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第3部.リムウル 第3章
23.カーラの演説
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「……カーラ?」
名前を呼ばれ、カーラはハッと我に返った。ゲイルが心配そうに自分を見つめている。
「あ、ごめんなさい……ぼんやりしちゃって」
見ると村人たちはまた、口々にあれやこれやと自分の意見を言い合い、収拾のつかない様相を呈していた。
カーラはキッと彼らを見据え、息を吸い込んだ。
「ねぇ、みんな! 聞いて!!」
張り上げられた声に、皆が振り向く。
ヴァイオレットに特別に目をかけられていたことや、ポルと彼女が村でも一番の魔力を誇る姉弟であることなどにより、カーラは村の中で一目置かれる存在だった。
普段はことさら強く我を通すようなことはしない彼女だったが、その存在感は皆が認めていた。
「みんな、帰りたくないの? 美しいリーン・ハイアットへ……あたしは帰りたい、一刻も早く!
そして両親と兄弟の、ちゃんとしたお墓を建ててあげたい。
フレイヤの涙が見つかったのよ、今、その夢は手の届くところにあるわ。
でもあたしはそのために何をしたかしら?
ギメリックとヴァイオレット様が、薄明宮を取り戻してくれるのをじっと待っていただけ……
みんなも、そうでしょう?
もうわかっていると思うけど、悪いのは邪な野心を持った狂王で、ギメリックは陥れられただけ、一番の被害者だわ。
なのに、ヴァイオレット様が亡くなり、あたしたちがこの村で安穏と暮らしている間も、彼はフレイヤの涙を探してたった一人で戦っていたのよ。
今、彼にはあたしたちの力が必要なの。
だから……戦いましょう!
アイリーン様を助けて、自分たちの手で、故郷を取り戻すのよ!」
水を打ったように、その場の空気が静まった。
誰もが、ギメリックが16歳になれば彼がクレイヴを討ち果たし、自分たちも故郷へ帰れると思っていた。
だが、ちょうどその頃、ポルとカーラがヴァイオレットの死を感知し、知らせを受けた村人たちは皆一様にショックを受けた。
しかしなぜそんなことになってしまったのか、ギメリックはどうしているのか……。何もわからなかった。
それから一週間ほど経った後、ギメリックはひっそりと長老の元を訪れ、フレイヤの涙を探しに行くと言い残して消息を絶った。
一年経ち、二年が経ち、三年が過ぎても、何の音沙汰もなかった。
不安な思いで待ち続ける間に、村人たちは次第に、この薄幸の王子の身を案じる気持ちになっていたのだ。
まだ少年だった彼に些細なきっかけで憎しみの感情を投げつけ、ヴァイオレットと彼に村を出て行かせるきっかけを作った者さえ、今ではそれを後悔していた。
名前を呼ばれ、カーラはハッと我に返った。ゲイルが心配そうに自分を見つめている。
「あ、ごめんなさい……ぼんやりしちゃって」
見ると村人たちはまた、口々にあれやこれやと自分の意見を言い合い、収拾のつかない様相を呈していた。
カーラはキッと彼らを見据え、息を吸い込んだ。
「ねぇ、みんな! 聞いて!!」
張り上げられた声に、皆が振り向く。
ヴァイオレットに特別に目をかけられていたことや、ポルと彼女が村でも一番の魔力を誇る姉弟であることなどにより、カーラは村の中で一目置かれる存在だった。
普段はことさら強く我を通すようなことはしない彼女だったが、その存在感は皆が認めていた。
「みんな、帰りたくないの? 美しいリーン・ハイアットへ……あたしは帰りたい、一刻も早く!
そして両親と兄弟の、ちゃんとしたお墓を建ててあげたい。
フレイヤの涙が見つかったのよ、今、その夢は手の届くところにあるわ。
でもあたしはそのために何をしたかしら?
ギメリックとヴァイオレット様が、薄明宮を取り戻してくれるのをじっと待っていただけ……
みんなも、そうでしょう?
もうわかっていると思うけど、悪いのは邪な野心を持った狂王で、ギメリックは陥れられただけ、一番の被害者だわ。
なのに、ヴァイオレット様が亡くなり、あたしたちがこの村で安穏と暮らしている間も、彼はフレイヤの涙を探してたった一人で戦っていたのよ。
今、彼にはあたしたちの力が必要なの。
だから……戦いましょう!
アイリーン様を助けて、自分たちの手で、故郷を取り戻すのよ!」
水を打ったように、その場の空気が静まった。
誰もが、ギメリックが16歳になれば彼がクレイヴを討ち果たし、自分たちも故郷へ帰れると思っていた。
だが、ちょうどその頃、ポルとカーラがヴァイオレットの死を感知し、知らせを受けた村人たちは皆一様にショックを受けた。
しかしなぜそんなことになってしまったのか、ギメリックはどうしているのか……。何もわからなかった。
それから一週間ほど経った後、ギメリックはひっそりと長老の元を訪れ、フレイヤの涙を探しに行くと言い残して消息を絶った。
一年経ち、二年が経ち、三年が過ぎても、何の音沙汰もなかった。
不安な思いで待ち続ける間に、村人たちは次第に、この薄幸の王子の身を案じる気持ちになっていたのだ。
まだ少年だった彼に些細なきっかけで憎しみの感情を投げつけ、ヴァイオレットと彼に村を出て行かせるきっかけを作った者さえ、今ではそれを後悔していた。
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