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第3部.リムウル 第3章
20.カーラの初恋
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突然の問いかけに、カーラは戸惑い、一瞬、動揺したようだった。
しかしすぐに切り返してきた。
“……バカねぇ。怖くて長くは一緒にいられないような魔力の持ち主と、結婚したいと思うわけないでしょ。
それに彼がこの村を出て行ったとき、彼は11であたしはまだ10歳だったのよ。
好きとか嫌いとか言ってる暇なんかなかったわ、あんたのオムツを取り替えるのに忙しくてね!”
“……!! 何だよーっ、ねぇちゃんまで、おれをガキ扱いすんのかよっ!!”
“仕方ないでしょ、まだガキなんだから。ガキのくせに変なこと勘ぐるのはよしなさい”
“ちぇっ……!!”
再び黙り込んだポルに読まれないよう、カーラは心をしっかり閉ざし、自分の中で揺れ動く感情に意識を向けた。
“あぁ、びっくりした……。突然、何を言い出すかと思えば……”
しかし……ポルに指摘されたことを改めて考えてみて、カーラは思い当たった。
成長したギメリックがアイリーンと共に自分の前に姿を現して以来、何となく心が沈み込んでいる理由を……。
今まで、彼への想いが淡い恋心であると自覚するには、あまりにも日々は忙し過ぎ、自分も幼すぎたのだ……。
たった8歳で経験した、恐ろしい殺戮の嵐……。
自分たちを逃がすために敵に立ち向かい、殺された両親……。
追われながらの過酷な旅、そしてこの森にたどり着き、休む間もなく始まった、食べて行くための必死の生活。
両親と兄弟を失った悲しみに耐え、当時まだ乳飲み子だったポルを育てることに懸命で、初恋などという甘い気持ちに浸る心の余裕などどこにもなかった。
“そっか……なぁんだ、そうだったんだ。
……自覚すると同時に失恋だなんて、シャレにならないわね”
ギメリックとアイリーンが、お互いに命がけで相手を守ろうとする気持ちを抱いていることは、今回のこと一つ見ても十分にわかることだった。
彼女が生死の境をさまよっているからとは言え、ギメリックがアイリーンをまるで壊れ物を扱うようにしている様子は、彼が何者にも代え難く彼女のことを想っている証拠と見えた。
“でもこれで、かえって良かったのかも知れない……”
普通に接してくれていると言っても、彼は王子で自分はただの一般人。
恋愛や結婚など、身分違いもいいところ、恐れ多いことだった。
そこでカーラは、どうやらアイリーンのことが気になるらしい弟のことを思いやった。
“私のことより、ポル、あんたこそ、諦めた方がいいわよ”
“!!……な、な……”
今度はポルが動揺する番だった。
“何でだよ……まさかあいつ、二人っきりで彼女によからぬことを……”
“黙んなさい、このマセガキ!! 皇太子殿下に向かって、“あいつ”とは何ですか!”
「てっ……!!」
魔力でピンッと弾かれたおでこを押さえ、ポルは叫んだ。
「ちくしょーっ! ねぇちゃんだって、タメ口じゃんかよぉ!!」
しかしすぐに切り返してきた。
“……バカねぇ。怖くて長くは一緒にいられないような魔力の持ち主と、結婚したいと思うわけないでしょ。
それに彼がこの村を出て行ったとき、彼は11であたしはまだ10歳だったのよ。
好きとか嫌いとか言ってる暇なんかなかったわ、あんたのオムツを取り替えるのに忙しくてね!”
“……!! 何だよーっ、ねぇちゃんまで、おれをガキ扱いすんのかよっ!!”
“仕方ないでしょ、まだガキなんだから。ガキのくせに変なこと勘ぐるのはよしなさい”
“ちぇっ……!!”
再び黙り込んだポルに読まれないよう、カーラは心をしっかり閉ざし、自分の中で揺れ動く感情に意識を向けた。
“あぁ、びっくりした……。突然、何を言い出すかと思えば……”
しかし……ポルに指摘されたことを改めて考えてみて、カーラは思い当たった。
成長したギメリックがアイリーンと共に自分の前に姿を現して以来、何となく心が沈み込んでいる理由を……。
今まで、彼への想いが淡い恋心であると自覚するには、あまりにも日々は忙し過ぎ、自分も幼すぎたのだ……。
たった8歳で経験した、恐ろしい殺戮の嵐……。
自分たちを逃がすために敵に立ち向かい、殺された両親……。
追われながらの過酷な旅、そしてこの森にたどり着き、休む間もなく始まった、食べて行くための必死の生活。
両親と兄弟を失った悲しみに耐え、当時まだ乳飲み子だったポルを育てることに懸命で、初恋などという甘い気持ちに浸る心の余裕などどこにもなかった。
“そっか……なぁんだ、そうだったんだ。
……自覚すると同時に失恋だなんて、シャレにならないわね”
ギメリックとアイリーンが、お互いに命がけで相手を守ろうとする気持ちを抱いていることは、今回のこと一つ見ても十分にわかることだった。
彼女が生死の境をさまよっているからとは言え、ギメリックがアイリーンをまるで壊れ物を扱うようにしている様子は、彼が何者にも代え難く彼女のことを想っている証拠と見えた。
“でもこれで、かえって良かったのかも知れない……”
普通に接してくれていると言っても、彼は王子で自分はただの一般人。
恋愛や結婚など、身分違いもいいところ、恐れ多いことだった。
そこでカーラは、どうやらアイリーンのことが気になるらしい弟のことを思いやった。
“私のことより、ポル、あんたこそ、諦めた方がいいわよ”
“!!……な、な……”
今度はポルが動揺する番だった。
“何でだよ……まさかあいつ、二人っきりで彼女によからぬことを……”
“黙んなさい、このマセガキ!! 皇太子殿下に向かって、“あいつ”とは何ですか!”
「てっ……!!」
魔力でピンッと弾かれたおでこを押さえ、ポルは叫んだ。
「ちくしょーっ! ねぇちゃんだって、タメ口じゃんかよぉ!!」
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