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しおりを挟む「ちょっと待って下さい!ヴァイスは結婚していた筈だ!」
「うん、結婚していた………お前がアルマ夫人と結婚報告があった後、シュバルツ公爵がヴァイスを離婚させた………多分、調べたんじゃないか?アルマ夫人の血縁を………それに、お前この前ロマーニ伯爵の三男、セルトを処罰させただろ」
「…………えぇ」
「アレ………マズかったな」
「仕方ありませんよ、あの男はアルマを犯そうとしたんですから」
「…………あぁ……なる程……」
アレクシスはカラトリーを置き、頭を掻き始めて唸った。
アレクシスも難しい顔になり、おちゃらけた風にはならない。
「ロマーニ伯爵はシュバルツ公爵の腰巾着だ……その三男がヴォルマ領で犯罪起こしたのは許される事ではないが、ロマーニ伯爵の願いでシュバルツ公爵が厳罰を頼んで来てな………まぁ、三男から根掘り葉掘り聞いたんじゃないか、と………アルマ夫人の母君………お前の母君の従姉なんだろ?」
「……………えぇ」
「シュバルツ公爵にアルマ夫人狙われるぞ?只でさえ、アルマ夫人はお前の母君に似てるんだから」
「分かってます………でも、母の遺言も無下に出来なかったですし、俺がアルマに惚れてますから」
全力でアルマを守ってくれそうな頼もしさがジークハルトから出ていた。
アルマは頬を染めたが、流石に話が重要なので、冗談も出ない。
「…………お前が言う事も理解出来るが……あのシュバルツ公爵は難癖だからなぁ……そんなに欲しいかね、あのヴォルマ領」
「前国王がヴォルマ領の為に、領地戦を禁止したのはご存知でしょう?」
「まぁね…………ジークの祖父さんが手を回したってのは有名だからな」
「…………ヴォルマ領は、魔獣や隣国との小競り合いだけが重要ではない、という事です」
「まだ他にあるのか?」
初耳だぞ、と言わんばかりに身体を乗り出して来るアレクシス。
「…………えぇ……あのシュバルツ公爵も知っているから手に入れたいんですよ」
「何だよ、それ…………俺には教えてはくれないのか?」
「…………殿下は信用してますが、口が些か災いを齎すので言えないですね」
「お前…………協力してるだろ!ケチケチするな!」
「殿下が国王にお成りになればお教えしますよ。因みに、陛下はご存知………」
「何だよ!一体!」
「…………言えません。幾ら殿下であろうとも、祖父との約束なので………ですから、殿下が国王になったら………」
「分かったよ!俺は兄上を、お前はシュバルツ公爵を排除する為に共闘してるんだ。あのボンクラ兄上がシュバルツ公爵と手を組んでいる以上、負けたらシュバルツ公爵の思う壺………排除する迄、それは聞かないでおいてやる、それでいいか?」
「申し訳ありません、殿下」
年功序列でアレクシスの1つ年上の王太子エリック。賢いと耳にしてはいたが、組む相手がシュバルツ公爵だと言うならば、ジークハルトは王太子を支持しない、という事なのだろう。
アレクシスとの関係を見れば、即席の関係でもないように見えた。
「仲がよろしいのですね、アレクシス殿下とジーク様は」
「腐れ縁だよな」
「そうですね」
「ジークはよく前ヴォルマ公爵と登城していたからね。前国王とも旧知の仲で、シュバルツ公爵がまだ侯爵の時から、まぁ何かと………てジーク、アルマ夫人は何処まで知ってるんだ?」
「…………母とシュバルツ公爵との関係は伝えていません………ですがシュバルツ公爵が俺の父親だとは知っています」
「…………あ、そうなんだ………とにかく、前ヴォルマ公爵とシュバルツ公爵は犬猿の仲でさ……前国王が亡くなって父上が国王に即位してから、シュバルツ公爵がまぁ………いろいろ力付け始めてね………王家としては面白くない訳よ」
政治の世界ではよく出る杭は打たれるというが、政治がやりにくくなっている、という事だろう。
勢力分布で騎士を率いる頂点がシュバルツ公爵になった事で戦う事に関しては、シュバルツ公爵家が一番に居続けなければならない訳で、主要都市のヴォルマ領が欲しいのは分からないでもない。
だが、元々騎士の頂点だったのはヴォルマ公爵だったのが追い抜いたと思われるだけでは納得しないのだという結論になる。
目の上のたん瘤だと思っているのだろう。
ヴォルマ公爵家の血筋のジークハルト。手中に納めていれば自ずとシュバルツ公爵の手に入っていたかもしれないのに、前ヴォルマ公爵に阻まれて、ジークハルトは敵対する存在になった事で力を付けてきたに違いない。
それなのに、もう1人ヴォルマ公爵家血筋のアルマがジークハルトに嫁いだ事が分かり、シュバルツ公爵はまた違う手を打たねばならなくなった、とアレクシスはジークハルトに教えに来た。
夜会が行われる会場で、どんな陰謀や邪魔が入るのか、アルマはジークハルトについて王都に来た事を今更ながら後悔するのだった。
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