
……でもダメ、やっぱり彼がいなくちゃ。
彼の黒髪とトパーズの瞳は、生まれた時から彼が次期国王だと人々に知らしめてきたわ。
だから狂王もあえてクーデターを公にしようとしなかった。
ギメリックほどの適任者を排して王位を奪ったとあれば、国内で抵抗勢力が生まれるに違いないもの。
アイリーン様を王に、と彼は言うけど……本物のフレイヤの涙と共に、彼が姿を見せればエンドルーア内部でもクレイヴとティレルを疑う者も出てくるはず、それこそが最大の武器になるのに……」
「そうだ、おれたちの王はギメリック様だ。
フレイヤの涙がエンドルーアの王位に必要不可欠なものだと言うなら、アイリーン様にギメリック様の妃になっていただくのがいいと思う」
ゲイルの言葉に、ポルはますますほっぺたを膨らませたが、カーラは静かにうなずいた。
「そう、アイリーン様は女性よ。いつ、不測の事態が起きて、魔力を失うかわからない……
その時もしもギメリックがいなければ、血統からして自動的に石はクレイヴのものになってしまうわ。
それだけは許せない。……そうでしょ?
だから私は彼に、この村にとどまって欲しい……命の危険を冒してまで一人戦うより、私たちとアイリーン様のそばにいて、一緒に戦って欲しいわ。
誰が王になるか、そんなことは後で決めればいいことよ……」
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