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第3部.リムウル 第3章
6.虚無
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……落ちて行く。
深い、深い闇の中をどこまでも。
永遠の虚無に通じる暗黒の穴、そこに引き込まれる悪夢を、何度見たことだろう……。
それはエンドルーア王家の嫡男に生まれた者の宿命だった。
女神フレイヤがこの地を去るとき、人々のために一つだけ懸念したこと……。
神代の時代に封印された人を喰う魔物を結界の中に閉じ込めておくためには、定期的に、封印のメンテナンスを行わなければならない。
かつて人間と共にこの地を歩んでいた神々は、やがて人間たちにこの地をゆずり、大きな美しい金の船に乗って、西方の彼方へと去って行った。
その時、人々の願いに応えこの地に残ったのが女神フレイヤだった。
人間から見れば永遠とも言えるほど長命な、神々の一人であるフレイヤがいるかぎり、封印は安泰と思えた。
しかし人の世に起こった争いのため、愛する夫と息子を失ったフレイヤは、恐ろしい魔女と化して7日7晩荒れ狂った。
大地は揺れ、雷が鳴り響き、土砂降りの雨が降り続いて、いたるところで川や湖が氾濫した。
女神の娘アリエルは、地震や洪水で家族を失い、恐怖と不安に苛まれる人々の嘆きに胸を痛めた。
このままでは人や生き物がみな死に絶えてしまうと考えた彼女は、母に祈りを捧げながら、湖に入水した。
人の魂が天に還っていくまでのわずかな合間に、アリエルは女神の心に触れ、それを鎮めた。
遠い西方の地にいた神々は荒れ狂う天地の異変を察知し、この地に向かっていた。
アリエルの魂がまさに天に旅立とうとするとき、神々は力を合わせてそれを止め、彼女を生き返らせた。
そして、この地を去る女神の代わりに、彼女の血筋に封印のメンテナンスを託したのだった。
しかし神々の血を受け継ぐとはいえ、人間の持つ魔力には限界があり、封印を完全にすることはできない。
そのため神々はそのときフレイヤがこぼした涙を宝石に変え、魔力の増幅器として、アリエルに与えた。
魔力を持つ者が石に込められた力を使うとき、その魔力は天地を支配し、この世界に存在するありとあらゆる力を凌駕すると言われたが……それはもはや古の話。
時が移り、一族の中の神々の血が薄れるにつれ、石の力はむしろそれを持つ者の重荷となっていった。
それでも……石を手に入れ、この地で一番の魔力を手中にしたいと望む愚か者も、時には現れたのだ……。
「返しなさい、ギメリック……!!」
振り返ると、血まみれになった父がいた。
「父上……!!」
「一人でそれを扱うには、お前はまだ幼すぎると言ったはずだ……さぁ、どこへやった? 石を、ここへ……」
血に濡れた手を差し出してくる父から一歩身を引いて、ギメリックは歯を食いしばった。
「……こんな子供だましに俺がのると思うのか……」
父の姿をした“それ”が叫ぶ。
「お前が石を持ち出しさえしなければ、私も皆も、こんな目に遭わずに済んだのだぞ!!」
「……黙れ!! 全ては、お前が仕組んだことではないか、クレイヴ!!」
深い、深い闇の中をどこまでも。
永遠の虚無に通じる暗黒の穴、そこに引き込まれる悪夢を、何度見たことだろう……。
それはエンドルーア王家の嫡男に生まれた者の宿命だった。
女神フレイヤがこの地を去るとき、人々のために一つだけ懸念したこと……。
神代の時代に封印された人を喰う魔物を結界の中に閉じ込めておくためには、定期的に、封印のメンテナンスを行わなければならない。
かつて人間と共にこの地を歩んでいた神々は、やがて人間たちにこの地をゆずり、大きな美しい金の船に乗って、西方の彼方へと去って行った。
その時、人々の願いに応えこの地に残ったのが女神フレイヤだった。
人間から見れば永遠とも言えるほど長命な、神々の一人であるフレイヤがいるかぎり、封印は安泰と思えた。
しかし人の世に起こった争いのため、愛する夫と息子を失ったフレイヤは、恐ろしい魔女と化して7日7晩荒れ狂った。
大地は揺れ、雷が鳴り響き、土砂降りの雨が降り続いて、いたるところで川や湖が氾濫した。
女神の娘アリエルは、地震や洪水で家族を失い、恐怖と不安に苛まれる人々の嘆きに胸を痛めた。
このままでは人や生き物がみな死に絶えてしまうと考えた彼女は、母に祈りを捧げながら、湖に入水した。
人の魂が天に還っていくまでのわずかな合間に、アリエルは女神の心に触れ、それを鎮めた。
遠い西方の地にいた神々は荒れ狂う天地の異変を察知し、この地に向かっていた。
アリエルの魂がまさに天に旅立とうとするとき、神々は力を合わせてそれを止め、彼女を生き返らせた。
そして、この地を去る女神の代わりに、彼女の血筋に封印のメンテナンスを託したのだった。
しかし神々の血を受け継ぐとはいえ、人間の持つ魔力には限界があり、封印を完全にすることはできない。
そのため神々はそのときフレイヤがこぼした涙を宝石に変え、魔力の増幅器として、アリエルに与えた。
魔力を持つ者が石に込められた力を使うとき、その魔力は天地を支配し、この世界に存在するありとあらゆる力を凌駕すると言われたが……それはもはや古の話。
時が移り、一族の中の神々の血が薄れるにつれ、石の力はむしろそれを持つ者の重荷となっていった。
それでも……石を手に入れ、この地で一番の魔力を手中にしたいと望む愚か者も、時には現れたのだ……。
「返しなさい、ギメリック……!!」
振り返ると、血まみれになった父がいた。
「父上……!!」
「一人でそれを扱うには、お前はまだ幼すぎると言ったはずだ……さぁ、どこへやった? 石を、ここへ……」
血に濡れた手を差し出してくる父から一歩身を引いて、ギメリックは歯を食いしばった。
「……こんな子供だましに俺がのると思うのか……」
父の姿をした“それ”が叫ぶ。
「お前が石を持ち出しさえしなければ、私も皆も、こんな目に遭わずに済んだのだぞ!!」
「……黙れ!! 全ては、お前が仕組んだことではないか、クレイヴ!!」
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