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第3部.リムウル 第1章
3.礼拝
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泉の向こう岸に回って少し行くと、岩肌の露出した崖がそびえていて、そこに大きな空洞が口を開けている。
あまりに大きいので、今日のように良く晴れた日なら、少し中に入ったくらいまでは十分な明るさがある。
その、外の明かりが届く範囲の場所に、小さな石碑が立っていた。
カーラはその前にひざまづいて頭を垂れた。
ポルもそれにならうが、姉ほど熱心な様子ではない。
しかしカーラは気にしなかった。
もともと、自分が気休めにしているだけで、特に意味のあることではないのだ。
昔、この場所で、エンドルーアを再興した王女が幼少の頃、白竜に育てられたという伝説があると聞き、何となく祈りに来るのが日課になってしまった。
エンドルーアを逃れてこの村に隠れ住んでいる自分たちが、一日も早くエンドルーアに帰れる日が来ることを願って、カーラは毎朝、ここに来るのだった。
帰り道、いつに似ず神妙な顔つきをしていると思ったら、ポルは珍しく口ごもりながら、尋ねた。
「……でもさ、ねぇちゃん。ホントに、結婚する気、ないの?
村の守りのことなら大丈夫だよ、おれ一人でも十分なぐらいさ。
それに魔力を持つ子もいっぱいいるじゃないか。
だから、ねぇちゃんは何も気にせず、好きな人と結婚すればいい!」
自分を気遣う真剣な眼差しを受け止めて、カーラは微笑んだ。
“あんなにちっちゃかったこの子が……こんなこと言ってくれるようになったんだ”
「ふふ、頼もしいわね」
カーラは目を細めて、年の離れた弟の頭をなでた。ポルはうるさそうにその手を払う。
「子供扱いすんなよ、おれもう11だぞ!」
「まだなってないでしょ。誕生日、来月なんだから。
でもありがと。心配してくれる気持ちは嬉しいわ。
だけど、好きな人なんていないのよ、本当に。
だって結婚するなら、あたしより魔力の強い人って決めてるんだもの」
「……」
ポルは真顔で少し考えるそぶりをしていたが、顔を上げると言った。
「ねぇちゃん、それはマズイよ。おれたちホントの姉弟じゃないか」
「……? 何言ってんのよ、バカね!」
カーラは大笑いし、ポルも笑い出した。けれど心の中は複雑だった。
“この村にはおれの他にそんなやついないから……やっぱりねぇちゃんは一生、独身かな”
弟のひいき目を差し引いても美しいカーラが、まだ18とは言えこのまま誰の求愛も受けず年頃を過ぎていくのは、もったいない気がした。
かと言って姉自身が言うとおり、強い魔力に恵まれた彼女が、そんじょそこらの男のためにそれを失うのも確かにもったいない。
“まぁいいか。てことは、おれのねぇちゃんはず~っとおれだけのねぇちゃんだ”
ポルは自分のその考えに満足し、とたんに元気になって足取りも軽く駆けだした。
「おれ、先に行ってるよ! 村長のところに行って、次の買い出しのこと聞いてくる!」
あまりに大きいので、今日のように良く晴れた日なら、少し中に入ったくらいまでは十分な明るさがある。
その、外の明かりが届く範囲の場所に、小さな石碑が立っていた。
カーラはその前にひざまづいて頭を垂れた。
ポルもそれにならうが、姉ほど熱心な様子ではない。
しかしカーラは気にしなかった。
もともと、自分が気休めにしているだけで、特に意味のあることではないのだ。
昔、この場所で、エンドルーアを再興した王女が幼少の頃、白竜に育てられたという伝説があると聞き、何となく祈りに来るのが日課になってしまった。
エンドルーアを逃れてこの村に隠れ住んでいる自分たちが、一日も早くエンドルーアに帰れる日が来ることを願って、カーラは毎朝、ここに来るのだった。
帰り道、いつに似ず神妙な顔つきをしていると思ったら、ポルは珍しく口ごもりながら、尋ねた。
「……でもさ、ねぇちゃん。ホントに、結婚する気、ないの?
村の守りのことなら大丈夫だよ、おれ一人でも十分なぐらいさ。
それに魔力を持つ子もいっぱいいるじゃないか。
だから、ねぇちゃんは何も気にせず、好きな人と結婚すればいい!」
自分を気遣う真剣な眼差しを受け止めて、カーラは微笑んだ。
“あんなにちっちゃかったこの子が……こんなこと言ってくれるようになったんだ”
「ふふ、頼もしいわね」
カーラは目を細めて、年の離れた弟の頭をなでた。ポルはうるさそうにその手を払う。
「子供扱いすんなよ、おれもう11だぞ!」
「まだなってないでしょ。誕生日、来月なんだから。
でもありがと。心配してくれる気持ちは嬉しいわ。
だけど、好きな人なんていないのよ、本当に。
だって結婚するなら、あたしより魔力の強い人って決めてるんだもの」
「……」
ポルは真顔で少し考えるそぶりをしていたが、顔を上げると言った。
「ねぇちゃん、それはマズイよ。おれたちホントの姉弟じゃないか」
「……? 何言ってんのよ、バカね!」
カーラは大笑いし、ポルも笑い出した。けれど心の中は複雑だった。
“この村にはおれの他にそんなやついないから……やっぱりねぇちゃんは一生、独身かな”
弟のひいき目を差し引いても美しいカーラが、まだ18とは言えこのまま誰の求愛も受けず年頃を過ぎていくのは、もったいない気がした。
かと言って姉自身が言うとおり、強い魔力に恵まれた彼女が、そんじょそこらの男のためにそれを失うのも確かにもったいない。
“まぁいいか。てことは、おれのねぇちゃんはず~っとおれだけのねぇちゃんだ”
ポルは自分のその考えに満足し、とたんに元気になって足取りも軽く駆けだした。
「おれ、先に行ってるよ! 村長のところに行って、次の買い出しのこと聞いてくる!」
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