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第2部.アドニア〜リムウル 第3章
4.追いついた従者
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“今日も収穫はなし、か……。さて、どうしたもんだろう……”
夜半過ぎ、宿へと帰る道をたどりながら、レスターは頭を悩ませていた。
ふぅ、と一つ、深いため息を吐く。
“悪目立ちしてしまったからなぁ。もうこの町を出た方がいいことは確かだが……いったい……”
明かりの消えた家々の軒先はほとんど真っ暗闇だったから、道の真ん中を選んで歩く。
ふと空を仰ぎ、またため息をつく。
“今夜は新月らしい。月の光すらも、微笑みかけてはくれないのか……”
レスターには、荒くれ達を御するコツを良く心得ているようなところがあった。
意気投合し、最後まで一緒に飲んでいた男たちがことごとく酔いつぶれてしまったので宿へ帰ることにしたのだが、それまでに、出来る限りの情報収集はしてあった。
しかし、アイリーンの行方に関する手がかりは依然として見つからなかった。
“おかしい……。この街道沿いの一つ手前の都市までは確かに来ていたはずだ……どこからか道をそれて、この町には立ち寄っていないんだろうか……?”
しきりに考え事をしながらゆっくりと歩く彼の背後から、一つの影が忍び寄っていた。
突如、襲ってきた殺気に、レスターはハッとして振り向いた。
危ういところで、振り下ろされた剣をとっさにかわす。
足音も立てずに後ろに迫っていた男が、ものも言わずに斬りつけてきたのだ。
男の頭はマントで、口元は布で覆われ、顔はほとんど見えない。
レスターは素早く後ろへさがりながら、自分の剣を抜いて叫んだ。
「何者だ?! 名を名乗れ!」
男は無言のまま、再び襲いかかってきた。
相手の剣を剣で受け、力を流して脇へと跳ね返す。
お互い飛び下がり、間合いを取って、にらみ合う。
じりじりと足場を移しながら、レスターは相手の懐に踏み込むタイミングを計った。
しかし男の構えには一分の隙もない。
こいつは手強い、と、レスターの剣士としての経験が告げていた。
本気でやり合っても勝てるかどうか……?
しかしこんなところで無駄死にするわけにはいかない、アイリーンを守って死ぬならともかく……。
レスターが決死の覚悟を決めたとき、男は静かに剣を引き、口元を覆った布を降ろして言った。
「よろしゅうございます。カンと腕は、鈍っていないようですね」
唖然として開かれたレスターの口から、声が漏れた。
「ウィリアム……!」
夜半過ぎ、宿へと帰る道をたどりながら、レスターは頭を悩ませていた。
ふぅ、と一つ、深いため息を吐く。
“悪目立ちしてしまったからなぁ。もうこの町を出た方がいいことは確かだが……いったい……”
明かりの消えた家々の軒先はほとんど真っ暗闇だったから、道の真ん中を選んで歩く。
ふと空を仰ぎ、またため息をつく。
“今夜は新月らしい。月の光すらも、微笑みかけてはくれないのか……”
レスターには、荒くれ達を御するコツを良く心得ているようなところがあった。
意気投合し、最後まで一緒に飲んでいた男たちがことごとく酔いつぶれてしまったので宿へ帰ることにしたのだが、それまでに、出来る限りの情報収集はしてあった。
しかし、アイリーンの行方に関する手がかりは依然として見つからなかった。
“おかしい……。この街道沿いの一つ手前の都市までは確かに来ていたはずだ……どこからか道をそれて、この町には立ち寄っていないんだろうか……?”
しきりに考え事をしながらゆっくりと歩く彼の背後から、一つの影が忍び寄っていた。
突如、襲ってきた殺気に、レスターはハッとして振り向いた。
危ういところで、振り下ろされた剣をとっさにかわす。
足音も立てずに後ろに迫っていた男が、ものも言わずに斬りつけてきたのだ。
男の頭はマントで、口元は布で覆われ、顔はほとんど見えない。
レスターは素早く後ろへさがりながら、自分の剣を抜いて叫んだ。
「何者だ?! 名を名乗れ!」
男は無言のまま、再び襲いかかってきた。
相手の剣を剣で受け、力を流して脇へと跳ね返す。
お互い飛び下がり、間合いを取って、にらみ合う。
じりじりと足場を移しながら、レスターは相手の懐に踏み込むタイミングを計った。
しかし男の構えには一分の隙もない。
こいつは手強い、と、レスターの剣士としての経験が告げていた。
本気でやり合っても勝てるかどうか……?
しかしこんなところで無駄死にするわけにはいかない、アイリーンを守って死ぬならともかく……。
レスターが決死の覚悟を決めたとき、男は静かに剣を引き、口元を覆った布を降ろして言った。
「よろしゅうございます。カンと腕は、鈍っていないようですね」
唖然として開かれたレスターの口から、声が漏れた。
「ウィリアム……!」
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