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第3部.リムウル 第1章
19.華炎鳥
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ギメリックが意識していたのは、彼女と自分のいる場所があまりにもかけ離れているということだった。
まばゆい光の中にいる彼女と、閉ざされた闇の中にいる自分……。
“……それがどうした。何もかもどうでもいい……。
所詮俺にはもう、何を望む資格もないのだ。
望みと言えばただ一つ、課せられた使命を果たし、ゆっくり眠りたい……それだけだ”
彼は自分が踏み込んでいくことでその光景が壊れてしまうのを恐れ、長い間そこに立っていた。
しかし彼女が真実を知れば……あの笑顔は永遠に失われてしまうのだろうか。
自分と違って彼女に罪はないが、少なくとも自分の苦悩の一端を、彼女に背負わせることになるのだ……。
いや、ティレルのことに限って言えば、むしろ自分より何倍も苦しむことになる。
彼女はティレルを愛しているのだから……。
ギメリックがそう思ったとき、彼女のそばに、どこからかやってきた大きな赤い鳥が近づくのが見えた。
彼は微かに眉をひそめ、次の瞬間、腰から短剣を引き抜くと、静かに足を踏み出した。
“なんて綺麗なの……! おいで、こっちへ来て、その羽根を良く見せて”
見たこともないほど美しいその鳥に目を見張り、アイリーンは夢中になって心で呼びかけた。
差しのばした手の先を突然、何かが鋭く横切った。
鳥は驚いて一声鳴くと飛び立っていった。
集まっていた小鳥や小動物もいっせいに逃げ出していく。
アイリーンが呆然としていると、ギメリックがやってきて、どうやら彼が投げたらしい短剣を拾った。
「……ギメリック! 何するのよ?」
「あの鳥は華炎鳥と言ってな。焼いて食うとうまい」
「なっ……」
怒りの表情を見せるアイリーンに目もくれず、ギメリックは馬の手綱を解きながらそっけなく言った。
「自分で食う気がないなら、むやみに人に慣らすな」
“羽根は貴族どもの華美な衣装の飾りになる。
庶民も貴族も、好んで狩る鳥だ。
人に慣れればそれだけ早く命を落とすことになる”
アイリーンは彼の真意を読み取り、自分を恥じた。
「帰るぞ。もう一人で乗れるな?」
そう言ってアイリーンの馬の手綱を投げてよこす彼の顔には、何の表情も浮かんでいない。
アイリーンは馬に乗ろうと背中を向けたギメリックを見つめ、自分の中に湧き起こってきた、正体のつかめないおののきに震えながら、叫ぶように言った。
「あなたは、わけもなく生き物の命を奪うような人じゃない……
でもそれなら、ティレルを殺すと言ったのはなぜなの?」
まばゆい光の中にいる彼女と、閉ざされた闇の中にいる自分……。
“……それがどうした。何もかもどうでもいい……。
所詮俺にはもう、何を望む資格もないのだ。
望みと言えばただ一つ、課せられた使命を果たし、ゆっくり眠りたい……それだけだ”
彼は自分が踏み込んでいくことでその光景が壊れてしまうのを恐れ、長い間そこに立っていた。
しかし彼女が真実を知れば……あの笑顔は永遠に失われてしまうのだろうか。
自分と違って彼女に罪はないが、少なくとも自分の苦悩の一端を、彼女に背負わせることになるのだ……。
いや、ティレルのことに限って言えば、むしろ自分より何倍も苦しむことになる。
彼女はティレルを愛しているのだから……。
ギメリックがそう思ったとき、彼女のそばに、どこからかやってきた大きな赤い鳥が近づくのが見えた。
彼は微かに眉をひそめ、次の瞬間、腰から短剣を引き抜くと、静かに足を踏み出した。
“なんて綺麗なの……! おいで、こっちへ来て、その羽根を良く見せて”
見たこともないほど美しいその鳥に目を見張り、アイリーンは夢中になって心で呼びかけた。
差しのばした手の先を突然、何かが鋭く横切った。
鳥は驚いて一声鳴くと飛び立っていった。
集まっていた小鳥や小動物もいっせいに逃げ出していく。
アイリーンが呆然としていると、ギメリックがやってきて、どうやら彼が投げたらしい短剣を拾った。
「……ギメリック! 何するのよ?」
「あの鳥は華炎鳥と言ってな。焼いて食うとうまい」
「なっ……」
怒りの表情を見せるアイリーンに目もくれず、ギメリックは馬の手綱を解きながらそっけなく言った。
「自分で食う気がないなら、むやみに人に慣らすな」
“羽根は貴族どもの華美な衣装の飾りになる。
庶民も貴族も、好んで狩る鳥だ。
人に慣れればそれだけ早く命を落とすことになる”
アイリーンは彼の真意を読み取り、自分を恥じた。
「帰るぞ。もう一人で乗れるな?」
そう言ってアイリーンの馬の手綱を投げてよこす彼の顔には、何の表情も浮かんでいない。
アイリーンは馬に乗ろうと背中を向けたギメリックを見つめ、自分の中に湧き起こってきた、正体のつかめないおののきに震えながら、叫ぶように言った。
「あなたは、わけもなく生き物の命を奪うような人じゃない……
でもそれなら、ティレルを殺すと言ったのはなぜなの?」
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