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しおりを挟むアルマはジークハルトと王都に向かう馬車に乗っていた。
国の中央にある首都へ行くには、2週間程掛かる道程で、アルマの実家よりは近くにはあるが、久々の馬車の移動はアルマも疲労感が出ている。
「疲れているな、アルマ」
「今から緊張してまして………久々の王都で、デビュタント以来の夜会参加なので………」
「そうなのか?」
「…………はい。私の実家、リンデル伯爵家は王都に邸もありませんから、王都に住んだ事もなく、貴族の友人も少なくて………デビュタントも、態々リンデル伯爵領に来てくれる貴族等も少なく………」
「…………俺は、アルマのデビュタントには行ったがな………挨拶せずに帰ってしまったが」
「そうだったんですか?」
「…………あぁ……アルマのデビュタントの祝いより、リンデル伯爵とメリッサ夫人との話が主ではあったし」
そう聞くと、侍従達から聞いた話とジークハルトが以前話した内容に相違が見られる事は無かった。
ジークハルトはヴォルマ公爵領を守る為、アマリリスとの遺言を守る為に動いている、と思えてならず、両方を守る為に、父であるシュバルツ公爵との対立をしているのだろう。
「…………ダンスの練習をしましたが、上手く踊れるか今から緊張します……人前で踊るのもそれ以来で……」
それが分かってしまい、アルマは其処に触れる事なく、夜会に関しての話を続けた。
「踊りたい?俺と」
「踊れるなら………だ、駄目ですか?」
「いや………女達の牽制にもなるし、アルマを見せびらかしたい」
「見せびらかしたい、て………私はそんなに美しくないので………」
「美しいさ………アルマは………愛嬌もあるし黙っていれば可憐で儚げに見える」
「それ、褒めてます?」
「…………プッ………」
「あ!揶揄ってますね!酷い!」
横に座るジークハルトに、アルマはポコポコと叩く振りをすると、ジークハルトは避けながら笑った。
「一目惚れだと言っただろ!………母上に似た印象はあった………だが、病弱だったという母上がもし、健康だったならアルマの様な人だったんじゃないか、と思ったら、俺の理想だった………メリッサ夫人も、母上と似た所が、アルマにはある、と仰っていた………あまり気を悪くしないでくれ、アルマ」
「…………嬉しくありません………」
何か自分は褒められていないようで、拗ねてしまうアルマはジークハルトから離れて座り直す。
「アルマ………」
「だって、私はジーク様のお母様には勝てないですから………」
「勝てない?何故?」
「…………ジーク様の一番は、アマリリス様だからです………」
「…………プッ………はははっ!」
「酷い!何故笑うんですか!」
ジークハルトが爆笑するので、アルマは詰め寄ると、アルマはジークハルトに手を掴まれてしまった。
「アルマ………俺は、母上の記憶は全くない………俺の誕生日が母上の命日で、母上の事は全く知らないんだぞ?人から聞き、アルマに想像の人物を重ねているだけだ。きっかけは面影が似ているというだけではあるが、病弱で儚げな女が好きだというのはないぞ」
「…………ジーク様が、好きな女性の人物像って………」
「明るく、元気で真面目な性格で、俺の事を愛してくれる女だ………ん?アルマは違ったか?」
「っ!…………ち、違いません……元気なのが私の取り柄ですし……真面目なって言うのは違う気がしますけど………常に明るく居ようとは……思ってます………」
「…………それで?俺を愛してくれてる?」
「っ!…………ず、ズルい聞き方しないで下さい!」
「…………ん?」
揶揄う様に、首を目の前で傾げられ、大人の男が可愛く見えてしまうアルマは、途端に顔を赤らめて、ジークハルトの胸に飛び込んだ。
「あ………愛してます………ジーク様の事………早く心身共に大人になって、ジーク様に相応しい女性になりたいです………」
「俺には魅力的な女だよ、アルマ………愛している」
「…………私はジーク様より思いは強いです!」
「っ!…………そ、そう来たか………では、その思い………今夜泊まる宿で見せてくれ、アルマ」
「!…………え………?」
「…………アルマの陰核を沢山可愛がらせておくれ………」
「っ!」
仲直りして以降、ジークハルトはアルマの中には挿入らなくはなったが、お互いの秘めねばならぬ場所を愛撫し合っていた。
そうでもしなければ、お互いの性欲は処理出来ぬ所迄関係を深めていると言えるだろう。
「可愛いな、アルマ」
「私も、ジーク様の困り顔が可愛いな、と思ってますよ?」
「こら、大人を揶揄うな」
「ふふふ………」
馬車内で仲睦まじくしている旅は続けられ、王都に着く頃には、同行した侍従達も、見て見ぬ振りしてやり過ごしていたのは言うまでもない。
「明日は王都観光しようか、アルマ」
「ジーク様はお忙しくないのですか?」
「特に王都ではする事も無いな………俺は公爵と言っても政に関わってはきてはいないし、あの地を守って行くだけで済んでいるからな。それも前ヴォルマ公爵である祖父が手を回して俺の為に遺した遺産だ」
「…………私、そんな事も知りませんでした……政に全く興味無かったのも駄目ですね」
「気にするな、アルマ。俺が関わらせない様にしていただけだ………腹黒い政治の世界は人を貪欲にさせ、疲弊させるぐらい、欲と権力塗れになる………汚い世界を知るには良いが、その汚い場所での窓口は俺が担うから、アルマは領地の事だけ考えてくれたらいい」
王都との交流をジークハルトがしていた事をアルマも知っていた。腹黒い部分にはアルマは触れさせてくれなかったのも知っている。
それだけ、ジークハルトはアルマを大切にしてくれているのだと、伝わって尚更アルマはジークハルトを好きになっていたのを、ジークハルトに伝えていく事を心の中で誓ったのだった。
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