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「化けたねぇ」

 踊りを終えたアルマとジークハルトに直ぐにアレクシスから声を掛けられた。

「可愛いでしょ、あげませんからね」
「…………お前のその執着心、アルマ夫人と会う前に教えてやりたいよ、その当時のお前に」
「必要ありません、俺がアルマを愛する事は決定事項なので」
「あぁ…………はいはい………で、ジーク達をシュバルツ公爵が睨んでたぞ?知ってはいたが、本当にお前の事は如何でもいいんだな、父親なのに」
「虫唾が走るので、あんな男を父親だと言わないで下さい」

 ジークハルトに今は禁句のシュバルツ公爵の名。
 メリッサから聞かされたシュバルツ公爵のした事に、更なる恨みが嵩んでいるのだ。

「分かったよ………此処が正念場だ。あっちもそう思ってるだろうよ」
「シュバルツ公爵家等、跡形もなく失くしてみせます」
「うん、俺もネジが抜けた頭を持つ兄上を引きずり下ろすとするか」

 この会話は、隠れて行われている。そうでなければいけなかった。
 ジークハルトはアレクシスとの関わりを持ってはいないと周知する必要があったからだ。

「じゃ、また」
「はい、殿下もお気を付けて」

 それぞれが分かれ、夜会の中心に戻り、全く無関係の来賓達と歓談をしながら、シュバルツ公爵の動向を見守っているのだった。
 夜会も終わると、翌日から1週間、貴族会議が始まる。
 ジークハルトは参加せずに帰りたかったが、王令でもある事もあり、参加せざる得ない。

「この時期に、魔獣が活発に行動する為、特に毎年被害が多いヴォルマ公爵領へ、我が息子キースを派遣致しました」

 シュバルツ公爵は、問題点を主張し、自分は国の事を考えている、と国王にアピールを欠かさない。

「シュバルツ公爵に手伝って頂かなくとも、ヴォルマ公爵領の騎士達は精鋭揃い。それなのに遠方の地にご足労されるのは無駄骨だと、よくご理解なされてないらしいですね、シュバルツ公爵」
「…………ふん、若造がかの地の恐ろしさを知らぬのだろうな」
「たった数年、我が祖父に師事されたからと言って、私の年齢より過ごしていない方が何を仰る」

 会議室での険悪なムードから始まる会議。

「頼みもしないのに、邪魔なだけですよ」
「…………くっ!」
「止めんか、シュバルツ公爵にヴォルマ公爵………だが、今の時期魔獣が活発になるのは致し方あるまい。少しでも人手が居るのは確かな事だ。ヴォルマ公爵もその点は理解しなければな」
「…………えぇ、引っ掻き回して毎年帰られますけどね。特にキース卿は毎日娼館に通い、酒に溺れ、部下の手柄を我が物にする傍若無人。今もヴォルマ公爵領で遊び呆けているでしょう…………腹違いとはいえ、我が弟には困ったものですよ………そして、もう1人の弟は我が妻を奪おうと目論んでいる………知らないとは言い逃れさせません」

 知らなかった者も居る親子関係。
 今迄隠し通していたジークハルトとシュバルツ公爵だが明るみにジークハルトはさせた。

「ヴォルマ公爵の父親は明るみに出てはいなかったが、父親がシュバルツ公爵だと?」
「そんなのは虚偽だ!ヴォルマ公爵!偽りを申すな!陛下の前だぞ!」
「止めぬか、シュバルツ公爵………もう隠し通しは出来ぬぞ」
「陛下!」

 昨日のイェルマの行動で言い逃れする気は無くなった国王はシュバルツ公爵を擁護するつもりも無い様子。
 何より、シュバルツ公爵の野心も知る国王から諦めろ、と言われた様なものだった。
 前国王がシュバルツ公爵を危険視していたが、力が強くなったシュバルツ公爵にいいように扱われていた事に目が覚めたのだろう。
 何もシュバルツ公爵に頼らなくても、ヴォルマ公爵であるジークハルトが領地の統治が上手くいっているだけあって、利権はヴォルマ公爵であるジークハルトの方が都合がいいのだ。

「それならば、何方が優れ、ヴォルマ公爵領を治める実力があるか確かめましょうぞ!元々あの地は私が受け継ぐ筈だったのです!前妻であった前ヴォルマ公爵の娘、アマリリスと統治する予定だったのですから!」
「そんな事は今や無効ですよ、シュバルツ公爵」
「黙れ!若造が!」
「現在、ヴォルマ公爵の地位を持つ私に落ち度が有りましたでしょうか?国境に面していて、魔獣被害にあろうとも、我がヴォルマ公爵家が裕福なのは資源があるから………貴方はその実権を握りたいが為、我が母上を犯し、14歳の若さで私を産み落としたのです。この2人の結婚は異例。前ヴォルマ公爵の祖父が手を回し、結婚を前国王から認めさせたが上で出来ただけ……貴方がヴォルマ公爵領の利権を奪う権利は元より無いのです。母、アマリリスの遺言書にはその利権を与えるべからず、祖父の前ヴォルマ公爵からの遺言書は、シュバルツ公爵の悪事を公にせよ、とその証拠も揃えている。それでもまだあの地を欲しがるのはその資源を元に、隣国との戦を目論むからだ!」
「っ!」
「戦を誰が望む!人が死ぬのを分かっていて、そこ迄実権が欲しいのか!シュバルツ公爵!」

 ジークハルトは断罪したかった。

「王太子、エリック殿下を唆した証拠も、私は持っているのですよ?」
「な…………何だと!」
「イェルマ殿下との婚約させようとした証拠もあります。そしてヴァイスの離婚させた経緯やヴァイスの悪事迄ね………もう少し言うならば、ロマーニ伯爵の三男、セルトの悪事の厳罰さえ王太子殿下を使いさせようとした事迄………シュバルツ公爵が、祖父の邪魔し、祖父は貴方を邪魔したのは、全て娘であり私の母の無念を晴らす為だ…………爪が甘いですね、シュバルツ公爵」
「くっ………クソッ!」
「はい、そこ迄………証拠は挙がってるんで、そのまま大人しくした方がいいんじゃない?シュバルツ公爵………あ、もう地位剥奪されるかもね」

 会議室に居なかったアレクシスが会議室の入り口で騎士達を動かし、逃亡を阻止しようとしていた。

「数々、粛清してきた者達のリスト………此処にあるんだなぁ………それを上手い事、兄上に消させたよね、シュバルツ」
「……………はぁ……全く………其方は何処迄私の信頼を裏切るのだ、シュバルツ公爵………私迄使い、公爵に召し抱えたものの、其方の邪魔な者達を不慮の事故で殺し、エリックを加担させるとは………」

 立場を悪くしていく一方になるシュバルツ公爵に国王も擁護等出来はしなかった。
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