薄明宮の奪還

ria

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第3部.リムウル 第3章

19.伝言

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村の者たちに、今回のことを当事者の口から説明してやってくれと、先ほどから長老が自分を呼んでいることにはもちろん気付いていた。

しかし自分にだって、人に説明できるほど、事情を飲み込めている訳ではない。

アイリーンがアドニア国の末の姫、つまり元エンドルーア王の妹の娘であることは、ギメリックから聞かされた。

彼女が今や石の主であるということも……。

彼女に石を託したのがヴァイオレットであることも。

けれどそれ以上詳しくは聞く暇もなかった。

なぜそんないきさつになったのかとか、これからどうするのかとか、自分ですら疑問に思うことを村人たちに尋ねられても答えられない。

「だからさぁ、ねぇちゃんも一緒の方がいいだろうと思って呼びに来たんじゃないか」

「嘘をつくな、嘘を!!」

ゲイルがコブシでポルの頭をぐりぐりやりながら、片方の手でぐわしっ!!と肩を抱いて村の方へと無理矢理向かわせようとした時。


「あんたたち、どうしたの? こんなところで……」

ふいに声がしたと思ったら、突然、降ってわいたように、何もない空間からひょいとカーラが出てきた。

「ねぇちゃん!!……彼女はどんな具合? 助かりそう?」

飛びつくようにカーラに近寄って、ポルが尋ねる。

「ええ……」

と言いながらも瞳を曇らせるカーラを、ポルは不安そうに見上げた。

「おれも見舞いに行くよ、彼女に会わせてよ!!」

「……ここに残っていた結界、彼が張り直したみたいね。

 だったら無理よ、あたし以外、入れないと思うわ」

「なんで結界なんか張るんだよ!」

「彼女の容態がね……薬草の香で随分落ち着いたんだけど、目を覚まして、ちゃんと飲み薬も摂らないとまだ完全に助かるとは限らないみたい。

 ……彼、あまりにも彼女のことが心配で、他のことに心を煩わされたくないのよ、きっと……」

「何だよそれ! おれたちだって心配してるのに!! なぁゲイル!!」

「まぁな。だけど、おれらが行っても何もできないだろうし……だったら、邪魔しない方がいいんじゃないか?」

「……そりゃー、そうだけど……」

議論はもう終わり、とばかりに、カーラが先に立って歩き出す。

「それより、彼からの伝言をみんなに伝えなくちゃ。あんたたちも来て」

「ああ、長老も呼んでたしな。ポル、来いよ、行くぞ!」


不機嫌そうに黙り込み、しぶしぶ二人の後について歩き始めたポルが、カーラに心話で呼びかけた。

“なぁ、ねぇちゃん……”

“……何?”

どうして心話など使うのかと訝しがる様子で、彼女は振り向いた。

“自分より魔力の強い人としか結婚したくないって言ってたけど……もしかしてあいつのことが好きなのか?”

“えっ……”
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